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「あなたのお嫁さんにして」孤独な少女がワケありな死神へ求婚を迫る。不器用で優しいラブロマンス

  • 2024.11.27

愛に種族の差なんて関係ない――。人間と人外の存在との関係を描いた、いわゆる“異種間恋愛もの”と呼ばれるジャンルは、いつの時代も一定層の少女漫画ファンから熱烈な支持を受ける。『死神に嫁ぐ日』(椿カヲリ/KADOKAWA)は、少女と死神の紡ぐ不器用な愛情を描く胸キュン必至のファンタジーラブロマンスだ。

ヒロイン・初(うぶ)は、親と死に別れた孤独な少女。彼女は死神が住むという「死神の森」を訪ね、自分を殺してほしいと願う。しかし、死神は彼女の願いに応えなかった。

「結婚して、子どもを産み、その子を育て終えるまでは殺さない」

死神の言葉を聞いた初は「ならわたしを、あなたのお嫁さんにして」と申し出て相手の度肝を抜く。

一般に、死神は神様というより、死を司る霊的存在として畏怖の念を持って扱われることが多い。死神と聞いて、真っ黒なローブを羽織った骸骨や大鎌を振りかざす恐ろしい姿を連想する人も多いだろう。

しかし本作に登場する死神は一見、どこにでもいる青年にしか見えない。人間の娘である初の言動に振り回される。元気がなければおろおろと気をもみ、悩んでいればさりげなく手を貸し、時には無理な要求にも応えようとする。その姿はまさしく惚れた女に振り回される人間の男そのものだ。初を守るべき存在として大切にしながらも素直な想いをなかなか口にできない様子は、じれったくも微笑ましい。

一方の初はといえば、幼いながらにまるで魔性の女そのもの。

「あなたの妻になりたい」「ずっと愛しています」

死神に対して事あるごとに愛を囁き続けるその姿は、年を経るごとに確実に少女から女へと変化していく。

自身に向けられる愛情の深さに頭を抱える死神ははたして、すでに自分が彼女の虜であることを自覚しているのだろうか。少女・初は早くも、死神の男との関係の主導権を握りつつあるのである。そして物語が進むにつれ、死神自身の悲しい過去もしだいに明らかになっていく。

ファンタジーの世界において、純粋な愛の力は時にあらゆる障壁を軽々と超える。死という現象を司る存在である死神と、いとけない人間の少女。本来ならば決して交わらないはずのふたりが織りなす愛の結末を、ぜひとも見届けてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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