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【国際障害者デー】誰もが楽しめるファッションーユニバーサル/インクルーシブデザインとは

  • 2024.12.5

おしゃれを楽しむことを、諦めなくてもいいように

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LordHenriVoton

12月3日は、国際障害者デー。障害の有無に関係なくすべての人が参加できる社会を目指して、国連で決められた日。

障害の有無だけでなく、年齢、国籍、宗教、ジェンダーなど私たちは一人ひとり異なる特徴やライフスタイルを持っていて、より自分らしく暮らすためには、社会にさまざまな選択肢があることが大事。これは毎日着る服にもいえること。着られる服が限られていると、おしゃれを諦めなければいけない気分になるけど、ファッションをとおして自分を表現できる幅が増えれば、気分も上がるし、人生が豊かになる。

そこで知っておきたいのが「ユニバーサルデザイン」「インクルーシブデザイン」。用語の解説とあわせて、これらのデザインウェアを取り扱ったり、認知度向上に取り組むアパレルやプロジェクトを紹介!

ユニバーサル/インクルーシブデザインとは

MoMo Productions

ユニバーサルデザインとは、すべての人々が自分の能力に関係なく利用できるデザインのこと。バリアフリーに続いて、建築や都市設計の文脈で生まれたコンセプトで、一部の人を排除するような特別なデザインや後付けの改修を避け、最初からすべての人の特質を考えてデザインすることが特徴。

インクルーシブデザインは、ユニバーサルデザインが誰でも使いやすいようなデザインを「デザイナー」が考案する一方、インクルーシブデザインの場合はデザイナーだけでなく、障害の有無、年齢、ジェンダー、言語、国籍、文化、能力などの違いから「これまで社会から排除されてきた人」を最初から巻き込み、一緒にデザインをしていくことが特徴。

いま、このユニバーサルデザインやインクルシーブデザインにフォーカスしたファッションが続々と登場。ここでは6つのアパレルの服づくりにかける想いからコンセプト、そして具体的な仕様までを見てみよう。自分らしさ100%の、ワクワクする一着が見つかるかもしれない!

【SOLIT!】ファッション関係者に医療・福祉従事者など、多様なチームで作り上げる「自分らしい服を自分で選べる」ブランド

SOLIT!

SOLIT代表の田中美咲さんがプラスサイズに該当することから、日本では着たい服が着られなかったという経験をきっかけにはじめた「SOLIT!」。2024年4月にバンクーバー・ファッション・ウィークに参加した、いま勢いのあるインクルーシブファッションブランドだ。

「周りを見渡せば車いすを使用しているため着る服が限られる友人がいたり、信仰上の理由で気に入った服を選べない仲間がいます。もっと自由に服を纏って自己表現したいのに……、それがなんらかの理由で叶わない人が多いことに気づきました」

SOLIT!

SOLIT!の服は、企画段階から多様な人を巻き込んでつくられている。たとえば、写真のDawn one piece(2024年12月上旬から1カ月間限定で再販予定)は車いすユーザーの女性と10代の男子高校生の声がきっかけでデザインがスタート。車いすユーザーの女性の「ワンピースは着づらい」「お腹の筋肉が弱くなったことで目立つようになったぽっこりお腹を隠したい」という悩みや、男子高校生の「スカートを履いて自分らしくありたい」という想いを反映できるよう、とことん話し合いながら、試作品を何度もつくり直して完成した。

自分の好みや体型にあわせてサイズ・形・丈を部位ごとに調節できるカスタマイズ性の高いデザインも特徴。購入後でも、ボトムスの裾上げやジャケットの袖丈のお直しもできる。完全受注生産のため、手元に商品が届くまでに約1.5カ月はかかるが、長く着られる一枚ができあがることによって、大量生産・大量消費・大量廃棄への対策になる点も◎。

すでに10代後半から80代までと幅広い層から支持を得ている。「デートに行けたり、面接に行けるようになったり、結婚式にでかけられるようになった」という感想も。着る人が自分らしさを損なわず、行きたい場所や会いたい人のもとに行ける。SOLIT!はそんな一着を届けてくれる。

【キヤスク with ZOZO】豊富なサイズ&こだわりのデザインで、カジュアルファッションをもっと楽しみやすく!

キヤスク with ZOZO

9,000以上のブランドのアイテムを取り扱うファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOと、障害や病気のある人に向けて服のお直しサービスを提供する「キヤスク」を運営するコワードローブが協業し立ち上げたのが、インクルーシブウェアの受注生産サービス「キヤスク with ZOZO」。

一人ひとり異なるファッションの悩みがあって、着やすさや機能性を優先して毎日着る服を選ぶしかない人も多い。キヤスク with ZOZOは、そんな服の選択肢の少なさという悩みに着目して生まれた。

キヤスク with ZOZO

そのポイントは、最大56サイズ展開で販売が可能なことにプラスして、キヤスクの知見を活かしたデザイン。たとえば車いすユーザーの悩みに応えるパンツには、床ずれ(※)を防ぐため、臀部(でんぶ)の縫い目がない。着替えを簡単にするために脇に大きく開くファスナーがつけられ、「腰から裾」や「腰から膝」までの長さが選択可能になっている。また、座った姿勢がキレイに見えるよう計算されたデザインも魅力の一つ。

実際に、サンプルを着用した障害のある人からは「街着としてかっこいい、かわいい。これを履いておでかけしたい」「このサービスをきっかけに、インクルーシブファッションの世界が広がっていってくれたら嬉しい」という声も。

(※)褥瘡(じょくそう)とも呼び、座りっぱなしや寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうこと

【羽衣スタイル】上下に分かれた着物や巻きスカートタイプなど、家族や介護士でも着付けが簡単!

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羽衣スタイル

「羽衣スタイル」でレンタルできるのは、車いすに乗っていても着やすい着物。長年ヘアメイクや着付けの仕事をしていた代表の稲垣明子さんが、2年という時間をかけてつくったラインナップだ。

通常、着付けしてもらうには、20分以上、立った姿勢のままでいなければならない。着付けの仕事をするなかで車いすユーザーから「(着られる着物が)もしあれば着たいけど諦めている」「着物を着るなんて夢」という切ない声を聞くことがあったそう。

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羽衣スタイル

そのような背景があって生まれた羽衣スタイルの着物のこだわりは、着物を上部と下部に分けて、着せやすい形にしたこと。着物下部は、立つことができる方には巻きスカートタイプを、全く立てない方にはお尻部分を無くしたエプロンタイプを用意。見た目は普通の着物と変わらず、着付けの方法を知らない家族や介護士でも、簡単に着せられる形になっている。

マジックテープ式で楽に着用できる帯も選べたり、足が変形したりむくみがある人向けの草履もあったりと、着物を着るという体験を思う存分に楽しめるデザインに。カラーバリエーションが豊富なのも嬉しい! このような細部に思いやりのつまった色とりどりの着物が200着以上あり、全国へ配送してもらえる。

車いすユーザーのみならず、じっと立ったままでいることが難しい人や、きつい紐が苦手な人も愛用中。「妹の結婚式で訪問着にチャレンジしました。大切な妹の結婚式に、みんなで華やかに笑顔で過ごすことができて、本当に嬉しかったです」と、特別な日を特別な装いで祝える喜びが広がっている。

【AUN(Action for UNiversal design)】介護を経験した研究者が服づくり。機能性もおしゃれも追求したジーンズ

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2024 Energyfront Inc.

「AUN(あうん)」のジーンズが生まれたのは、化学や物理の研究者であった代表の上田剛慈さんが介護を経験したことがきっかけ。

「介護において、ちょっとしたおしゃれが一日一日を明るくすることに気づき、研究者の視点も入れて『服でありながら課題を解決するもの』をつくりたいと思いました」

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2024 Energyfront Inc.

国産ジーンズ発祥の地である岡山県に拠点を持つAUNの代表商品リフトアシストジーンズは、デザインの一つに見えるような同素材のベルトを太ももの部分に付けて、デニムそのものにロボットやリフト代わりの役割を持たせている。これによって、介護が必要な人の体重が100kg以上でも、「てこの原理」で運ぶことができる。

ほかにも、お尻側のポケットをすべて取ってお尻の部分をフラットにして、床ずれのリスクを下げる工夫をし、臀部は伸びない生地で支え、前部は伸びる生地で着心地も追求。

福祉の現場では、機能性のみが重視された「道具」ばかりをよく目にし、そのたびに上田さんは「自分自身はそれを使いたいだろうか?」「これを使う人はどう思っているのだろう?」と疑問に思っていたそう。「AUNでは機能を徹底的に考え抜きながらも、強制的に着せられるのではなく、自分から穿きたくなり、穿いたら外に出たくなる服をつくろう」と、着る人の気持ちを大切に、一日を前向きに生きることを応援するものづくりに取り組んでいる。

【Play fashion! for ALL】既存の服が新たな視点で困りごと解決! ファッションの楽しみ方は無限

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ADASTRIA

国内外で約1,400店舗展開するカジュアルファッション専門店チェーンのアダストリア。「誰もが、どんなときでもファッションを楽しめる社会をつくりたい」という、家族の介護を経験した従業員や、障害のある従業員の声をきっかけに、インクルーシブファッションプロジェクト「Play fashion! for ALL(以下、for ALL)」がスタート!

ある服をそのまま着るのではなく、多くの人とのコミュニケーションを通じてファッションの楽しみ方を広げていくのが、このプロジェクトの特徴。ブランドの商品企画だけでなく、広報の担当者をはじめ、普段ものづくりに携わらない従業員も参加するイベントや展示会を通じて、「誰もが着やすいデザインとは?」について一緒に考える機会をつくっている。また、インスタでは、既存アイテムからお悩み別の着こなしを紹介中。30を超えるブランドを展開するアダストリアならではのコミュニケーションだ。

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ADASTRIA

たとえば、車いすユーザーにとっては、ビッグシルエットなパンツやアウターはタイヤ側に裾がはみ出て、汚れてしまうのが悩み。そこで既存の服からドローコード(丈が変えられるひも)がついているパンツとアウターを紹介(写真左側)。このデザインであれば、車いすの形状によっても差があるが、裾の広がりをおさえ、タイヤによる擦れを少なくできる。ほかにもワンピースを既製品から探すことが難しい低身長のモデルが、チュニックをワンピースとして楽しむアイデアを紹介。

最近では、for ALLに共感してつながった茨城県の福祉施設「征峯会」のアロハシャツユニフォームをプロデュース! ユニフォームには、施設を利用している障害のあるアーティスト20名が描いた絵がパターンに落とし込まれている。ユニフォーム完成時には「この絵は○○さんが書いたんだよね」と施設の職員と利用者の会話が弾んでいるのも印象的だったという。

「当事者の方と意見を交換するなかで生まれた取り組みが、ユニフォームという一つの形で実りました。『すべての人にファッションを楽しんでほしい』というfor ALLの想いがつまっています」

【MOVE WEAR】新スタイル「車いすごと着る服」で纏う人をエンパワーメント!

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TSI Holdings

大手アパレル企業のTSI HOLDINGSと、難病や重度の障害などで外出困難な人が家にいながら遠隔操作で接客を行う分身ロボットの開発・提供を手掛けるオリィ研究所所長の吉藤オリィさんが共同開発に取り組んでいるのが、ユニバーサルデザインウェアプロジェクト「MOVE WEAR」。

現時点では一般販売はしていないものの、2024年10月にTSI HOLDINGSとしては初となるユニバーサルデザインウェア第一号を発表! 難病ALS(※)と闘うクリエイターの武藤将胤さんのためにつくられ、ALS啓発イベント「MOVE FES.2024」でも着られた。

(※)筋萎縮性側索硬化症のことで、手足やのど、舌などの筋肉が痩せて徐々に弱くなっていき、意識や感覚は保たれたまま、全身が動かせなくなる進行性の病

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TSI Holdings

コートやジャケット、パンツは、パーツごとにそれぞれ着脱可能なうえ、寝たままでも脱ぎ着できる。全体の生地はブラックで、そのなかに夜道や暗い環境でも見えやすいオーロラ色の光を放つ幾何学的なプリントがアクセントに。着る人のバイタリティを力強く表現し、精神的にエンパワーメントされるようデザインされている。

連なりあう三角の図案は、楽曲のジャケット写真のデザインも自ら行っている武藤さんの作品がもとになっている。「ALSなど重度の障害があっても、ファッションを楽しむことを諦めてほしくない」という想いから業界を超えて集結した人たちの知識と希望がつまった一着だ。

「車いすごと着る服」という新たなスタイルを提案した今回のプロジェクト。その最終ゴールは、ファッションの力で障害がある人でも自己表現や社会参加がより簡単にできること。今後の展開に要注目!

From: ELLE JP

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