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友達のつくりかた/【吉澤嘉代子 エッセー連載】ルシファーの手紙#10

  • 2024.11.25

友達って何だろう。対等な関係、損得のない関係、心を許しあう関係。私には気の置けない仲間という言葉がいつもしっくりこない。どんなに親しくなった仲にも微かな緊張はただよう。一緒にいて退屈をしていないだろうか。さきほどの言葉は適切だったのだろうか。今日の私、大丈夫だったかな……。別れた後に薄ら寒い反省が脳裏を掠めるのだ。

大切な友達を失ってしまったことがある。毎朝目覚めて、ふと彼女がいない世界で生きていることを思い出すときの絶望。どれだけ愛しても憎んでももういない。一生会えない。その空白は明るい場所へ行くたびに反動となって暴れ出す。

「よく忘れられてることだがね。〈仲よくなる〉っていうことさ」 「仲よくなる?」 「うん、そうだとも。おれの目から見ると、あんたは、まだ、いまじゃ、ほかの十万もの男の子と、べつに変わりない男の子なのさ。だから、おれは、あんたがいなくたっていいんだ。あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。あんたの目から見ると、おれは、十万ものキツネとおんなじなんだ。だけど、あんたが、おれを飼いならすと、おれたちは、もう、おたがいに、はなれちゃいられなくなるよ。あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ……」と、キツネがいいました。 『星の王子さま』(サン・テグジュペリ:著、内藤濯:訳/岩波書店)ダ・ヴィンチWeb

人生のバイブル『星の王子さま』に友達とは何かが書かれている。十万もの命と大差なかった存在が、いつの間にかこの世でたった一人かけがえのない友達になるということ。誓いや縛りもなく、義務や報酬もなく、ただただお互いが何らかの部分を気に入ってそばにいる。 その代わり、環境や生活が変わればずっと一緒にはいられない。いつでも自然と離れてしまえる。

「じゃ、さよなら」と、王子さまはいいました。 「さよなら」と、キツネがいいました。「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」 「かんじんなことは、目には見えない」と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。 『星の王子さま』(サン・テグジュペリ:著、内藤濯:訳/岩波書店)ダ・ヴィンチWeb

私の元には彼女から貰った星の王子さまのキツネのぬいぐるみだけが残った。つぶらな瞳は小説に滲むメッセージとともに「友達とは何か」を問い続ける。

いま私は一つの確信に辿りついた。友達に形はない。だからこそ、その関係は永遠だということ。何気ないさようならが生涯の別れになったとしても、もう会えない場所に行ってしまったとしても、私たちが友達であることに変わりはないのだ。

胸のつかえは相手を大切にするためのスウィッチ。相手がいつも他者であることを確認するためのセーフティ。どれだけ傷ついても、また傷つけてしまったとしても、友達に出会うこと、それは人生で一番尊いことと思う。

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