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お互いの利益のために婚姻を結んだ「人間」と「妖狐」。打算的な新婚生活は、何だかんだ相性が良いようで…? イチャラブが尊すぎる異類婚姻譚

  • 2024.11.27

現世と隠世がつながる世界。あやかしが住む世界にある一軒の古めかしい日本家屋には、「人間」と「女狐」の新婚夫婦が仲睦まじく暮らしていた。『狐面夫婦』(岩飛猫/双葉社)では、そんな夫婦が化かし合いながらも、何だかんだと愛を持って生きていく異類婚姻譚が描かれている。

時は明治。六捨(ろくすて)は、百姓の口減らしに遭い、生き延びるために犯罪グループに所属してきた。しかし、仲間だと思っていたリーダーから強盗の首謀者に仕立て上げられ、処刑されてしまうことに。六捨の首に処刑人の刀が振り降ろされようとしたそのとき、辺りに霧が立ち込め不思議な女が現れる。その正体は、人間の男の生気を糧にして生きる妖狐・狐栢(こはく)だった。

処刑から逃れ、狐栢に匿ってもらうために婿入りすることになった六捨は、あやかしが生きる世界にある狐栢の家で暮らすことに。お互い打算的な気持ちで始まった異種族同士の新婚生活なのに、なぜだか案外相性が良いのが面白い。安全に生きる場所の確保とおいしい食事というお互いの利益のための結婚だったが、何だかんだと愛ある生活を送ることになるのだ。

妖狐と人間のスキンシップは、想像しているより難しい。六捨は狐栢に口づけしようとするも、その鼻先に唇が当たってしまい、中々人間のようにはいかない。それでも六捨と身体を重ねるため、狐栢が「擬人化」して寝室にやって来るのもいじらしい。そんな狐栢に対し、六捨は「どんな姿でも受け入れる」といってありのままの姿を愛してくれたのだった。

異種族だからこそ生まれる初々しいやり取りに、思わずキュンとしてしまう。その裏にはとんでもない打算があるというのに… 時々垣間見える本音とイチャラブとのギャップがたまらない。

この先の物語には、人間を食べ物として扱うあやかし側の常識や、六捨を裏切ったリーダーへの復讐などのエッセンスが加わってくる。食事と結婚した狐栢が常識と愛情に揺れる姿や、他のあやかしに食べられかけながらも関係を築いていく六捨の図々しくもたくましい姿を見れるのも楽しい。

あやかしと人間の新婚生活は、これからどのような方向に進んでいくのか。ふたりの歩む未来から、今後も目が離せない。

文=ネゴト / 押入れの人

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