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“泥だらけ”のデニムをリアルコーデで攻略できるか? UK版『VOGUE』エディターが実験

  • 2024.11.29

午後7時。間もなく友人のバースデーイベントに到着する。スピーカーからは流行りの音楽が流れ、いつも通りお酒を飲み、ゴシップを交わすに違いない。いつもと何ら変わらない誕生日会だ。唯一、自分の服装を除いては。なぜなら、自分が今履いているデニムは、泥にまみれている。いや、正確に言うと汚れのように見せかけたダメージ加工がされているだけなのだが。

すべての始まりは、ロメオ・ベッカムだ。見た目もファッションセンスも、2000年代頃の父デビッド・ベッカムにそっくりなことから、私は数多いる“ネポベイビー”の中でも、彼に特に好感を持っている。おまけにベッカムは、まるで泥にまみれているようなダメージ加工が施されたデニムでさえ、おしゃれに履きこなす。パリの街中を自転車で走っているときもニューヨークの街中をぶらついているときも、あらゆる場面で履いていて、そしていつもサマになっている。彼のために作られたジーンズかと思うくらいだ。でも言ってしまえば、ベッカムは22歳の甘いマスクの元サッカー選手でモデル。何を着てもキマるだろう。そんな彼が愛用しているアクネ ストゥディオズACNE STUDIOS)のルーズフィットジーンズ“泥デニム”)を、ごく普通の一般人が身につけたらどうなるのだろうか。気になった私は、彼と同じデニムを調達し、自分にも履きこなせるのかどうか試してみることにした。それで、友人の誕生日会に履いてきたというわけだ。

アクネ ストゥディオズのダメージデニムをさらりと履きこなすロメオ・ベッカム。
Romeo Beckham, Gray Sorrentiアクネ ストゥディオズのダメージデニムをさらりと履きこなすロメオ・ベッカム。

到着とともに、戸惑いと落胆の表情で迎えられるとばかり予想していた。「(デニムが汚れているけれど)大丈夫?」と聞かれるかもしれないとも。でも実際、私を見た友人のショーナは顔色ひとつ変えず、「それ、バレンシアガBALENCIAGA)のデニム?」と平然と尋ねてきた。「違う」と答えると、彼女は納得したように頷き、パーティーの流れを説明し始めた。そしてショーナ以外、誰も私の服装について触れなかった。少しすると「このジーンズ、どう?」と近くにいた女性にたまらず聞いたが、「素敵。いい感じ。最初は本当にエンジンオイルか何か付いているのかと思ったけれど」と加工部分を指差しながら、なんともないように言われた。褒められている感じがして、どこかうれしかったのは事実だ。

もしかしたら、私が求めているリアクションは、この場では得られないのかもしれない。と言うのも私の友人たちは、私が職業柄こういった“実験”をすることに慣れている。このデニムを本当に違和感なく履きこなせているのかどうかを知るには、ファッションに疎い人たちも行く交う街中へと繰り出さなければならないと気づいた。

最初に向かったのは、高級住宅地のメリルボーンにあるエステ「The Ardour Clinic」。立地を考えると、誰かに何か言われるだろうと踏んだ。しかし、誰も気にも留めなかった。髪の毛1本も落ちていない待合室のソファに座ったときでさえも。帰りの電車でも、視線はほとんど感じなかったし、2度見されることも全くと言っていいほどなかった。みんなただスマホに夢中だ。

翌日、同じデニムで出社することにした。職場がファッションの最前線を追う、おしゃれ通が集う『VOGUE』だからこそ、どっちに転ぶかわからなかった。抜かりないコーデに身を包む人たちももちろんいるが、その一方でミュウミュウMIU MIU)のビジュー付きショーツからアヴァヴァヴAVAVAV)の4本指ブーツ、バレンシアガのタオルスカートまで、あらゆるアイテムをリアルコーデに試しに取り入れてきた同僚たちがいるような職場だ。汚れ加工を施したデニムは、そこまで奇異に映らないだろう。

やはり、ここでも同じように、誰も私の服装を気に留めなかった。ついには「どう思う?」と同僚のヘイリーに自分から意見を求めた。私を頭からつま先までざっと見て、「うん、似合うと思う」の一言。履くにはハードルが高いと思っていた汚れ加工のデニムが、どうやらサマになっているようだ。そして普段のコーデにも、この1本はすんなりと馴染む。

Text: Daisy Jones Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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