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ヨーロッパ企画主催「ショートショートムービーフェスティバル 2024」とは?大会の楽しみ方やショートムービーの魅力について【上田誠インタビュー】

  • 2024.11.27

5分間の映画を撮り、観せあい、観客投票でグランプリを競うヨーロッパ企画の名物イベント「ショートショートムービーフェスティバル」の東京大会(本戦)が、2024年12月1日(日)TOHOシネマズ 日比谷にて開催される。

2004年に始まり、5年ぶりの開催となる「ショートショートムービーフェスティバル」とは一体どのような大会なのか?

本記事ではヨーロッパ企画の上田誠氏に大会の楽しみ方や、ショートムービーの魅力、さらに自身のショートムービー制作についてをインタビュー。

About 上田誠

ヨーロッパ企画代表。本公演の脚本・演出を担当。外部の舞台や、映画・テレビドラマの脚本、番組の企画構成も手掛ける。脚本を務めたテレビアニメ「四畳半神話大系」(’10)が、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞受賞。大喜利イベント「ダイナマイト関西2010 third」で優勝。’17年、「来てけつかるべき新世界」で第61回岸田國士戯曲賞を受賞。脚本を務めたアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(’17)は日本アカデミー賞最優秀アニメーション賞。時間ものの脚本を数多く手がけ、映画『ドロステのはてで僕ら』(’20)は多数の海外映画祭で受賞。

まずは「ショートショートムービーフェスティバル」が目的とすること、大切にしていることをお伺いさせてください。

上田:実はこれ、そもそも何か目的を持って始めたものではないんですよ。僕らの劇団の成り立ちから話し始めると分かりやすいと思うんですけど、まず僕らって劇団なんですね。立ち上げ当時から「ヨーロッパハウス」と呼んでる溜まり場があって、そこで半共同生活というか、学生時代はいつもそこに集まって、活動していて。僕の脚本執筆が遅いので(笑)、みんな作業しながらも待ち時間があって。当時はスマホとかがない時代だったんですけど、劇団の記録用に購入したビデオカメラがあって、それを使って映画を撮るノリが生まれたんですよ。

夜中にほんまに適当にその場で脚本を書いて撮りに行こうって言って撮りに行って。帰ってきて観て笑って終わり。っていう流れがどんどん対決形式になって、2チームに分かれて1時間くらいで撮影して編集して観せ合うぐらいの。

そんなヨーロッパハウスの深夜のノリをイベントにしたのが始まりなんです。なので立ち上げ当初は全然映画業界のことだったり、目的については深く考えていなくて。

なるほど。割とラフな空気感から始まったんですね。

上田:そういう始まりだったんですけど、大会として開催すると盛り上がってきて、外部の方もどんどん本気になって入ってきてくれて。5分なので割と挑戦しやすいんですよね。そして一般の方も募集してみようかと募集してみたらめっちゃ応募が来たりもして。意外とインディーズ映画ってこんなに盛り上がってるんやと思いました。

一般の方も!

上田:というところから、要は全然映画じゃない文脈の人らが映画の“え”の字も知らずに始めた映画祭なんですよ。もうファンイベントといっても過言ではない。

「一般の方」というのはどの程度なのですか? お仕事関係なく、純粋に映画が好きな人のような温度感の方もいらっしゃるんですか?

上田:もちろんプロを目指している方もいるんですけど、なんか面白そうってなって仲間で集まって撮って応募してくれる、映画業界に関わりのない方もいらっしゃいます。ヨーロッパ企画っぽいノリが好きで集まって撮ってみました、みたいな。

気軽なテンションで楽しんで取り組めるのがとてもいいですね。

上田:はい。映画の新しい文脈を作るとか、監督の卵も含めた才能の掘り起こしであるとか、そういうことも一応意義にはなるんですけど、映画を作ることが実は非常にハードルが低くて楽しいことであるっていうことを体現できていればいいと思っていて。それが映画界を盛り上げると言うと大袈裟ですけど、全然違う入り口から映画を楽しむ人たちが増えてきたらいいと思っています。

確かに、一般的に映画は“観る”という楽しみ方ですもんね。

上田:自分自身で映画を作ってみることで、制作ってこういう苦労があるんだなとか、ここが大変だよなとか、そういう見方もできるようになると思うんです。作ったら観せたいと思うので、この観せ合う文化があまりにも面白くて続けている感じがあります。

今お話をお伺いしていると、とにかく映画作りって楽しそうで、私も友達とワイワイ作ってみようかなという気持ちになりました。

上田:それがいいと思います! 正直僕も今、出品する作品はスマホで撮ってますからね。

機材もスマホで、となるとかなりハードルが下がりますね。

上田:今はもうスマホがあれば簡単に映画が手軽に作れると思ったので、応募数が増えるかと思ったらそうでもなくて。動画を制作する人は増えてるかもしれないけど、映画を作るってやっぱり気合いが必要なのかなと感じて、それはそれで面白いです。

映画は色々な意図だったり想いを持って制作するものだからかもしれません。ちなみにルールにある“5分以内”という時間制限には何か理由があるのでしょうか?

上田:映画なのでひと展開入れるとなると、3分だと短くて、5分以上になると観ていられへん作品もあるので5分がちょうど良くて。

3分だとカップラーメンができるくらいですもんね(笑)

上田:そうそう(笑)。それやと味わうまでは到達しないという。あと観客投票という制度をとっている点はミソで。ここでやっぱり熱くなりますね。いかに観客にウケるとか、5分間の中でちゃんとお客さんに打撃を与えられるかというバトルで。

しっかり味わってもらうところまで到達しないといけないですもんね。

上田:映画や演劇って評価されることはあるけれど、競うことってそんなになくて。例えばお笑いって短いからこそ競い合えて、それでめっちゃレベルが上がっていっていると思うんですよ。ショートショートムービーフェスティバルも競い合うからこそ、大会のレベルがどんどん上がっているんです。

そうですよね。投票数が目に見えてわかると思うのですが、出品されるお立場としてはプレッシャーなどあるのでしょうか?

上田:僕自身は第一回目から参加していて、優勝もしているから、背中を見せるみたいな気持ちになっていて。もちろん優勝はしたいですけど(笑)、こんな映画をとって大コケしたとかでもいいんで、何か爪痕を残すというか、この映画祭でしか作れない何かを作れたらいいなという気持ちでいます。

この映画祭でしかできない新しいチャレンジなどを見せることに集中しているということでしょうか。

上田:そうですね。僕は普段脚本やったり色々しているので、ここでしかやれないことをやろうって気持ちが強いです。だから票数は意外とそんなに気にしていないです。でも例えば一般の方とか、普段監督業やられていない方とかってなかなか数字と対峙することってないじゃないですか。だからそれぞれ感じ方は違うと思うんですけどね。今回は5年ぶりの開催なので劇団メンバー内で作品を募ってみたら結構応募数が多くて。劇団内でいうと、この票数で劇団内ヒエラルキーみたいなことはできますね(笑)。

順位が見えると、ということですね?

上田:はい。順位が高いと箔がつくので、やっぱり一目置かれます。あいつは最下位か、とかも(笑)。それはすごくいい作用やなと思っています。面白いものというか、投票される作品に価値があると如実にわかるので。もちろん評価外の良さもありますが、投票制度によるいい作用はめっちゃありますね。

ゼロ票だったら少し辛いですね(笑)

上田:ゼロ票はめっちゃ嫌ですね(笑)。一応僕は劇団の代表でもあるので(笑)。5位くらいにはなっておきたい(笑)。他の応募者に花を持たせたい気持ちもあるけど、そんなことは言ってられないところもあって(笑)。

実際に反応が見えてシビアな大会でもありますもんね。

上田:幸いなことにたくさんお客さんが来てくれる大会になって、実際にお客さんの前で上映されて、票があってもなくても肌感でダイレクトに反応を感じられるのはいいと思うし、この映画祭の大きな特徴のひとつでもあると思っています。

今回はテーマが「タイトルロール映画」ということですが、テーマ選定はどのようにされるんですか?

上田:ルールがないと戦えないので設定している感じで、今まではSF映画やホラーなどもう少しジャンルを限定して設定していたんですけど、今回は幅を広めに設定したいと思って、どんなジャンルでも作れるテーマにしました。エンタメ映画じゃないタイトルロール映画ってあまりないと思うんですね。そういう意味ではエンタメ宣言ではあるかなと。特にテーマに込めた想いや期待することがあるというよりは、幅広く捉えてもらえたらいいなという気持ちが強いですね。映画の敷居って高いように思うけど、映画ごっこやりたいっていう人も結構いると思うんですよね。

映画の敷居が高いというのはわかります。好きだけど、自分が映画を作れるとはなかなか思わないです。

上田:敷居が高い感じがするから気軽に撮れないし、出せないと思うんですけど、僕らも演劇がそもそも、演劇学科で学んで、とかそういうところから始まっていなくて、仲間内で始めた感じなので、そういう人がいてもいいっていう気持ちでやっていますね。

映画制作の第一歩としては入りやすいから、ショートムービーの大会をやりたいと考えられたということですよね。

上田:そうですそうです。これは僕だけかもしれないんですけど、発明的なことを思いついた時って、僕は最初に作る時はあんまり長く作れないんですよ。

なるほど、第一歩目が。

上田:この映画祭にかつて出品してくださったAR三兄弟の川田十夢さんという発明家のようなメディアアーティストさんに、電話が発明された時って最初の通話時間は十何秒が限界だったけど、今はそれは当然時間が伸びて、小型化されて実用化されてく過程に(映画制作は)似てると言われて。たしかに最初5分しか作れなかったものを頑張ったら長編化できる。『リバー、流れないでよ』とか、長編と言って差し支えない尺なんですけど、70分とか85分作るのが限界なんですよ。シナリオの制約などもあって。要は、実験的なものって最初は短くしか作れないんじゃないかという気がしていて。だから短くすることで実験的な手法とかが出てきやすいフォーマットやなと思います。

ちなみに皆さんどのように制作する映画の方向性を決めていくのでしょうか。

上田:監督それぞれに使える武器があるんですよ。例えば人脈がある人は人をたくさん起用できるし、カメラ機材に詳しい人は機材を駆使できるんですよ。で、僕にはあまり人脈や機材の知識はなくて、僕にあるのは机の上でひたすらに考える力しかないんですよ(笑)。だからとにかく机の上でまず時間をかけたら、稼働は最小で作れる映画と決めていて。まあ僕はめんどくさがりでロケにでるのもあんまりなんで(笑)。とにかく机の上で作る映画(笑)。スマホで撮るって決めて。そうしたらカメラマンも呼ばなくていいので。あと出演者は一人だけ呼んで時間もかけず、1時間くらいで終わる撮影を何度か積んだらいいか。みたいなところからですね。

そういう入りで(笑)。その手法で成り立つのはショートムービーならではですもんね。

上田:そうですね。それでも僕、今年はめっちゃいいの思いついたんで、すごい面白いと思いますよ。

自信がおありなんですね。(スタッフに向けて)もう皆さん観られましたか?

上田:いや、まだ撮影中で完成してないですね。

そんなにギリギリなんですか!

上田:ギリギリですね。22日納品で。でももう最終カット撮り終えたらあと編集したら完成なんで。

その自由度の高さをお伺いすると、自分もチャレンジできるかも!?と思ってしまいます(笑)。

上田:それでいうと魚釣りに似てると思うんです。僕は魚釣りしないんですけど(笑)。

(笑)

上田:魚釣りって自分で準備しないといけないじゃないですか。朝から道具を準備して、餌を準備して。それでどんだけ釣れるかっていう一人の戦いじゃないですか。その感じが似てるし、面白いなって思ういます。

一人の戦いで長編映画を作り上げることは難しいですもんね。

上田:そうですね。僕の作り方は魚釣りに似ていると思いますね。色々小道具を自分で作ってカバンに詰めて、昨日も撮影して、公園に呼び出してゴソゴソ準備して撮って、片付けて、明日も撮りますよ。

そんな近々な作品だったと思っていなかったので驚きました(笑)

上田:そうなんですよ(笑)

でも先ほどおっしゃられたように今回はいい作品ができそうだということなので期待が高まります。

上田:いやー今回は面白いと思います。まだ7分の2しか撮れてないんですけど。

それぞれ個性や武器があって、最終的に作品が出来てきて、結果まで見届けられる点がアイドルのサバイバルオーディションを観ているような気持ちにもなります。

上田:あーなるほど!

評価に参加できるという点でもとても楽しいし、観客投票を行う本大会ならではだなと感じます。結果を見たいという気持ちもくすぐられます。

上田:そうですよね。普段の制作だとあまり結果が出なかったり、見えないことに対してフラストレーションがあったりもするので、参加監督側も投票数が結果として賞になるから競い合えますし、お客さんも投票という形で参加できるし、そこがこの大会のいいところだと思いますね。

最後に今回の記事を読んでショートショートムービーフェスティバルが気になる!という方に向けてメッセージをお願いします。

上田:今後もこの大会は続けていきたいので、この記事を読んで少しでも作品を撮ってみたいという気持ちになった方は今からぜひ撮ってみて欲しいです。スマホ1台で撮れてしまうので。観にきてくれる方にはもちろん楽しんで欲しいです。映画作るのって楽しいですよ、という体験をしてほしいです。

映画を作って応募して、例えば落選したとしても、じゃあ何が通ったのかって見てみたいですし、実際に参加してみるのがいいかもしれないですね。

上田:そうですね。落ちたら落ちたでいいじゃないですか。なんか作った映画って観せたくなると思うんですよ。だからこの大会はSNSに近いかもしれないですね。

たしかに。

上田:みんなに観てもらっていいねが集まったら嬉しいみたいな。感覚としては同じやと思いますよ。

SNSのリアルバージョンというか。

上田:そうそう。その感覚で。チャレンジしてみて欲しいです。

日常的にSNS投稿用に動画を編集する機会も多いので、それを映画に変えたり。

上田:いいと思います! 自分が撮ってみたいものには熱量だったり体重が乗ったりもするので、そういう題材でぜひ。

「ショートショートムービーフェスティバル 2024」東京大会(本戦)を前に、11月16日(土)に京都のヒューリックホールで開催された予選の激戦を勝ち抜いた5作品が発表となった。

京都予選通過作品(5作品)

1位 金丸慎太郎監督 91票
2位 藤谷理子・ヒロシエリ監督 63票
3位 石田剛太監督 60 票
4位 緒方一智監督 57 票
5位 角田貴志監督 41票

東京大会(本戦)参加監督

上田誠、諏訪雅、永野宗典、中川晴樹、黒木正浩、山口淳太、小林哲也(※過去大会優勝経験者)飯塚貴士、岩井澤健治、五分目悟(※ゲスト監督)に加え、以下の京都予選通過者が参加。金丸慎太郎、藤谷理子・ヒロシエリ、石田剛太、緒方一智、角田貴志
※東京本戦参加作品のタイトル、上映順は当日発表。

「ショートショートムービーフェスティバル 2024」東京大会(本戦)は、2024年12月1日(日)TOHOシネマズ 日比谷で開催予定。公式HPでは過去のグランプリ作品も公開中。

公式HP:https://www.europe-kikaku.com/project/ssmf11/

※2024年11月25日時点の情報です。

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