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「でも私、可愛いし」中学時代、見た目への異常な執着に苛まれた理由

  • 2024.11.26

私は私が可愛く無くなることが怖かった。「可愛い」は私のアイデンティティであり、存在意義の全てだと思っていたから。

◎ ◎

何か劣等感に苛まれた時、虐められた時、心の奥底でいつも自分を守るために便利に使われていたのが、「でも私、可愛いし」という言い訳。

いくら批判されて、周りから価値を否定されても、自分を自分で評価してあげるための秘密の逃げ道。奥底に眠っている自己愛は醜くて、他人には絶対に気取られたくないけど、何か一つでも自分は負けていないと思わないと、あの頃は自分が保てなかった。

◎ ◎

保育園、小学校、中学生の半ばまで。ピンクやリボンが好きで女の子らしいキャラだった私は、可愛い可愛いと特に女の子達からチヤホヤされてきた。私は特別で、可愛くて、周りからも大切にされる。それが当たり前で、劣等感なんて感じたこともなかった。あの頃は捻くれた所もなく、満ち足りていて毎日が幸せだったと思う。

中学生半ばから、徐々に周りの評価基準が変わっていったように感じられた。例えば男子のモテる基準が「かけっこが早い」から「面白い人」に移り変っていくような。
女子も自然と、ただ「可愛くて女の子らしい子」から「ノリが良くて面白くて可愛い子」といったように変化していくのを感じた。

◎ ◎

これまで当たり前にチヤホヤされてきたのに、気づいたら地味なクラスのメンバーになっていく事に戸惑いを覚え始めた。私は話が上手じゃないし、面白いことも言えないし、ノリがいい訳でもない。

下ネタとかノリツッコミとか、それって全然女の子っぽくないし、「可愛い」自分が壊れると思って避けて生きてきた。なのに急に、それが正しいと言われるなんて。

次第にノリが悪い、地味だ、とクラスで浮くようになりいじめが始まってしまった。

私は何も変わっていないのに、周りの評価が180度変化してしまった。だけどこれまで積み上げられてきた自己愛は簡単には変えられない。悲しみや苦しみと同時に、強い自己愛から来る苛立ちと反発心が私を支配した。

◎ ◎

私が何をした?
私の性格が悪かった?
こんなに虐められるほど、私は周りよりも何が劣っている?

何が悪いの。どうしてこんな目に。

私は性格が悪くてノリが悪くて、きっと人として劣っているんだ。ここまで虐められるなんて、自分はダメで愛されない人間なんだ。

だけど、これだけは自信を持って言える。
私の方が絶対に可愛い!
私をいじめる女の子達なんて全然可愛くない!

そうやって何か言い訳をして自分を守らないと、生きていけなかった。

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あの頃から異常に自分の見た目に執着して、自分が可愛くあることに必死だった。だってこれがないと、他に自分には何も無い。これしかないから。

そんな異常な精神状態に追いやられ、今振り返ってみると、あの頃の私は自己愛性パーソナリティ障害だったのではないかと思う。
私は私が可愛くなくなることを異常に恐れていた。

◎ ◎

あれからの私は、虐めてきた子達を見返そうと、「可愛い」以外の価値を高めて自分を好きになれるように、必死に勉強していい大学に入り、色んな活動に参加していい会社に入った。

「もうあんな惨めな思いはしたくない」そんな焦りと不安に突き動かされるまま自分磨きに精を出したあの頃。

今は彼氏もいて、仕事でも認められ、友達もでき、少しずつ「可愛い」以外の自分を認められるようになってきた。20代中半に差し掛かり年々歳をとる度に、まだ自分の可愛さが衰えることに不安を覚えるけれど、昔ほどの恐怖はない。

◎ ◎

だって自分には「可愛い」以外にも自分で自分を愛してあげられる部分が沢山できたから。あの頃必死になって自分磨きをした日々は苦しかったけれど、決して無駄ではなかった。これからはもっと、ありのままの自分を好きになっていこうと思う。

■honokaのプロフィール
本と文章を書くことが好き。大学で日本語学・文学を学び、広告会社で制作・ライターをしています。

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