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ある朝、鏡を見ると瞳が消失していた少女。原因は学校内のいじめだった/右園死児報告⑤

  • 2024.11.26

『右園死児報告』(真島文吉/KADOKAWA)第5回【全5回】『うぞのしにこ』と読む。この文字列を、人間、動物、無機物、現象などの名前に採用すると、壊滅的な被害が出る。「右園死児に至る集団報告」は明治二五年から続く政府、軍、捜査機関、探偵、一般人による非公式調査報告体系。右園死児という名の人物あるいは動物、無機物が、規格外の現象の発端となることから、その原理の解明と対策を目的に発足した。X(Twitter)発の人気ホラー小説『右園死児報告』をお楽しみください。

報告一三号

報告案件 封印用生体七号 報告者 田島茜(たじまあかね)(軍研究員)

極度に右園死児(うぞのしにこ)化した人間は存在洗浄が不能になるため、その災害誘引力を封印する目的で別の生体への埋め込みが行われる。具体的には生きた大型家畜などの体内に対象者を外科的に接続し、右園死児としての個、個認識を埋没させる。

他存在の肉体の一部(臓器など)と化すことで右園死児の災害は軽減されるため、このような生体封印を施されるわけだが、軍収容施設で飼育されていた封印用生体一七体のうちの一体が突然腐敗を始め、数分後に右園死児が露出。保護監房を破り研究員・監視員を殺傷、脱走した。

この封印用生体は奇形の家畜を流用したものだったが、活動再開した右園死児の影響を受け腐敗変貌、形容しようのない姿形になった。脱走した生体は施設から三キロメートル離れた地点で武装警備隊と衝突、二時間に及ぶ攻撃により破壊された。右園死児は最重要汚染体として再度収容封印措置が取られた。

生体封印の脆弱性、危険性が露呈(ろてい)した事件であり、これ以降収容システムがさらに強化され、危機管理マニュアルも刷新された。

報告一四号

報告案件 小向夜子(こむかいよるこ) 報告者 小向夜子

都内高校生の少女が、自らの右園死児(うぞのしにこ)化を自己申告した。少女は学校内での集団加虐行為の一環で同級生や教師から右園死児と呼称され、かつ返事をすることを強要されていた。八ヶ月ほどその状態が続き、ある朝、鏡を見ると瞳が消失していたため、親に連れられて軍施設に出頭した。

軍担当官が少女を診察したところ瞳以外に変状が見られなかったため、収容施設ではなく軍病院の隔離区域に入所手続きを取った。自己認識修正訓練などを経て少女の精神状態は安定、症状の進行も認められなかった。瞳は消失したが視力は問題なく残存しており、極めて軽度の右園死児化の一例として整理された。

少女は現在軍機構内で看護教育されており、将来に関しては各部署間で調整中。なお少女の右園死児化に関わった者は警察組織が確保し、現場学校は閉鎖されている。

報告一五号

報告案件 蛆主宿儺(うじぬすくな) 報告者 伊藤佳代子(いとうかよこ)

蛆主宿儺(うじぬすくな)という名の神仏が祀(まつ)られる山村からの報告。報告者は蛆主宿儺の社を管理する家系の者で、報告一二号『右園宮』にて言及された和鏡が蛆主宿儺の御神体の鏡と同一のものではないかと思い至った。

さらに報告者は蛆主宿儺と右園死児(うぞのしにこ)の音の近似性にも気づき、どちらかの名称がなまって相手方に近い音に変貌した可能性をも通報した。軍調査班が現地に赴(おもむ)き、御神体を調べたところ『う俗のみや』の彫り文字が確認されたため、これを押収した。

しかし蛆主宿儺の御神体を持ち帰る際、武装した村人達に襲撃され数名が死傷、報告者を殺害されてしまった。応援要請を受けて数時間後に後続班が到着、村人達を排除したが、救出できた調査員は一名のみであった。

蛆主宿儺の御神体は右園死児として回収され、右園死児のルーツ研究の資料とされた。なおこの報告は最終的には救助された調査班員、冴島 将吾(さえじましょうご)により完成されたが、本人の希望により報告者の名義と体裁は第一通報者のものとなっている。

<続きは本書でお楽しみください>

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