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憧れの人が結婚した。渡せなかったお土産は冷蔵庫に残ったまま

  • 2024.12.1

仕事で関わりのある会社の先輩に憧れた。
彼にふさわしい人になりたくて仕事をがんばった。
先輩は仕事のできる人なので、仕事をがんばることで彼に注目されたいと思った。
出会って2年目。
がんばった甲斐があり、私は周りの信頼も得ることができ、仕事も評価されるようになった。

◎ ◎

憧れる先輩との距離も近づき、関係性に変化が見られるかと思った矢先、先輩は全く違う業界の人と結婚したことを聞いた。
それも取引先の人から。
私とは対極にあるキラキラした仕事をしている人だそうだ。
先輩にとっては、ずっとその人が憧れの人だったのだと悟った。

本人からは未だに結婚の報告を聞いていない。
結婚と同時に引っ越したようであったが、そのことも何となく私に隠している素振りがあった。
今さら結婚報告をされたところで、私もリアクションに困るし、彼女でも何でもなかった私に必ずしも言わなければならないということでもないだろう。

◎ ◎

そういえば彼が唐突に焼き肉を奢ってくれたことがあった。
彼が結婚したと聞く1ヶ月前のことだ。
きっとその場で結婚が決まったことを言おうとして、言い出せなくて、焼き肉を奢るということでけじめをつけたのではないだろうか。

彼とはよく2人で休日にも飲みに行っていた。
良い雰囲気のバーにも行った。そこでベタではあるが、お互いの手の話になった。私の手をよく見せて、と彼は指輪をはめる時のそれの持ち方で握った。

恋愛経験が乏しく、異性との接触に免疫のない私にとっては、ときめきを誘発するアクションでしかなかった。
正直、今後の関係性の発展に大いに期待をしてしまった。

◎ ◎

でも心の奥底では、この人とはお酒を飲んでいる時しか楽しくないなと思っていた。
休日に会う仲であっても会社では先輩であるし、彼をヨイショするのが私の役目だと感じていた部分もある。
この人は私のことを飲み仲間で、良い感じに立ててくれて、良い気持ちにしてくれる人だとしか思っていないのを薄々感じていたかもしれない。
その予感を裏付ける証拠に、よく飲みの予定のキャンセルをされていた。それも埋め合わせの提案はなく、私は寂しい気持ちになっていた。

◎ ◎

私の冷蔵庫には先輩に渡せなかった出張先で買ったお土産が未だに冷えている。冷蔵庫の奥の方にしまってあるが、ふとした時に目に触れると、時々胸が痛む。
彼の気持ちが私に向いていないことに薄々気がついて、彼からは身を引こうと決断した後だったので、彼の結婚はダメージは少ないと思っていたのに。

憧れの先輩は変わらず仕事ができるので、私にとっての憧れの人だ。
それは変わらない。
しかし私は彼と結婚することはおろか、付き合えなかったのだから、憧れの人の憧れになれなかったやるせなさや悔しさのようなもの、そして仲が良かったはずなのに結婚報告をしてもらえなかった怒りはしばらく引きずるのだろう。

◎ ◎

私にとっての救いは、彼に見合う人になりたくて仕事をがんばり、今ではたくさんの人に頼りにされることだ。
結果的に仕事を通じて自分に自信を持つことができた。
このことに関しては彼に感謝をしたい。

■高山葵衣のプロフィール
在宅勤務メインのアラサーOL。 お家時間と心を充実させるべく、ていねいな暮らしを目指している。 好きなものは北欧雑貨とからあげ。

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