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山で遭遇した目も耳も無い巨大な猿。車で逃げるも3時間後に追いつかれーー/右園死児報告④

  • 2024.11.25

『右園死児報告』(真島文吉/KADOKAWA)第4回【全5回】『うぞのしにこ』と読む。この文字列を、人間、動物、無機物、現象などの名前に採用すると、壊滅的な被害が出る。「右園死児に至る集団報告」は明治二五年から続く政府、軍、捜査機関、探偵、一般人による非公式調査報告体系。右園死児という名の人物あるいは動物、無機物が、規格外の現象の発端となることから、その原理の解明と対策を目的に発足した。X(Twitter)発の人気ホラー小説『右園死児報告』をお楽しみください。

報告一〇号

報告案件 彗星 報告者 国立天文台

新彗星(しんすいせい)を発見した会社員が星に右園死児(うぞのしにこ)と名づけ、騒動になった。国立天文台の通報を受け軍部が即日会社員を確保、思想洗浄したが、事情を知らない国際天文学連合が命名を承認、海外ニュースに右園死児の名が踊る最悪の事態に発展した。

彗星は命名後、五二時間で観測不能になった。実害が確認できなかったため政府は海外勢力を説得できず、右園死児彗星の名は永久に天文学の歴史に残る結果となった。宇宙をさまよう彗星のその後は杳(よう)として知れない。

彗星命名者の会社員、彗星名を直接口に出して伝えた海外メディア関係者は、現時点で全員死亡している。

報告一一号

報告案件 猿(二例目) 報告者 日真柴優作(ひましばゆうさく)

他者の所有する山林に侵入して猟を行っていた男が、自身の仕掛けた猟具を拾い集めている猿と遭遇。身の丈三メートルほどで、目も耳も無かった。猿は男を追跡し、銃撃されても逃げず倒れなかった。男は山林入り口に停めていた乗用車まで逃走。エンジンをかけ、発車、一〇キロ先の市街地の友人宅に逃げ込んだが、約三時間後に猿に追いつかれた。

玄関前に仕掛けられたトラバサミに足を取られた男は、そのまま猿に連れ去られた。友人が警察に通報し山林の捜索が行われたが、男が発見されることはなかった。

山林の所有者が後に右園死児(うぞのしにこ)案件に関与したため、本件の猿も同様の現象物として整理されている。猿の姿形情報や山林侵入の顛末(てんまつ)は、被害者の所持していた記録媒体やドライブレコーダー、友人への告白などにより形成されている。

報告一二号

報告案件 右園宮 報告者 神谷修二(探偵)

報告三号『油絵』に描かれていた山野を、探偵が記憶だけを頼りに八年がかりで特定し た。場所は■■■■■■■■■。私有地だが土地所有者は永く海外住み。犯罪者が小屋を建て不法占有していたが、全員が原因不明の病に冒され床を這いずっていた。

探偵の通報により救助隊が駆けつけ対応。さらに犯罪者達の告白により、小屋の床下か ら多数の出土品が回収された。山野全体から掘り出されたもので、いずれも平安時代の物品と推定される。和鏡が多く、神仏や赤子が裏面に彫り込まれていた。

『う俗のみや』。いくつかの品にこの単語を含む彫り文字があり、有識者がかつての山野の名称か、その持ち主の名であるとした。右園死児(うぞのしにこ)との関連は不明だが、油絵の続報としてこの件は整理された。

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