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中学生のわが子がインフルエンサーを目指している…プロが「これに尽きる」と勧める最初の一歩

  • 2024.11.30

子どもがインフルエンサーになりたいと言っている。親はどんなアドバイスができるか。C Channel社長の森川亮さんは「誰でもはじめはフォロワーがゼロのところから始まる。それがつらくて挫折する人も多いが、最初の壁を乗り越えるには秘訣がある」という――。(聞き手=島田明恵)

人気者が商品を紹介するだけでは効果が出ない

インフルエンサーが話題になりだした頃は「ネットの人気者が商品を販売する」というイメージが強くありました。しかしインフルエンサーになる経緯はさまざまで、例えばショップの店員さんから独立した人たちがいます。

初めはリアル店舗で接客するうちにSNSのアカウントを交換したお客さんが増え、熱心なファンがついてくるようなケースです。ファンの趣味嗜好をよく知っているので、おすすめする商品が高評価を得て、さらにファンが増えるという好循環になるのです。

C Channel 社長 森川亮さん
C Channel 社長 森川亮さん

C Channelの社員から人気インフルエンサーになった人も複数います。社員として活動するうちにSNSで人気が出て独立していくわけです。入社の時点から、志望理由として「インフルエンサーになって商品開発したいから」と話す人もいます。社員が辞めていくのはちょっと寂しいですが、インフルエンサーで成功する人が増えるのはうれしいことなので私も応援しています。

インフルエンサーも時代とともに変化し、商品の販売促進というマーケティング領域に入ると、人気者が商品を紹介するだけでは、期待するほど効果が出なくなっています。有名なタレントさんが本当にいつも愛用している商品を紹介するのはいいのですが、「本当に自分で使っているんだろうか」と疑われるケースが一時増えたからです。2010年代に入ると、芸能人や人気ブロガーによるステマ問題がたびたび起こり、2023年10月からのステマ規制導入につながりました。

インフルエンサーのクラス分け

インフルエンサーは、フォロワー数や登録者数によってクラス分けされることがあります。フォロワー数が50万人以上は「メガインフルエンサー」、10万~50万人は「ミドルインフルエンサー」、1万~10万人は「マイクロインフルエンサー」、数千~1万人は「ナノインフルエンサー」などの分類です。

【図表1】インフルエンサーのクラス分け
※森川氏の話を基に編集部作成

フォロワー数のクラスによって、企業から受け取る広告宣伝料の単価が異なることもあります。

しかしマーケティングから見た場合、販促効果はフォロワー数だけで判断できません。“ヒト消費”“推し文化”では、「本当にその商品を応援しているか」「商品や業界について豊富な知識をもっているか」などが重視されるのです。頼まれたから宣伝するといった姿勢は、すぐに見抜かれます。発言にウソがない、本当のことを伝えている、という“情報のホンモノ志向”が強まっているのです。

情報にウソがあるとの評判がたてば、どんどんファンが減ってしまい、結局は影響力を失うことになります。

例えばコスメのインフルエンサーで、スキンケア商品は自分が使っていないから紹介しないという人がいます。無責任に紹介して、フォロワーに何かあったら大変なことになると自覚しているからです。食品のインフルエンサーでも、ただ食べて美味しいだけではなく、健康に害はないかなどをしっかり調べて紹介する人は少なくありません。

中学生がインフルエンサーになる第一歩

本当にいい商品を紹介するインフルエンサーは、フォロワー数が1万人未満のナノインフルエンサーであっても、強い影響力をもっています。広告宣伝料の単価も高いインフルエンサーです。

逆に、フォロワー数が100万人を超えると、販売促進としての影響力が薄くなる傾向があります。投稿しても見ない人が大半、「いいね」を押すのは1%未満というケースは少なくありません。

フォロワー数が5000ぐらいでも、「毎日チェックします」というファンが多ければ影響力が濃いということです。最近はフォロワー数より、影響力の濃さが重視されるので、自分が本当に好きな分野でインフルエンサーになることは難しいことではないのです。

インフルエンサーになるための第一歩は、起業するのと同じで「何が一番好きか」に尽きると思います。何時間でも集中できること、寝食を忘れて没頭できることについて情報発信するしかありません。初めはフォロワーがゼロでも、発信しつづけるうちにファンがつくようになります。

検索上位の投稿は何が違うのか

目安の1つになるのは、SNS検索です。自分の投稿が検索結果の何番目に出てくるかで影響力を測ることができます。

例えば、とんこつラーメンが大好きで、自分が住んでいるエリアのお店についてレビューを投稿する。とんこつラーメンとエリア名で検索したとき、自分の投稿が上位に入れば影響力があると考えていいでしょう。

検索で上位に入れば、とんこつラーメンのお店から「新商品を開発したので食べにきませんか」とお誘いのメッセージが届くかもしれません。お店の方たちはインフルエンサーを探しているのです。メールに「一杯無料で進呈します」とあれば、インフルエンサーとして認められたことになります。

検索で、もし同じお店を紹介した他のレビューが自分より上位にあったら、研究対象にすべきです。どんなレビューの内容なのか、うまい表現があるか、写真の撮り方は……など参考にすることで、自分がもっと上位になることを目指します。初めのうちはフォロワー数や再生回数などは気にせず、自分が大好きな分野で価値ある情報は何か、どうすれば高評価を得られるかと研究しつづけることが大切です。

インフルエンサーとして認知度が高まれば、企業などからオファーをもらえるようになります。ここからが本格的なスタートです。

基本スキルは他のビジネスと同じ

インフルエンサーとして成功する秘訣は、他のビジネス分野と大きく変わりません。商品や業界についての知識が豊富であることや他人から信頼される力、愛される力も大切です。

SNSでコメントやDMをもらったらすぐに返信するといった当たり前の努力は欠かせません。サイトやSNSをこまめに更新するなどの継続する力も必要になってきます。

継続する力が弱い人は確かにいて、せっかく投稿をはじめたのに「いいね」が増えないからとすぐにやめてしまうタイプです。初めは反応がほとんどなくて当然ですし、「いいね」が少なくても諦めずに投稿しつづけた人がインフルエンサーになっているのです。すぐにやめてしまうのは本当にもったいないですよ。

「インフルエンサーに必要な資質や能力は何ですか?」と質問されたら、「特別なものはない」というのが私の答えです。インフルエンサーになることは、高校受験みたいに誰でもできると私は考えています。目指すレベルや偏差値によって時間やコストのかけ方が違うだけで、勉強のやり方に大差がないように、特別な才能などないと思います。

注目されるニッチな市場

今後はAIによって言葉の壁を超えられるので、海外に向けても発信するチャンスが出てきます。私がC Channelで最初に意識したのは、インフルエンサー市場が大きい中国です。

例えば、中国からのインバウンド向けに、日本の観光地を発信している人気インフルエンサーがいます。日本食、ゲームやアニメ、子どものおもちゃなどはやはり手堅い分野です。

わりとニッチなところでは、日本の釣具、キャンプ用品などアウトドア分野も中国で人気があります。腸活などの健康分野も注目されていますし、最近は日本のコーヒーが中国で人気という話もあります。

中国のトップインフルエンサーに会うと、朝から晩まで情報を発信しつづけ、ほぼ365日休みなしといった印象です。食事中でも、トイレの中でも発信するような具合で、起業家とほぼ同じ思考の持ち主だと思いました。彼女たちは自分で企画し、チームをつくって会社を設立し、ブランディングしているのです。

気合と根性では勝ち目がなさそうでも、日本人には真面目さや丁寧さといった強みがあります。日本の釣具やコーヒーが人気なのも、結局は日本人らしい丁寧な仕事ぶりが好評なのだろうと思います。

やはり他の仕事と同じように、信頼性の高さがエンゲージメントにつながり、インフルエンサーとして成功するのです。

構成=伊田欣司

森川 亮(もりかわ・あきら)
C Channel 社長
1967年、神奈川県生まれ。89年、筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。在職中に青山学院大学にてMBA取得。2000年にソニー入社。03年ハンゲーム・ジャパン(現LINE)に入社、07年社長に就任。15年よりC Channelを創業。

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