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紫式部『源氏物語 二十三帖 初音』あらすじ紹介。六条院の華やかな新春の一幕。年賀に回った源氏はどの女君の隣で夜を迎えるのか…!?

  • 2024.11.28

平安貴族の物語として有名な『源氏物語』ですが、古文で書かれていることからとっつきにくく感じる方もいるかもしれません。古典文学を身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第23章「初音(はつね)」をご紹介します。

『源氏物語 初音』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

「初音」で描かれるのは新春を迎え華やぐ六条院の女君と源氏の一幕。紫の上をはじめ、明石の姫君、花散里、玉鬘(たまかずら)のもとを訪れた源氏が、元日の夜を共に過ごしたのは明石の君でした「初音」という巻名は、明石の君が実の娘・明石の姫君に送った「年月をまつに引かれてふる人に今日鶯の初音聞かせよ」という和歌から取っています。離れて暮らす子の成長を願いながら再会を待ち続けた明石の君を、源氏は大切に扱い、容姿や立ち居振る舞いも品があり格別な人だと改めて評しています。高くない身分を補うだけの魅力的な人物として描かれている明石の君とは対照的に、皇族出身でありながら美貌もセンスもなく痛々しいまでに滑稽に描かれる末摘花のもとをも年賀に訪れ、それでも見捨てることのない源氏の懐の深さが見て取れます。また、それぞれの女君が身に着けている着物の描写が色鮮やかで、とても華やかな印象の章段です。

これまでのあらすじ

10代の頃に夢中になった恋人・夕顔の死から20年近い年月が経ったが、源氏は夕顔のことを忘れることはなかった。夕顔と頭中将(今の内大臣)との間に生まれた娘・玉鬘を、夕顔の侍女であった右近は探し続けていた。

紫の上、花散里、秋好中宮、明石の君が住む六条院が完成した。右近によって偶然見つけ出された玉鬘も、源氏によって引き取られ、六条院の花散里の住む町に住み始めた。娘として引き取ったものの、玉鬘の美しさに満足を覚えた源氏は、親子の情愛を超えたものを感じ始めていた。

『源氏物語 初音』の主な登場人物

光源氏:36歳。妻や恋人や娘たちを住まわせるため六条院を造営する。 紫の上:28歳。源氏の妻。六条院では春の町に住む。 明石の君:27歳。明石の姫君の母。六条院では冬の町に住む。 明石の姫君:8歳。源氏と明石の君の子。3歳で源氏に引き取られ紫の上に育てられる。 玉鬘:22歳。夕顔と頭中将(現在の内大臣)の子。母・夕顔の死後、筑紫で育つ。 末摘花:過去に源氏と関係を持ち、二条東院で源氏の庇護を受ける。大きな赤い鼻を持つ。 空蝉:過去に源氏が恋をした女性。夫に先立たれ出家し、二条東院で源氏の庇護を受ける。

『源氏物語 初音』のあらすじ

新年を迎えた六条院はいつにも増して華やいでいた。源氏は六条院の女君のもとを年賀に訪れていた。紫の上のもとを訪ねた際には歌を贈り合い、仲睦まじく語り合った。紫の上が養育する明石の姫君を訪ねると、実の母である明石の君からの便りが目に留まった。「長い年月を待っている母に、今日は鶯の初音―正月の初便りを下さいね」という明石の君に、姫君自身で返歌をするよう源氏は促した。

その後、源氏は花散里、玉鬘を訪問した。年を重ねて容姿は衰えてしまい、共寝をすることはなくなった花散里だが、人柄の良さは理想的な女性だと思った。玉鬘の山吹の着物姿は目を見張るような美しさで、加えてまだ自分に気を許していない態度にも源氏は心惹かれていた。

日が暮れる頃、源氏は明石の君のもとを訪ねた。美しく品のある佇まいや振る舞いは、格別な女性だと感じ、新年早々紫の上の機嫌を損ねることになると危惧しながらも、明石の君と夜を過ごした。

翌朝、案の定機嫌の悪い紫の上の機嫌を取ろうとする源氏であったが、対する紫の上の返事はなく、面倒に思った源氏は寝たふりをして日が高くなるまで過ごした。

数日後、源氏は二条東院の末摘花と空蝉を訪ねた。皇族出身でありながら没落し、自分のことを信じて待っている末摘花を気の毒でいじらしいと思いながら、やはり目立つ赤い鼻や貧相で痛々しいほどの姿には目も当てられず、思わず几帳を整えて対面した。出家した空蝉は仏事に励んで過ごしていた。尼姿になっても風情ある美しさは変わらず、人柄も素晴らしい。こうして、源氏は世話をしている女性たちのもとを訪ね、優しい言葉をかけて過ごした。

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