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「10mの風は感じない」が町民あるある?厄介者が最大の資源になる道しるべは

  • 2024.11.26

再生可能エネルギーとして注目を集めている風力発電。
その先進地、デンマークからひとりの男性が北海道にやってきました。

実はこの男性、HBCウェザーセンターの近藤肇アナウンサーが24年前に取材したお相手。
改めて同行取材すると、北海道の可能性と課題が見えてきました。

新千歳空港の到着口の前で待っていたのはデンマークから来たケンジ・ステファン・スズキさん(80)。

近藤アナとスズキさんは、今回が24年ぶりの再会になります。

Sitakke
2000年にデンマークで取材する近藤肇アナウンサーとスズキさん

2000年、デンマークを訪れた近藤アナは、スズキさんが手がける風車を取材していました。

岩手県出身のスズキさんは、大学3年生の時に福祉を学ぶためにデンマークに留学。
デンマークの魅力に惹かれてそのまま移り住み、風力発電システムを日本に普及させる事業を手がけました。

北海道の半分ほどの面積のデンマークでは、国内の発電量の約半分が風力発電によるものです。

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スズキさんは、1997年に「風のがっこう」を設立。
デンマークを訪れた日本人に風力発電や環境についての研修を行ってきました。

スズキさんが大切に持っているゲストブックには、老若男女、研修を受けた人たちからの感謝の言葉が詰まっていました。

スズキさんには、長年抱いていた夢がありました。それは日高地方のえりも岬を訪れることでした。## 「こんな風初めて」

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「えりも岬は絶対来たいと思ってた。やっと夢がかなった」

えりも岬にやってきたスズキさんは感無量の表情でこう話しました。

スズキさんは、えりも町が強い風の吹く地域だと知っていましたが、これまでなかなか訪れる機会がありませんでした。

しかし80歳の今…体が動くうちにと意を決してやってきたのです。

「すごい風だ、びっくりしちゃう。風車の仕事30年やっててこんな風初めて」

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えりも岬の年間平均風速はおよそ8メートル。
10メートル以上の風が吹く日が年間270日ほどあります。

「こんなに風が吹いてるなんて想像つかなかった。うれしい。自然の宝庫」

えりも町には今、風車が60基ほどあります。

さらに、さらにその約100倍の発電ができる風車を建てようというプロジェクトが、関西と関東の会社によって進められているということです。

えりもに恩恵をもたらす風について、町民に話を聞いてみると…

「屋根が飛んだり停電になったりする」

「風が吹きすぎると波が立って漁に出られない」

なんていう声も。
再生可能エネルギーになることはわかっていても、「厄介者」だという実感はぬぐい切れないようです。

「知らないうちにポンポン建っちゃう」

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スズキさんはえりも町長のもとを訪れました。
デンマークでの風力発電の取り組みを町長に紹介する、それが今回の表敬訪問の目的です。

「10メートルの風が1年間に270日、そんなに吹いてるのかと。デンマークで10メートルの風が吹く日はない」

スズキさんが話すと、大西正紀町長は「町民は10メートルくらいの風なら吹いてる感じがしない」と応じます。

町長も、町民から厄介者扱いされていた風が資源になり始めて、それをうまく活用したいと思っているといいますが…

大西町長からこんな一言が。

「風車の設置には、一切町が関わっていない。風車を建てる場所はほとんどが民間の土地で、町が知らないうちにポンポン建っちゃうんです」

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実は、えりも町の風車は本州の会社などが民間の土地を借りて建てているものがほとんど。電気を売って得た利益も、地元へ十分に還元がされていないといいます。

町は3年前、風車を建てる事業者に届け出などを義務付ける条例を制定しました。

しかし、すでに建っている風車や、条例制定より前に国から認可を受けた風車を規制することはできず、町として設置に十分に関与できていないのが現状なんです。

Sitakke

一方デンマークでは、風力発電の電気を売って生まれた収入の一部が地元の住民に還元されています。

「風はあるんだけど知識がない」

大西町長がそんな「自虐」を言うと、スズキさんが一言。

「だからみんなで勉強しましょう」

えりもに新しい風を

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風力発電を地元に供給するためには送電線などの整備も必要になるため、スズキさんは、すぐに現状を変えることは難しいと考えます。

しかし、あきらめるわけではありません。

「風車とはどういうものかという教材で、中学校の理科の時間で勉強会をやってもいい」

えりも町で風を浴びたスズキさんは、子どもたちの勉強会や観光客のための資料を準備しようと意気込んでいます。

そんなスズキさんに、24年越しに取材したHBCウェザーセンターの近藤肇アナウンサーがたずねます。

「えりも岬にあるといいもの、アイディアありますか?」

「えりも岬にどれだけエネルギーがあるか知るのが大事。常にデータを見られる場所があるといい」

デンマークから風のまちを訪れたケンジ・ステファン・スズキさん。
80歳にして、えりもに新しい風を吹かせようとしています。

風は無料で無限の資源、企業や住民みんなにとってメリットのあるやり方を議論して見つけていくことが必要です。

ケンジ・スズキさんは、来年の春もう一度えりもを訪れて、勉強会を開きたいと話していました。

デンマークの風力発電に興味を持った子どもがいたら、スズキさんは日本からの旅費を出してもいいと話しています。

デンマークでできたことは、きっと北海道でもできるはず。その未来に思いを託します。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年11月6日)の情報に基づきます。

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