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中島健人、夢の海外進出は「現実になると思っていなかった」 全編英語の台詞に強いプレッシャーも

  • 2024.12.1
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中島健人 クランクイン! 写真:米玉利朋子(G.P.FLAG inc)

11月8日から配信中のHuluオリジナル『コンコルディア/Concordia』にて、海外ドラマデビューを果たした中島健人。これまで、インタビュアーなどとして流暢(りゅうちょう)な英語を披露してきた彼が、今度は役者として全編英語の芝居に挑む。夢見た海外作品で「とにかく刺激を受けたかった」と話す中島に、製作総指揮のフランク・ドルジャーやバーバラ・イーダー監督と濃密なセッションを重ねて作り上げたという本作への熱い思い、そして海外作品の出演を夢見るきっかけとなった、ターニングポイントを語ってもらった。

【写真】横顔も美しい! 中島健人の撮り下ろしカット(全3枚)

■『コンコルディア』が次の未来を切り拓いた

本作は、カメラとAIに網羅されたコミュニティー“コンコルディア”を舞台としたAIサスペンス。『ジョン・アダムズ』や『ローマ』、Huluで配信中の大型国際ドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』など、話題作を次々と手掛けるフランク・ドルジャーが製作総指揮を務めた同作で、中島は、コンコルディアの心臓部である最先端AIシステムの生みの親で、最高技術責任者として活躍している日本出身の鬼才、A.J.オオバ(アキラ・ジョン・オオバ)を演じる。

――海外ドラマ初出演、そして全編英語でのお芝居はいかがでしたか。

中島:臨機応変に対応するということがマストの世界で日々流動的だったというか、日本では感じることのないプレッシャーのようなものはあったかもしれないです。海外ドラマは、台詞や物語が書いてある脚本自体が製本されていないので、当日撮影するシーンの台本が紙で配られて、変更点もその日に知らされるんです。日本だと2日前や前日の変更とかはありますけど、当日に変更して、しかもそれが今回は言語が違う英語なので、その変化みたいなものにギャップを感じました。今までインタビューで英語を使ったりしていましたけど、表現という部分は初めての領域だったので何も分からなくて。とりあえず当たって砕けてみたらいいんじゃないかなと思って臨みましたね。

うれしかったのが、イザベル役のナンナ(・ブロンデル)に「普段英語を使う私たちにとっても、あなたが喋るA.J.の台詞は滅多に使わないから、専門用語とかよく言えてすごいわね」って言ってもらえたこと。海外の役者さんと同じステージに立っていることが信じられないというか、この1年は自分の人生であり得なかったことの連続だったので、28歳の僕にとって結構衝撃的でした。

――日本語と英語だと性格が変化する人もいるようですが、中島さんは変化する・しないのどちらだと思いますか。

中島:普段英語を使っている僕は、おそらく外国人の方からすると“かわいい”と思われていると思います。「なんかこの子すごい熱量あるな、いろいろなこと話してくるな」みたいな。「あれでね、これでね、こうなんだよね。僕これやりたいんだけどどう思う?」といったようにめちゃくちゃ捲し立てるので…でも、日本語でも変わらないですね(笑)。当時、撮影期間中が『おまえの罪を自白しろ』の公開を控えていた時期だったので、ノア役のシュテヴェン(・ゾヴァー)に作品の概要を頑張って全部英語で説明した記憶もあります。

でも、A.J.を演じている時はすごく嫌なやつだったので、そのかわいさみたいなものはなかったかな。A.J.は、イザベルに高圧的に接したり傲慢(ごうまん)な部分もあったりして、なかなか首を縦に振らないプライドが高い性格だけど、僕は逆に自分をしっかり持っていてブレない生き方でかっこいいなと感じました。なので、A.J.として英語を喋っている時は、違う人格で話しているような気がして夢みたいでした。

――フランク氏が、中島さんが他の俳優の皆さんにアドバイスを受けていたのが印象的だったとおっしゃっていましたが、どんなことを聞いたのでしょう?

中島:分からないことは全部聞いていました。いろいろな役者さんがいましたけど、たぶん自分が1番フランクやバーバラ監督に質問していたんじゃないかな。逆に、フランクに聞きすぎて「これ以上はバーバラに聞いた方がいいよ」って言われることもあったりして。「なんだこの日本人は」って思われるレベルで、たくさん提案もしました。

僕の撮影はローマだけだったんですけど、作品自体はドイツだったりミラノだったり、様々な場所で撮影しているので、「行きたいです! ミラノのシーンを増やしてください」って言ったんです。新参者かつ新人で初めて海外ドラマに出る日本人なのに、めちゃくちゃ言ってくるなっていう感じだったと思います(笑)。

――ロケを増やしたいというのは、A.J.オオバのシーンをもっとたくさん作りたかった?

中島:そうですね。A.J.は、基本的に室内の支配者みたいな役なんです。室内で威張っているだけで外に出てないなと思ったので、フランクに「ミラノでキックボードに乗るシーンとかない?」って聞いたりして。そうしたらフランクも、A.J.の外のシーンを作りたいと言ってくれたんです。それで協議が始まったんですけど、結果ミラノには行けませんでした。何というか、フランクたちをめちゃくちゃかき回していましたね。でも本当に優しい方たちで、自分のわがままだったりをすごく聞いてくれたんです。

実は衣装も、ほぼ僕の好みで。僕がA.J.に似合うかなって思ったものを送ったら、向こうのスタイリストが「健人がこういうの着たいって言うから持ってきたよ。どれがいい?」ってレコメンドの衣装をたくさん持ってきてくれました。僕は最初からモックネックのイメージだったんですけど、1話から6話までA.J.に心理的描写の変化があって、徐々に野心で満ちあふれていくからその時にフォーマルな感じに仕上げていこうという話に。最初はシャツとTシャツで優しさを出してA.J.の緩急をつけたいという相談を受けて、衣装のコントラストができあがったんです。

それからキャラ設定とかも、「僕はA.J.としてこの作品のアクセントになりたいから、性格をすごく悪いように見せたい」とか、監督とセッションをして形になりました。とにかく刺激を受けたかったんです。いろいろなことを知りたかったし、今の自分の考えがどれぐらい海外の現場で通用するんだろうと思って。勝負に行くつもりで、いい意味でめちゃくちゃ喧嘩(けんか)したかったんですよね(笑)。『コンコルディア』が、自分の次の未来を切り拓いた気がします。

■海外を夢見るきっかけは“クリストファー・ノーラン監督”との出会い

――そもそも、海外作品に出たいと思うようになったきっかけは何だったのでしょう。

中島:きっかけは、クリストファー・ノーラン監督とリモートインタビューをさせていただいた時ですね。僕は、目の前に自分の可能性を広げられることがあると、一気に全集中で飛び込むっていう生き方をしてきたので、その時もノーラン監督に「(作品に)出してください」って言ったんです。渡辺謙さんが『インセプション』に出ていたりするので、僕もノーラン監督のプロジェクトにジョインできたらいいなって思ったのが始まりです。2020年ぐらいの出来事なので意外と最近ですが、その時は(海外進出が)現実になるとは思っていませんでした。


――海外進出が明確な目標になってから、何かアクションを起こしたりしましたか。

中島:25歳ぐらいの時に映像作品のお仕事が全然なくて、どうにかしないといけないと思って企画書を書いてみたんです。その企画書をプレゼンする機会みたいなものがあって、さらにそこにノーラン監督とのインタビューとかが重なって、それから海外での仕事がだんだん増え始めた気がします。いろいろな仕事に自分の考えていることを掛け算させてプレゼンすることを始めたのが、結構自分の中のターニングポイントだったかもしれないですね。

――プレゼンを受けた相手の反応は?

中島:ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』のプロデューサーに企画書を渡した時は、「何これ」って言われました(笑)。でも、岡田准一くんから、23歳の時に自分の未来を考えてプランニングをするようになったっていう話を聞いて影響を受けたので、自分のこの“何かを伝えたい”みたいなことと、それが大きな規模であるっていう、いわゆるそれがインターナショナルなんですけど、そこの掛け算ができたらすごく楽しそうだなって思ったんです。

『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を受賞して、ポン・ジュノ監督と話したのもきっかけですね。とにかく日本を外国の中でインフルエンスさせたいという気持ちが強くなって、どうにかして日本も何かできないかなって思うようになりました。

とはいえ、最初は本当に海外ドラマに出演できるなんて思っていなくて。ノーラン監督からも「じゃあ、キャンディデートしておくね」みたいなことを言われただけだったので、実現するのはもっと先なんだろうなって。そうしたら急に『コンコルディア』の話が来てるって言われて、「えっ、出られるの!?」って驚きました。

――『コンコルディア』の話を聞いて、出演を決めるまでに悩みや怖さはなかったですか?

中島:悩みは一切なかったです。「出ます。そのスケジュールを絶対にお願いします」って即答でした。でも、現地ではクランクインまでいろいろ気が抜けなかったですね。途中、バーバラ監督が顔合わせをしたいってホテルのロビーに集合したんですけど、顔合わせだけかなと思ったら読み合わせが始まって…。「これ下手くそだったら落とされる、台詞削られるかも」みたいな。いきなりプレッシャーを感じたっていうのもあったりしたので、もうとにかく最初は怖くてビクビクしてました。

――悩まずに行ったけど、実際行ったらちょっと緊張感にしびれたような。

中島:そうですね。最初は「本当に出るのかな、大丈夫なのかな」っていう。言語も違うから、やっぱりそのプレッシャーはかなり強かったです。でも、国の空気感とか、建物も歴史ある西洋建築物ばかりなので、その圧巻の景色に「自分の小さい悩みは大したことないな」って思うようになって。撮影時間も9時から17時までとかしっかりしてるからストレスは全然なかったです。

休みの期間とかも、プロデューサーとローマの街を散歩したりしました。最初の20日間は、ほぼ毎日カルボナーラを食べていましたね。店とか場所によって味が変わるんです。食巡りもローマの楽しみの1つでした。和食屋さんとかも連れて行ってもらったんですけど、まるで自分が最初から知っていたかのような感じでそこにほかの共演者を連れて行ったりもして、すごく楽しかったです。もう2年前の話なのに、こんなに記憶に残っているほど、本当に素晴らしい経験でした。

(取材・文:杉崎絵奈 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])

Huluオリジナル『コンコルディア/Concordia』は、Huluにて日本独占配信中(全6話)。

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