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母親にドレスを破かれた少年は、やがて人気ドラァグクイーンへ。故郷へ帰ると、奇妙な少年が「アナタのようなヴァンパイアになりたい」と迫ってきて…

  • 2024.11.27

ローリは、ピンクのフリルや花のモチーフが好きな少年だった。周囲に理解者がいない田舎町で育ったローリの人生を描くのが『ペパロニ・ヴァンパイア』(須田翔子/紙版:KADOKAWA、電子版:マンガボックス)だ。

本作は社会の偏見と闘いながら自分らしく生きるローリの、故郷と過去への復讐の物語である。

都会のショークラブで看板ドラァグクイーンとして活躍するローリは、他のクイーンたちから「ママ・ローリ」と慕われる存在だ。そんなローリのもとに、かつて自分を見捨てた母の訃報が届く。これを機に「娘たち」と独立を目指すローリだが、そう簡単にことがすすむわけもなく…。ローリはひとり、故郷の町へ戻ることになってしまう。

そこで出会ったのが「ボクはヴァンパイアだ」と名乗る少年・ペパロニである。ペパロニは「アナタのようなヴァンパイアになりたい」とローリに迫るのだった。

故郷の田舎町を舞台に、根強いマイノリティへの差別や偏見を描きつつも、テンポの良い展開と魅力的なキャラクターたちが読者を惹き込む。ストーリーとキャラクターにマッチした大胆な絵柄も、大きな魅力である。

本作最大のテーマとも言える「家族」。幼いころ、フリルのドレスを着たことがきっかけで母親と縁を切ったローリは、血の繋がりだけが家族ではないという真理を、自らの生き方で証明しようとしてきた。

ドラァグクィーンの「娘たち」、学生時代の下僕、そして故郷の町での新たな出会い。いつだって「ハウス・オブ・ローリ」(アタシの家族)のために闘うローリの姿は、強く格好良く、そして少し寂しげである。

芯のある優しさを纏った言葉で多くの人々を救ってきたローリだが、その強さの下には深い孤独や弱さも隠されている。それでも前を向いて生きようとする姿にぐっと心を掴まれてしまうはず。社会の偏見と闘いながら自分らしく生きるローリの姿が、わたしたちに自分らしく生きることの意味を問いかける。

母の死をきっかけに明らかになっていく過去の真相。田舎町で起こった事件とその謎。そして新たな「家族」との関係など、今後の展開からますます目が離せない。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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