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野木亜紀子が明かす“ドラマの設定秘話”『海に眠るダイヤモンド』 最終回までに残された多くの謎

  • 2024.12.22

TBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が12月22日に最終回を迎える。脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子の黄金タッグに、主演・神木隆之介を筆頭とした豪華キャストでお送りする、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と現代の東京を行き来する壮大な物語。今期最高傑作という呼び声も高い今作は、ドキュメンタリーとフィクションが混在した重厚なストーリー展開と考察要素がふんだんに盛り込まれ、回を重ねるごとにより一層視聴者が熱を帯びていっている印象だ。本稿では、本作の魅力と残されたいくつかの謎を最終回前に振り返っていきたい。

初のホスト役を含めた、神木隆之介による1人2役の演じ分け

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第8話より (C)TBS

『海に眠るダイヤモンド』の最大の魅力として真っ先に挙げられるのが、神木隆之介の1人2役だろう。神木は端島の鷹羽鉱業の職員として働く鉄平と現代でホストの玲央を演じ分けている。真っ直ぐで仲間思いな鉄平と人に流されるまま生きてきた将来に希望が持てない玲央を、決して正反対というわけではなく、所々で見せる表情と仕草で2つの時代と人をシンクロさせるという複雑な棲み分けを神木は行っている。注目すべきは、神木自身にとって初挑戦となるホスト役の玲央である。神木は野木との対談で、玲央の職業をなぜホストに設定したのか、その理由を尋ねている。野木は、「いろいろな理由がありますが、神木さんのホストが見たかったから!」とささやかな本音を交えつつ、現代と過去を対比させるために、昔にはなかった職業を選んだと語っている。言わば誰もが思い描く“神木像”の鉄平と嘘をつき人を欺いていく玲央のコントラストにもなっている。ただ、玲央はいづみ(宮本信子)との出会いによって人生が急転していく。いづみの口から、そして残された10冊の日記を通じて、玲央にもまた“ダイヤモンド”の概念が宿っていく。最終回前となる第8話では、風俗に斡旋されていくアイリ(安斉星来)を救うこと――それが、人に無関心だった玲央自身の“ダイヤモンド”が着炭した瞬間でもあった。「本気で笑って生きたいんだ」というセリフが象徴的である。

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第8話より (C)TBS

鉄平を中心にした端島での恋愛模様も『海に眠るダイヤモンド』の、特に序盤の物語の大きな要素だ。鉄平と朝子(杉咲花)、賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)、進平(斎藤工)とリナ(池田エライザ)。それは第2話のタイトルにもなっている「スクエアダンス」のようにくるくると矢印が移り変わりながら、それぞれが幸せを手にする第6話「希望の種」へと向かっていく。その後、物語は端島炭鉱の閉山、進平の事故死と影を落としながらも、鉄平の「端島はまだ眠っている」「石炭は出る」という言葉を胸に、着炭を目指していく。ポイントとなるのは、いづみ=朝子と明らかになりながら、ほかの端島での登場人物は現代に一切登場しないこと。公式サイトの相関図を見れば分かりやすいが、本作では名字を伏せる(もちろん公表はしている)ことでミステリー要素を高め、時には進平が「荒木リナ」と呼んだように、家族関係を強調することに成功している。また、「やぐらしか!」という長崎の方言は、端島の朝子と現代のいづみを繋げる特徴的な口癖だが、脚本の野木がSNSや出演者陣との対談で称賛しているのが、朝子を演じる杉咲花の芝居。百合子、リナと比べて幼い芝居を意識的に演じている杉崎は、何気ない仕草から鉄平への思いを滲み出している。それに鈍感な鉄平というのもまた心憎い部分だが、第6話での鉄平から朝子への告白シーンは2人の関係性が自然体な芝居の中に顕在化した、SNSでも反響の高かったシーン。今作で7度目の共演となる神木と杉咲だからこそ生まれた空気感だったと言えるだろう。

最終回までに残された多くの謎

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日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第8話より (C)TBS

2時間SPの大ボリュームで放送となる最終回は、残された多くの謎が明らかになっていくはずだ。第8話ラストでは、第1話冒頭からこれまで幾度となくインサートされてきた、リナと誠を乗せた端島を離れる小舟を漕いでいたのが鉄平だったことが明らかになった。亡くなった兄・進平の代わりに誠の育ての親となることを決心したのか、その眼差しは鉄平として見たことがないほどに鋭い。朝子との約束を果たせぬまま、なぜ鉄平は逃げるように端島を離れる必要があったのか。さらに、現代に残された鉄平の日記を黒く塗りつぶし、ページを切り取ったのは誰なのか。朝子の結婚相手である虎次郎(前原瑞樹)が有力候補だが、果たして。古賀孝明(滝藤賢一)を名乗る、賢将と百合子の子供も登場。古賀の子どもが誤ってオークションに出品していたというフィルムに何が記録されているのか、そして古賀から明かされる真実とは。今作の最大の謎とも言える、玲央が何者なのかも判明するだろう。

現在は廃墟となり、“軍艦島”と呼ばれる端島、さらに長崎の歴史を物語の中で紡いでる『海に眠るダイヤモンド』。同じ日曜劇場の『VIVANT』が、ドラマのロケ地を巡るため、モンゴルを訪れるファンが続出したように、この先も『海に眠るダイヤモンド』の熱は続いていく予感がする。

TBS系 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』 毎週日曜よる9時


参考:脚本・野木亜紀子×土屋太鳳×池田エライザ特別対談!『海に眠るダイヤモンド』お気に入りの名シーンや脱稿への思いを語る