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人に教える時に「分かりやすく伝える技術」とは? SNSとYouTubeで人気学習コンテンツを運営するふたりが対談。大切なのは、「厳密さ」より「大枠」を先に伝えること

  • 2024.11.29

取引先へのプレゼンや後輩へのコーチングなど、社会人にとって「説明する」「教える」は必修スキル。SNSで楽しくわかりやすく英語を学べる「こあらの学校」を運営するこあたん氏と、YouTubeで数学や理科、英語などの楽しさを重視した授業動画を発信しているあきとんとん氏のスペシャル対談を実施。書籍も刊行しているおふたりに、「分かりやすく伝える技術」について語っていただきました。

相手の立場になって考えることが「分かりやすく伝える」ための第一歩

あきとんとんさん(以下、あきとんとん):授業動画を見てくださった方から「分かりやすかったです」って言われることもあって、本当に嬉しい限りです。こあたんさんも僕と同じく「分かりやすい」っていうことを重視して発信されてますが、「分かりやすく伝える」ってどういうことだと思われます?

こあたんさん(以下、こあたん):当たり前すぎるかもしれませんけど、相手に分かりやすく伝えるためには「相手のことをちゃんと考える」しかないと思ってます。

あきとんとん:相手の気持ち、立場、知識みたいなものを考えてながら伝えていく、と。

こあたん:そう。相手が小学生なのに腰痛や盆栽の例を持ち出すのは的外れだし、まったく概要を掴めていない人に細かい部分を説明しても伝わらない。相手がこういう立場の人で、このくらいの知識があって、それならこういう例え話をしてみよう、と考えながら伝えるように気をつけています。

例えば、トランプの「大富豪」ってありますよね。あのルールを1ミリも知らない人に「このカードが一番強くて、こういう組み合わせでカードを出せるんだよ」ってところから説明を始めるから伝わらないんです。まず説明しておきたいのは「一定のルールに沿って順番に手札を場に出していって、早く全てのカードを出しきった人が勝ち」っていうこのゲームの大枠です。

あきとんとん:それって、ある種の気遣いですね。何も知らない人にはこういうところから教えてあげよう、という。

こあたん:そうですね。大枠から伝えるんだから100点満点の説明じゃなくてもいい。まずは、ざっくりこんな感じだよっていうのが8割とか6割とか、そのぐらい伝わればいい。

あきとんとん:確かに。相手のことを考えながら、相手にとって分かりやすく伝えるのは、僕も意識しているところです。もう少し踏み込んで具体的に言うと、僕の場合は数学を教えることも多いので、難解な専門用語を使わないことが大事。

ここが難しい部分なんですけど、数学とか理系の専門用語って厳密に定義されているものなんです。分かりやすく伝えるためにはその厳密さを崩していく場面もある。専門家の方からすると「それは厳密には正しくない」となってしまうんだけど、分かりやすく教えるためには「厳密」かどうかよりも「伝わる」かどうかのほうが重要ですから。

こあたん:SNSでツッコまれたり、たまにありますよね。

あきとんとん:ツッコむ人がいるのも、それはそれで仕方ないことだとは思います。だからこそ、分かりやすく崩して説明する時には覚悟が必要というか、ツッコミに耐えられるメンタルが必要というか。

こあたん:誤解される部分があってもまずは大枠を理解してもらって、生じた誤解はその後で解消していく。そういう割り切りや覚悟は、分かりやすく伝える上では大事なことかもしれませんね。

あきとんとん:先ほどこあたんさんから、トランプの大富豪という例え話で出ましたけれども、相手にぴったりの例え話を用意できるか、これも分かりやすく伝えるためのスキルのひとつですよね。

僕の本の中では、数学の確率問題を説明する時に、スマホゲームのガチャを例え話として出してみました。読んでくれる層や伝えたい世代に分かりやすい例え話、これはいつでも頭の中で意識して考えています。電車に乗っている時とかカフェにいる時とか、気になるものがあったら「これ、数学の説明で使えるかも」と考えてみる。ある意味、普段の日常生活を数学と結び付けてるってことかもしれないです。

こあたん:何をどんなふうに例えるか、どういう例え話なら伝わりやすいか、それをいつも考えてるってことですね。

あきとんとん:何かを見た時に何を感じ取るのか、そこは人それぞれ違うと思うんです。同じものを見てもインプットとして得るものは違うというか。そこは常に意識しておきたいポイントですね。

達成感を感じられる「努力の可視化」

あきとんとん:勉強していく過程で「分かりやすく伝える」のも大事ですけど、勉強の成果を「分かりやすく伝える」のも大事なことだと思います。今の話で言うと、スクールの生徒さんにアプリで学習記録をつけてもらってるんですね。この日は2時間勉強しました、この日は3時間でした、っていうのが棒グラフで画面に出てくる。それが毎日積み重なってくると、ゲーム感覚で楽しく勉強できるっていう生徒さんもたくさんいます。

こあたん:僕も小学生や中学生の頃は、自分で紙に棒グラフを書いて塗ってました。1時間勉強したら1マス塗る。毎日必ず塗っていたけど多い時で8時間くらい。だけど、たまに10時間とか勉強することもあって、10時間分の棒グラフを塗っている時に、すごく達成感を感じました。

あきとんとん:達成感を感じるためにも「努力の可視化」が必要なんですよね。分かりやすく伝えるのが大事っていうのは、勉強の中身だけの話に限らない。「これだけ努力したんだよ」とか「これだけの成果に繋がったんだよ」とか、そういう部分も分かりやすく伝えることで勉強の楽しさっていうのは高められると思います。

こあたん オーストラリア在住の会社員。楽しく、わかりやすく英語を学べる「こあらの学校」の校長として、イラストや漫画をXおよびInstagramで毎日発信。大人になるまで海外経験がなく、もともとは英語に苦手意識があったからこそわかる、英語学習者が本当に知りたいポイントを伝えている。特にXは一目で内容がわかる可愛いイラストとシュールな面白さが支持され、フォロワー数は77万人超(2024年9月現在)。「こあらの学校」名義の著作『カンタンなのになぜか伝わる こあら式英語のフレーズ図鑑』(KADOKAWA)が発売中。

あきとんとん 勉強が苦手な中高生や、学び直しに取り組む大人に向けて、YouTubeなどで授業動画を発信中。立命館大学を経て京都大学大学院を卒業。動画では、数学と理科を中心に英語なども加えた幅広い教科で「楽しさ」重視の授業を行なっている。YouTubeチャンネル「【楽しい授業動画】あきとんとん」は登録者数は48万人超(2024年9月現在)。著作『見るだけで理解が加速する 得点アップ 数学公式図鑑』(KADOKAWA)が発売中。

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