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ケイト・モスが語る、ZARAとの最新コラボレーション。膨大なアーカイブから見つけた宝物たちが、コレクションになるまで

  • 2024.11.26

ケイト・モスザラZARA)のコラボレーションについて語り合う1時間は、友人とファッションショーをするように気楽で楽しいものだ。しかし、彼女は何と言ってもイギリスを代表するスーパーモデル。私たちは今、高級ホテルのフォーシーズンズにいる。

モスの長年のコラボレーターでスタイリストのケイト・フェランがからかうそばで、私たちはサンプルの数々を手に取っていく。モスは今回のコレクションにインスピレーションを与えたアーカイブピースのディテールについて話しながら、合間に試着したり、「みんなもこう着るべき」とアドバイスを挟む。パーティーへと出かけるための準備をしているようだが、今は火曜日の昼3時。あくまでインタビューのための時間だ。しかし、このどこか浮ついた感覚は、2000年代初頭のグラストンベリー・フェスティバルにタイムスリップしたような気にさせる。

「ドレスアップせずにはいられなくって! じっと座って質問に答えるのはあんまり得意じゃないから」と言うモスは、新しいベネチアンスタイルのヒョウ柄パンプスのステッチに感心したかと思えば、レースのブラレットを手に取ったりと忙しない。ちなみにこのブラレットは、インタビュー中に彼女がほぼずっと着ていたものだ。次から次へとアイテムを手に取る彼女は「私って嵐のようにスタイリングしてる。お店で働くべきかも!」と笑うが、「でも私はデザイナーじゃないから」とも釘を刺す。

思い出の詰まったアーカイブで見つけた宝物たち

2005年のグラストンベリー・フェスティバルでモスが着ていたラメドレスを再現したもの。
2005年のグラストンベリー・フェスティバルでモスが着ていたラメドレスを再現したもの。

モスが興奮するのも無理はない。11月30日(土)に発売されるモスらしさが詰まった簡潔なラインナップは、実に素晴らしい出来だ。マート・アラス&マーカス・ピゴットによるキャンペーンイメージと、チリータ・コリンズ、ジョージア・パーマー、エラ・ダルトンといった若手モデルたちを起用したルックブックのクオリティは、手に届きやすい価格帯のアイテムをフィーチャーしたものであるとは思えないほどの仕上がりで、モスのスタイルの“お試し”としてキュレートされたチーター柄のジャケットにパテントトレンチ、ビーズをあしらったミニドレスなどが目を引く。

パーティーは「9時前だと嫌で、9時以降だとすごく行きたくなる」のだとか。
パーティーは「9時前だと嫌で、9時以降だとすごく行きたくなる」のだとか。

モスにアーカイブにインスパイアされたカプセルコレクションをザラに提案するように促したのは、イギリス人スタイリストのケイティ・イングランドだった。二人はある朝にアーカイブで見つけた服たちをザラのメインストリーム向けの商品へと変えていき、そのラインナップに何度も編集を加えていったという。とりわけ、ヴィンテージのチャイナドレスにヴィヴィアン・ウエストウッドVIVIENNE WESTWOOD)のヒールという、彼女が20歳の誕生日に着ていたルックが何十年経った今もそこにあったことに衝撃を受けたモスは、「ちゃんと見ることができなかった。なんだか圧倒されてしまって」と振り返る。そのチャイナドレスは複雑すぎて、今回は再現できなかったそうだ。

「自らピッチしたことなんて、人生でたったの一度もないから」と話すモスは、ローンチを目前に緊張しているとも付け加える。その理由は、ヒョウ柄のフラットシューズやトレンチがそこら中に出回っているからだそうで、トレンドに左右されない自分だけのスタイルを貫く彼女が気になるのも仕方ない。しかし、何十年もの付き合いのなかでモスが同じものを2度着る姿を見たことがないというフェランは、彼女の不安を和らげるためにこんな言葉をかける。「このコレクションには……この言葉は嫌いだけど、“タイムレス”な魅力がある。いつだって着られるし、あなたが18歳だったときだって、こんな服を着ていた気がする。何も変わっていないし、あなたらしさがすごく感じられる」

昔からずっと変わらない、ヴィンテージ愛

今年のクリスマスは家族と田舎で暖炉を囲み、クイズ番組の「ファミリー・フォーチュンズ」を観る予定だそう。
今年のクリスマスは家族と田舎で暖炉を囲み、クイズ番組の「ファミリー・フォーチュンズ」を観る予定だそう。

このコラボレーションはモスにとってマーケティングというよりも、彼女が愛着を持って着古した宝物たちを甦らせる機会でもあった。例えば、1930年代風の深いブルーに染まったベルベットコート。彼女が持っている一着の肘はすっかり擦り切れていて、着るにはもうボロボロすぎる。こうして“本物”のヴィンテージを存続させるのもまた、彼女が大切にしていることだ。

モスは今でもポートベローやカムデンマーケットで掘り出し物を探し回り、オンラインで買い物をすることはない(今朝はアンティーク&ヴィンテージショップの1stDibsで衝動買いをしてしまったそうだが)。「最近のヴィンテージショップは洗練されすぎている上に、値段も高すぎる。10年〜20年ものばかりだし、私にはヴィンテージだと感じられなくて」と彼女は嘆く。「私にとってヴィンテージとは、30年代、40年代、50年代のもの。当時はそれをヴィンテージとは呼ばず、セカンドハンドと呼んでいたけれど」

靴とバッグそれぞれ専用の部屋あるほど膨大なモスのアーカイブに、彼女がこのコレクションから新たに迎え入れようとしているのはマック、それからレオパード柄のジャケットだという。しかし、スーツもお気に入りのようで、彼女はまたしても「ゴージャス!」だと感嘆する。デザイナーではないとモスは主張しているが、彼女は私たちのワードローブを真剣にデザインしてくれた。セレブリティとのコラボレーションは登場しては過ぎ去ってゆくものだが、今回のコラボレーションには本当に価値のあるものが揃っている。

「パーティーカプセル」コレクション

発売日/2024年11月30日(土)

アイテム/全40型

https://www.zara.com/jp/

Text: Alice Newbold Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.CO.UK

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