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【白金台】松岡美術館「中国陶磁展 うわぐすりの1500年」同時開催「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」

  • 2024.12.15

緑釉(りょくゆう)、三彩(さんさい)、青磁(せいじ)、澱青釉(でんせいゆう)―多彩な輝き、うわぐすりの美

松岡美術館で開催中の「中国陶磁展 うわぐすりの1500年」[2024年10月29日(火)~2025年2月9日(日)]を見て来ました。 中国陶磁の魅力の一つは、「うわぐすり」すなわち釉薬による艶やかで色鮮やかな美しさです。 窯の中での焼成により溶けて陶磁器の表面を覆うガラス質の膜となるものが、うわぐすり、釉薬です。

陶磁器の耐久性を高める釉薬は、実用性だけでなく、後漢(ごかん)時代から明(みん)時代までの1500年間に多彩な表現が追求されて来ました。 緑釉、三彩、青磁、澱青釉と中国陶磁の釉薬の神秘的な美しさを堪能できる展覧会です。

同時開催は「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」。通年企画は「古代エジプトの美術 平穏と幸せへの願い」が開催されます。

※特別な許可を得て撮影しています。 撮影禁止の作品以外で、一部個人利用に限り撮影可能な作品があります。撮影はまわりのお客様へのご配慮と館内の注意事項をご確認ください。

出典:リビング東京Web

左から、《三彩大壺》、《三彩婦人》、《三彩龍耳瓶》、《三彩鳳首瓶》 唐時代 松岡美術館所蔵

低火度釉(ていかどゆう)―鉛釉陶器(えんゆうとうき)、唐三彩(とうさんさい)

「うわぐすり」すなわち釉薬は焼成により陶磁器の表面を覆い光沢ある艶と色彩をもたらします。 焼成前の釉薬は泥のようなもので、釉薬の種類によっても全く違う風景が現れて来るそうです。

低火度釉は、酸化鉛を媒溶剤とする鉛釉(えんゆう)で、約700℃から800℃で溶けます。 後漢時代から唐(とう)時代に盛んに作られた褐釉や緑釉陶器などが知られています。

後漢時代《褐釉浮彫獣鐶壺(かつゆううきぼりじゅうかんこ)》《緑釉壺(りょくゆうこ)》

釉薬に含まれている金属は焼くと褐色や緑色に発色します。

全体に艶のある褐色に覆われた《褐釉浮彫獣鐶壺》(左)。鉛釉の場合は、呈色剤として酸化鉄を加えるとこのような褐色に発色するそうです。

右の《緑釉壺》は、酸化銅により、緑色の発色を見せています。

出典:リビング東京Web

左から、《褐釉浮彫獣鐶壺》、《緑釉壺》 後漢時代 松岡美術館所蔵

唐三彩《三彩鳳首瓶(さんさいほうしゅへい)》―シルクロードから西域の影響も

国際交流が活発になった唐時代、都・長安はシルクロードを通しての交易で西域の商人が行きかい、経済が発展し、仏教や景教(ネストリウス派キリスト教)、祆教(けんきょう(ゾロアスター教))などの寺院や教会が建立される国際都市として発展していました。

唐時代の《三彩鳳首瓶》。水注の頭には鳳凰、細い首、把手の付いた形は、ササン朝ペルシャの胡瓶(こへい)に源流があるとされる法隆寺宝物館の《龍首水瓶》(東京国立博物館蔵)にも似ています。

胴には騎射図が描かれ、褐釉、透明釉の他、西方に由来するコバルトを原料とする藍釉が使われており、唐時代の東西文化交流を思わせる作品です。

出典:リビング東京Web

《三彩鳳首瓶》 唐時代 松岡美術館所蔵

高火度釉(こうかどゆう)―灰釉陶器(かいゆうとうき)、青磁(せいじ)、澱青釉(でんせいゆう)

低火度釉よりも先に誕生し、中国陶磁史の中で最も歴史が古いとされるのが、釉薬が灰釉(かいゆう)だそうです。 木灰、石灰を媒溶剤とする灰釉(かいゆう)は約1200℃以上で溶けます。

およそ3800年前(紀元前16世紀~11世紀)の商(殷)時代に、窯の中で焼成中に燃料の灰が降りかかり、その部分が溶けてガラス化することが発見され、本格的に灰釉陶器が作られ始めます。 灰釉を改良した釉薬を使ったやきものが青磁になります。宋(そう)時代の青磁、金(きん)~元(げん)時代、明(みん)時代に作られた澱青釉も青磁の一種です。

後漢時代から西晋時代へ、青磁のやきもの《青磁人物楼閣壺(せいじじんぶつろうかくこ)(神亭)》

《青磁人物楼閣壺(神亭)》(左)。壺の上に三層の楼閣がかたどられた不思議な形の壺です。 六朝時代に固有の形で、神亭、魂瓶と呼ばれているもので、鬼面、瑞獣、光背を持つ仏像が貼り付けられることもあるそうです。

死後の世界や信仰に関わりのある六朝時代の江南文化を知る上で貴重な作品だそうです。

 

出典:リビング東京Web

左、《青磁人物楼閣壺(神亭)》 越州窯 西晋 松岡美術館所蔵

宋時代の青磁(せいじ)《青磁袴腰香炉(せいじはかまごしこうろ)》

《青磁袴腰香炉》。南宋(なんそう)時代に龍泉窯(りゅうせんよう)で焼かれた青磁のやきものです。 無駄のないすっきりした器形に淡い光沢のある青緑色の釉薬が滑らかに表面を覆います。

表面を覆う釉中の細かな気泡による光の乱反射は、青磁の神秘的な色合いに影響を与えています。

南宋時代の青磁は、貿易品として輸出され、鎌倉、室町時代以降に日本に多数輸入されています。 袴腰(はかまごし)は日本での呼称で丸みを帯びた胴が袴を着けた姿に見えることに由来します。

 

出典:リビング東京Web

《青磁袴腰香炉》 龍泉窯 南宋時代 松岡美術館所蔵

澱青釉(でんせいゆう)のスカイブルー《澱青釉紅斑瓶(でんせいゆうこうはんへい)》

《澱青釉紅斑瓶》。珪酸分やリンを多く含み、乳濁したスカイブルーの釉が厚くかけられています。 還元炎焼成により釉薬の鉄分が青みを帯びてターコイズのような質感を感じさせます。 酸化銅を呈色剤とした紫紅釉が、肩から胴にかけられた紅斑が現代アートを思わせます。

釉面の全体に小さな気泡の痕跡と細かな貫入がびっしりと巡らされており、青と紅の釉薬が作る景色も含めて見所の多い澱青釉のやきものです。

 

出典:リビング東京Web

《澱青釉紅斑瓶》 鈞窯 金~元時代 松岡美術館所蔵

同時開催 「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」

松岡美術館の創設者・松岡清次郎は若い頃から伝統芸能を愛好し、文楽や、能楽、歌舞伎などの伝統芸能をテーマとした絵画コレクションを多数蒐集しています。

江戸時代以前の絵画や、近現代では日展や院展などの公募展の出品作まで清次郎自ら直接見聞し求めたもので、清次郎の審美眼に叶った作品が並びます。

出典:リビング東京Web

左から、《大原御幸図》 筆者未詳 江戸時代 紙本金地着色、《山寺の春》 下村観山 1915(大正4)年 絹本着色 どちらも前期:2024年10月29日(火)~12月15日(日)、《伝承・浄夜 毛越寺》 大森運夫 1981(昭和56)年 紙本着色 通期展示 すべて松岡美術館所蔵

松岡清次郎も親しんだ義太夫

若い頃から義太夫に親しんでいた清次郎は、自ら演奏するなどしていたようで、文楽を題材にした作品も多数蒐集しています。 また、1970年発足の一般社団法人義太夫協会の設立に関わり、資金援助もしたそうです。

文楽を題材にした作品を多く手がけてきた作家、宮前秀樹、菊川多賀、大森運夫の作品を見ることが出来ました。

文楽のストーリー性をそのまま体現したような人形の佇まいを描いた印象的な作品が並びます。

松岡清次郎愛用の見台と床本『仮名手本忠臣蔵』も展示されていました。

 

出典:リビング東京Web

「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」展示風景 松岡美術館

通年企画 古代エジプトの美術 平穏と幸せへの願い

古代エジプトの人々は王から一般庶民に至るまで、多くの神々を信仰し、国家の繁栄や日々のくらしの安寧を祈りながら、来世での幸福な復活を願いました。

冥界の王オシリスは弟セトの奸計により暗殺されましたが、復活することにより来世の幸福を願うエジプトの人々の間で広く信仰を集めました。 死後にオシリスの前で行われる最後の審判で無罪と認められれば来世の幸福が約束されました。

オシリスの子ホルスはセトとの闘いで損傷した眼が回復したという神話から、眼病を治癒する神としても信仰されました。

 

出典:リビング東京Web

《ホルス》 エジプト ブロンズ 末期王朝時代 第26王朝 紀元前664-紀元前525年頃 通期展示 松岡美術館所蔵

中国陶磁の静的な美と伝統芸能の舞や謡の動的な美を楽しむ

中国陶磁の艶やかで鮮やかな色彩が魅せる美しさは、釉薬の性質や施し方によっても様々に変化するそうです。

窯の中で焼成され溶けてガラス質となって表面を覆う「うわぐすり」釉薬は、焼成後の冷えた陶磁器の表面に神秘的な景色を奇跡のように幾つも生み出して来ました。

同時開催の伝統芸能の世界を描いた絵画コレクションでは、中国陶磁の静的な美とは対照的な舞台芸術の動的な美の世界との対比も楽しめました。

「中国陶磁展 うわぐすりの1500年」と同時開催「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」は2025年2月9日(日)まで。 ぜひお出かけください。

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、東洋陶磁名品コースター 青花双鳳草虫図八角瓶(1‚200円)、起き上がり干支(770円)を購入。 コロンとして可愛らしい起き上がり干支は、来年2025年令和7年の干支の巳です。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 松岡美術館

〇松岡美術館

URL:https://www.matsuoka-museum.jp/

住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-12-6

TEL:03-5449-0251

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで) 第1金曜日のみ10:00~19:00(入館は18:30まで)

休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、展示替え期間、年末年始

観覧料:一般1,400円、25歳以下700円、障がい者手帳をお持ちの方と介助者1名まで半額 高校生以下無料

交通:東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線「白金台駅」1番出口から徒歩7分

JR「目黒駅」東口から徒歩15分

JR「目黒駅」東口バスターミナル2番のりばより黒77・橋86のバスに乗車2つ目の「東大医科研病院西門」にて下車徒歩1分

〇「中国陶磁展 うわぐすりの1500年」

会期:2024年10月29日(火)~2025年2月9日(日)※会期中一部展示替えがあります

前期:2024年10月29日(火)~12月15日(日)

後期:2024年12月17日(火)~2025年2月9日

〇同時開催「伝統芸能の世界 ―能楽・歌舞伎・文楽―」

〇通年企画 古代エジプトの美術 平穏と幸せへの願い

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