メンズのピアスに対する偏見。「今はもう、メジャーなアクセサリーとしてつける時代」

現在公開中のリドリー・スコット監督の超大作アクション映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で、権力を手にするためなら人を欺き、裏切ることをいとわない謎の奴隷職人マクリヌスを完璧に演じているデンゼル・ワシントン。劇中、その耳には小ぶりな金色のフープピアスが揺れている。ジャンティ・イェーツとデヴィッド・クロスマンが手がけた絢爛たる衣装の一部であるこの控えめなデザインのアクセサリーは、どんな場面でもワシントンに威厳と迫力をもたらし、私は終始、彼の耳もとから目が離せなかった。こんなにも小さくてさりげないジュエリーが、こんなにもインパクトがあるなんて誰が思っただろう。そしてこの映画をきっかけに、メンズのピアス（特にロングタイプのもの）について、今まで以上に考えさせられることになった。

揺れるタイプのロングピアスは、人を選ぶこともしばしば。堂々とつけなければ、なかなかさまにならない。長年にわたり、ジョージ・マイケルをはじめとするさまざまな人気アーティストなどに愛用されてきたものの、「遊び人やガラが悪い男性が身につけるもの」というネガティブなイメージがついて回っていることも否めない。アクセサリーが身につけている人の性格などを指し示すものになっているのだとしたら、メンズのロングピアスは全力で避けるべきという意見も一部ある。

大のピアス愛好家として、これはあまりにも決めつけが激しいと思う。たしかに男性の片耳ピアスは、同性愛者を意味するものとして歴史的にとらえられてきたところがあり、1970年代にはゲイの男性が自分のセクシャリティをこっそりと示す手段として、右耳にピアスをつけることが一般的になった。以来、マイケル・ジョーダンやクリスティアーノ・ロナウド、ネイマールのようなヘテロセクシャルの著名人も愛用しているにもかかわらず、男性がつける片耳のピアスは左右関係なく「クィアな男性がつけるもの」としてのイメージが定着している。

なぜメンズのピアスにおいては、世間はいまだに何かしらの偏見を持っているのだろう。私に言わせれば、皆あまりにも深刻にとらえすぎていて、深読みしすぎている。キレイな時計やネックレスのように、片耳やロングピアスも取り入れ方によってはセンスよく映り、慎ましいルックにも華やかさをプラスしてくれる。リル・ナズ・X、ポール・メスカル、ハリー・スタイルズのようなスターたちもその魅力を大いに理解していて、レッドカーペットではクラシックなスーツやタキシードに、揺れるピアスを合わせている。2019年のメットガラ（MET GALA）でグッチ（GUCCI）のティアドロップ型パールピアスを着用したスタイルズに至っては、ネット上で大いに反響を呼んだ。

大きなブローチや派手なメイクのように過度に主張することなく、適度なモダンさと視覚的な面白さを演出してくれるロングピアスは、伝統的なメンズウェアのドレスコードを極めてさりげない方法で覆す。また、多少なりとも賛否両論を呼ぶとわかっていながら、堂々と身につけている男性を見ると魅力的に映る。何せ、かつては王族が富を示すためにつけていたアクセサリーだ。

結局のところ、メンズのピアスもジュエリーのひとつにすぎない。オデル・ベッカムからジャクソン・ワンまで、あらゆる男性セレブがコーデに取り入れているのを思うと、ピアスはおそらく、世間が思っている以上にファッションと化しているのだ。ロングピアスは男性の間でもますます主流になりつつあり、いずれは定番のメンズアクセサリーとして、不動の人気を誇るようになるだろう。

Text: Christian Allaire Adaptation: Anzu Kawano

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