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8年経っても消えないインパクト…!「ほんとに奥深い」大ヒット映画を送り出した有名脚本家による“月9”の魅力

  • 2025.1.5

2016年に放送された坂元裕二脚本のフジ月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』。後に坂元脚本の映画『花束みたいな恋をした』(2021年)にも出演した有村架純と、高良健吾が主演を務めた本作には、高畑充希、西島隆弘、森川葵、坂口健太郎をはじめ、永野芽郁、満島ひかり、芳根京子、高橋一生らも出演しており、その後の活躍も目覚ましい俳優陣が出演。思わず考えさせられずにはいられないインパクトと余韻を残したこのヒューマン・ラブストーリーの魅力を紐解いていきたい。

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(C)SANKEI

背景まで丁寧に描かれた人物描写が「ほんとに奥深い」

本作で有村架純が演じたのは、北海道のさびれた町で暮らしていた音。幼いころに女手ひとつで育ててくれた母を亡くし、育ての父からは家政婦扱いを受け、母は寝たきりで音の介護が暮らせない状態…音はその状況をただただ受け入れて生きていた。

高良健吾演じる練は、福島で農業に従事する祖父に育てられた。祖父がだまし取られた畑を買い戻すために上京し、東京の運送会社で引っ越しの仕事に就くも、人を疑うことを知らず、運送会社の先輩たちからひどくこき使われ、毎日へとへとになるまで働いていた。

第1話から音と練が背負う過酷な人生が描かれ、胸を締めつけられずにはいられない。

物語は、そんな2人の運命的な出会いと行動から展開。そして、音と練、晴太、練の恋人・木穂子(高畑充希)、練の幼なじみの小夏(森川葵)、音が働く会社の御曹司・朝陽(西島隆弘)を中心に、それぞれの故郷を離れ上京した若者たちの恋愛群像劇が描かれる。

これまでさまざまな社会問題に触れ、視聴者に問いかけてきた坂元作品。本作でも、モラハラ、パワハラ、雇い止め、過酷な就労環境、現代人の孤独、不倫など、彼らの姿からリアルで深刻な社会の闇を映し出していた。

同時に心の弱さ、不安定な人間性を映し出しながらも、登場人物一人一人の背景を丁寧に、感情を繊細に描かいているからこそ、それぞれに人物を理解する部分があったことも本作の魅力の一つ。そんな彼らの芯をついた言葉も印象的で、観る人それぞれのトゲにも薬にもなっていたように思う。

SNSでも「本当にこのドラマは些細な描写まで繊細」「心の機微にシンクロしてはじめて共感できる」「音にも練にも木穂子にも苦しくて切ない背景があって、ほんとに奥深い」と称賛の声が上がっていた。

相手を思う気持ちがピュア! 「切ないのに温かい」恋模様

東京で生きづらさを感じながら必死に生きる彼ら。それぞれの苦しみの中で繰り広げられる恋模様は、やはり心を照らす光となって、眩しくかけがえのない時間として映し出されていたように思う。恋によって味わった彼らのさまざま感情は、“生”を実感させられるものでもあった。

本作での恋の描かれた方にも「濁りのない透明感、切ないのに温かい。一言一言放たれる言葉の奥ゆかしさと深さ。ほんと素敵」「心の奥に響く」との声が上がっていた。

そして、さまざまな描写がシリアスでリアルだったからこそ、今を精一杯生きる彼らの幸せを願うような、祈りにも似た感情を覚えずはいられなかった。主題歌となった手嶌葵の「明日への手紙」もドラマの大事なピースになっており、その慈愛に満ちた歌声が登場人物だけでなく、物語に激しく心を揺さぶられた視聴者も包み込んでくれていた。



ライター:小松加奈
ライター/編集者。音楽・映画・ドラマ・アニメなどのエンタメ系を中心にインタビュー/レビュー/コラム記事などを手掛ける。

※記事内の情報は執筆時点の情報です