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ベトナムの旧正月テトの風物詩、100年続く伝統工芸村「クアンフーカウ線香村」

  • 2024.11.28

もう11月と思ったら、気づけばあっという間にもう年末で大晦日……なんてよくある話ですよね。

日本をはじめ多くの国が1月1日に新年を祝うなか、じつはアジア諸国のほとんどが旧暦の旧正月に新年を祝っているのをご存じですか?

そうした国のひとつ、ベトナムでは旧正月のイベントに欠かせない線香を作る伝統工芸村が今、映えスポットとして注目されています。

今回は旧正月テトをふまえながら、話題の「クアンフーカウ線香村」をご紹介します。

ベトナムの旧正月「テト」とは

Photo by PIXTA

日本人が新年を1月1日の元旦に祝うように、ベトナムでは旧暦(太陽太陰暦)にそった旧正月に新年をお祝いします。その旧正月をベトナムでは「テト(Tết)」と呼び、1年でもっとも重要な祝祭日とみなしています。テトは家族や親戚らと過ごす大事な期間であり、長期のテト休暇を取ることが法律で定められています。

また、旧暦の旧正月では、1月1日を元旦に固定する新暦とは異なり、毎年日付が異なるのが特徴。

ベトナムでは1月下旬から2月上旬の間とされ、毎年10月頃、政府から公式発表がなされます。それをもとに、年末年始のテト休暇連休(1週間程度)が組まれるのです。

Photo by PIXTA

ベトナム人にとってテトは、新年を迎える大事な日であると同時に春の到来を祝う日でもあります。

新年を象徴するアプリコットの花や桃の花、キンカンの木で華やかに家を飾り付けたら、元旦には祖先を祀った祭壇に供物をささげ、線香を手向けて新年を祝います。

ベトナムの旧正月に欠かせない線香。その線香づくりを専門とする工房はベトナム各地に点在しますが、中でも近年注目を集めているのが、首都ハノイ郊外にある「クアンフーカウ線香村(Quang Phu Cau)」です。

100年続く「クアンフーカウ線香村」とは

Photo by Mayumi

ハノイ市中心から南へおよそ35km、ウンホア郡(Ung Hoa)の一角にある「クアンフーカウ線香村」は、田園地帯に囲まれた、人口1.1万人余りの小さな集落です。

そこは、線香づくりを専門とした100年以上続く伝統工芸村で知られ、現在およそ3,000世帯が従事しています。

Photo by Mayumi

従来、線香づくりにのみに専念していたクアンフーカウ線香村。

しかし、2017年頃、あるベトナム人写真家が撮影した村の写真が米国の大手写真専門誌に紹介され、さらに国際的な写真コンテストでも優勝したことから一躍脚光を浴びました。

観光客が増えるにしたがって、地域は観光名所としての道も模索し始めます。文化を伝える貴重な機会と新たな村の収益源として写真撮影のサービスを提供し始めたそうです。

Photo by Mayumi

古くからの伝統色は赤とピンクですが、近年は写真撮影向けに緑や紫、黄色にオレンジなど、“映え”を意識したカラフルな色付けも行っているそう。

クアンフーカウ線香村では、こうした線香束を干す風景を工房の軒先や庭のなか、橋のたもとや路地裏、墓地に至るまで、さまざまな場面で目にすることができます。

新しく誕生した“映えスポット”

Photo by Mayumi

工房の傍らに設置された写真撮影用の中庭エリア。

色とりどりの線香の束を、ベトナム国旗や花模様、ベトナム国のかたちの象徴するS字型に並べるなどして、観光客が喜ぶ“映えスポット”を演出しています。

Photo by Mayumi

毎朝きれいにデザインされ、かたちが崩れたらすぐにスタッフがメンテナンスします。じつに職人技で、根気のいる作業ですね。

Photo by Mayumi

クアンフーカウ線香村が観光に力を入れ始めたのはまだここ2~3年ほど。そのため、村内にこうした撮影スペースを設けている工房は、筆者が探した限りでは2~3軒でした。

今後は写真撮影サービスのほか、線香づくり体験や伝統食と組みわせたアクティビティなどが検討されているそう。これからの村の動向が期待されます。

利用方法について

Photo by Mayumi

入場料は、2024年11月現在でどの工房も1人50,000ドン(約300円)。現金払いのみのため、細かいお金を事前に用意していきましょう。

Photo by Mayumi

工房によっては、ベトナムの伝統葉笠・ノンラーの無料貸し出しや、女性向けにアオザイのレンタル衣装も有料で行っています。気になる方はぜひお試しあれ。

Photo by Mayumi

中庭のテラスには上からの撮影のために足場が組まれ、脚立や椅子なども用意されています。また、工房のスタッフへ依頼すれば撮影も手伝ってくれるようでした。(ただし、ベトナム語のみ)

線香工房を見学

Photo by Mayumi

隣接した工房では、タイミングが合えば、職人がまさに線香を作っている作業現場を見学できることも。ただし、邪魔にならないように静かに見学させてもらいましょう。

Photo by Mayumi

一部機械が導入されているとはいえ、その多くの工程が未だ手作業。鮮やかな染料と独特の香料に包まれ、ベトナムの伝統文化にふれることができました。

訪問のベストシーズン

Photo by Mayumi

工房は1年中操業しているため、基本的に作業風景はいつでも見学可能です。とはいえ、人々が本格的に旧正月の準備に取り掛かる11月から12月頃が線香村の生産ピーク。見学するにはベストなシーズンと言われています。

また、訪問する日は、線香を外に干せない雨天時は避け、晴天日をねらいましょう。さらに言えば、午前中早い時間帯の方が建物の影が入りにくく、観光客も少な目でおススメです。

旧正月にベトナムを訪れるときはお気を付けを

2025年の旧正月テトは1月29日(水)に決定しています。冒頭でも少し触れましたが、ベトナムでは労働法に基づき、テトを基点に5日間の祝日を定め、テト休暇を取るよう規定されています。

正式なテト休暇スケジュールは政府の公式発表が待たれますが、2024年11月現在では、旧正月の元旦前2日間を大晦日、大晦日前夜とし、元旦後3日間を3連休とする連休スケジュールが提案されているそう。そうなると前週末の土日と元旦当日の週末土日がくっついて1月25日(土)~2月2日(日)の大型9連休になる予測がされています。

テト休暇の間は、多くのお店やサービスが休業し、帰省ラッシュで交通はカオス状態、ホテルは年末年始で価格が高騰する可能性があります。観光客としてはメリットが少なく、避けた方が良いでしょう。

円安傾向のこのご時世、為替の影響をさほど受けていないベトナムは、海外好きな日本人にとっても救世主的な国のひとつ。ぜひ映える写真と異文化理解を深めに、今度、ベトナムを訪れてみませんか?

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