Bean to Barの先駆け、ユニークなチョコレート 「USHIO CHOCOLATL」
まず訪れたのは、広島県尾道市の向島(むかいしま)の、山の中腹に位置するチョコレートメーカー「USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)」。
アグロフォレストリー(森林の中で自然環境に配慮して作る農法)で栽培されたカカオをはじめ、世界各国から良質な豆を仕入れ、豆の焙煎から製造、販売まですべて自分たちで行う、“Bean to Bar”のチョコレートを作っています。
東京のセレクトショップやカフェにも並んでいる、知る人ぞ知るチョコレートです。
六角形の形やデザインもおしゃれなチョコレート。
材料はカカオ豆と砂糖のみ、香料もバターもミルクも使わないシンプルなチョコレート。その製法もちょっとユニークです。
例えば、この店舗でしか買えないという「アンナの手紙」は、ワインを作る工程で出るぶどうの搾りかすを使用。ビターでワインにも合うチョコレートに。「海と太陽」にはドライみかんとアーモンドを練り込み、「チョコハッカ」は名前の通りハッカが入っていて、ひと口食べると爽快感のあるチョコレートに。「あまいひとくち」は砂糖の代わりにカシューナッツを使い、バニラビーンズで甘味をプラスした、お店で一番甘いチョコレートとなっています。
それぞれ、スタッフやアーティスト、ミュージシャンなどがデザインしたパッケージに包まれていて、とてもおしゃれ。お土産にも喜ばれそうです。
カフェではドリンクやスウィーツを楽しむことも。
ショーケースにはチョコレートのほか、カカオシロップやチョコレートソースも並びます。
カフェスペースでは、カカオを使ったドリンクメニューも豊富。フードもチョコレートケーキやミルクジェラート、日替わりでマスカルポーネチーズケーキなど、魅力的なラインナップです。
カカオソーダにミルクジェラートをのせた、カカオソーダフロート¥990
「USHIO CHOCOLATL」限定。チャイのようなスパイシーミルクドリンク¥660
店内に飾られた、スタッフによる、チョコレート製造の過程の刺しゅうもかわいい。
カカオニブに砂糖をコーディングした「CHC(クラックヒップカカオ)」。そのまま食べたり、アイスにかけても。¥864
USHIO CHOCOLATL 尾道店
広島県尾道市向島町立花2200
Tel::0848-36-6408 営業時間:11:00〜16:30(L.O.16:00)
火・水曜休み
https://ushiochocolatl.com/
まるでフランス。島の景色を楽しみながら味わうガレット 「Les Dix-Sept Bateaux」
ランチで向かったのは、尾道から船で渡る向島の海辺にある、ガレットとクレープの店「Les Dix-Sept Bateaux(レ ディセット バトー)」。2023年にオープンした、フランス・ブルターニュ地方の伝統料理である、そば粉のガレットを食べられる、小さなレストランです。
船がすぐ近くにある、ローカルな雰囲気がブルターニュの港町に似ているそう。
フランスで買い付けたという、フレンチカントリースタイルのインテリアもかわいい。
フランス製の鉄板で直火焼きするガレットは、外側はパリッと、中はもちっとした食感。地元・尾道の旬の野菜やフルーツ、ハーブを使ったガレットは日替わりで、見た目も華やか。
1階はテイクアウトや単品で。2階はコーススタイルで、日替わりのスープ、季節のガレット、シーズンのクレープ、シードルがセットに。基本的に昼のみの営業で、一人分から注文できます。
一番人気のガレットは、自家製のキャラメルとクルミを使った塩バターキャラメル(¥950、テイクアウト¥750)だそう。
テイクアウトの人は、雰囲気のよいテラス席でも食べられるそう。
テイクアウトのガレットは¥200オフ。
日替わりのガレット¥1,450〜(店内)。
桃、ネクタリン、マスカット、ハーブを使ったシーズンクレープ。
コースのデザートはクレープで、桃やシャインマスカット、いちじく、ハーブなど、旬のフルーツを贅沢に使った一品。この季節のスイートクレープはマロンキャラメル!
非日常的な景色をプライベートな空間で眺めながら味わう、地元のおいしい食材を使った本格的なガレット。地元の中学生も通うというほど、気軽な雰囲気も魅力です。
Les Dix-Sept Bateaux
広島県尾道市向島町立花2982-6
Tel:0848-44-8221
営業時間:11:00〜15:00(L.O.14:00) ※テイクアウトは10:30〜 不定休
Instagram@les17bateaux
瀬戸内の食の豊かさを伝えるワイナリー 「瀬戸内醸造所」
最後に訪れたのは、瀬戸内海に面した三原市にある「瀬戸内醸造所」。瀬戸内では、造船が主要産業のひとつであり、かつて造船所として使用されていた跡地に2021年にオープンした、ワイナリーとレストランです。
日本での生産量の約97%を占めるというレモンのほか、実は多く育てられているというりんごなど、さまざまなフルーツを生産する瀬戸内エリア。特にぶどうは、150年前から続く日本有数の産地。この地域の食文化の豊かさを継承するため、果汁だけで醸造するお酒を作っています。
入り口がフォトフレームのように風景を切り取るような、美しい建築。
あえて造船所の記憶を残した庭からは、山と海の両方を眺められます。
美術館のような建物の設計を手がけたのは、国内外で高く評価される建築家の菅原大輔さん。杉板の表面を焼いて作る焼杉材を使い、瀬戸内の情景に溶け込むようなアートな景観は必見です。
ぶどうはすべて手作業で収穫、選果、装置に入れて時間をかけてゆっくりと絞られます。搾りかすは地鶏や牛の飼料、レストランのソースに使うなど、サステイナブルなワイン作りを目指しているそう。“SETOUCHIを旅するワイン”をコンセプトに、瀬戸内のさまざまな産地と連携したお酒やシードルなどが造られています。
それぞれのワイン名にはぶどうの収穫年と産地、品種が書かれています。広島産のりんごを使ったシードルも。
またワイナリーに併設されたレストラン「mio」は、“ワインに合うSETOUCHI料理”がコンセプト。瀬戸内醸造所のワインに合うオリジナルのメニューが味わえます。
どの席からも瀬戸内海を眺めることができる、レストラン店内。
醸造棟を見学できるツアーも(要相談)。グラスワイン一杯の試飲付きは、一人¥1,500
レストランに併設したワインショップでは、瀬戸内醸造所のワインやシードルなど、果実酒を全ラインナップ。
ワイナリーの見学や、バーベキューなども体験可能(どちらも要相談)。周りに商業施設や密集した住宅のない郊外だからこそできる、特別な体験ができそうです。
瀬戸内醸造所
広島県三原市須波西1-5-26
営業時間については、店舗まで要お問い合わせ
https://setouchijozojo.jp/
サイクリストたちに愛される 「ONOMICHI U2」
今回の旅の拠点にしたのは、尾道駅から海沿いを歩いてすぐという好立地の複合施設「ONOMICHI U2」。1943年に建てられた「県営上屋(うわや)2号倉庫」という名前の海運倉庫をリノベーションし、そこから名前を取って「U2」と名付けられたそう。
モダンな建築は、建築家の谷尻誠さんによるもの。“まちの中のちいさなまち”をテーマに、瀬戸内の春を味わえるレストラン、バー、カフェ、ベーカリー、ライフスタイルショップなどが入っています。
瀬戸内海を眺められる、カジュアルな雰囲気の「KOG BAR」。
自転車のプロショップも。
ONOMICHI U2
広島県尾道市西御所町5-11
https://onomichi-u2.com
サイクル旅が満喫できる海沿いのホテル 「HOTEL CYCLE」
今回私が泊まったのは、この「ONOMICHI U2」内にある「HOTEL CYCLE」。名前の通り、サイクリストにフレンドリーなホテルがコンセプト。客室にはサイクルハンガーを設置し、サイクルショップで自転車をレンタルすることもできます。
自転車でそのままチェックインできる。
モダンなお部屋。アメニティは「OSAJI」なのもうれしいポイント。
客室はスタンダードとスーペリア、デラックスの3タイプ。オリジナルのルームウェアは備後産デニムを使用するなどのこだわり。
朝食は、併設された「The RESTAURANT」で、宿泊者限定の地元の新鮮野菜と焼き立てパンのセットを味わえます。
瀬戸内産のフルーツを使ったジュースが並ぶ、ドリンクバー。
メインの料理は、スクランブルエッグやソーセージとベーコンの3つから、スープをセレクト。サラダバーもあり、野菜たっぷりなのがうれしい。
海沿いを歩いて尾道商店街の方まで、散策も楽しいエリア。
HOTEL CYCLE
Tel:0848-21-0550
https://www.chillnn.com/177b47d1207b8
おいしいものや美しい景観、ここでしかできない体験を存分に楽しめる、広島の尾道、三原。街歩きやサイクリングが楽しめるこの季節、ぜひ訪れてみては?
photograph:Hiroshi Kikui、Mayumi Akagi edit & text :Mayumi Akagi
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