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子どものスマホ依存が心配。予防と対策に有効な声かけのコツについて精神科医飯島先生にお伺いしました。

  • 2024.11.25


子どものスマホ依存を予防する方法と対策の一つ、声かけの具体的な方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。

効果的な声かけ方~実例から学ぶコミュニケーションのコツ~

「先生、怒ってばかりで・・・」
「注意すると、逆に反抗的になって・・・」
外来でよく耳にする保護者の方々のお悩みです。先日も、中学2年生の男の子のお母さんが、「どう言葉をかけたらいいのか、もう分からなくなってきました」と話されていました。
確かに、子どもにスマホの使い方について注意することは、とても難しいものです。でも、ちょっとした言葉の選び方で、子どもの反応は大きく変わってきます。実際の診療現場で効果があった声かけを、具体的な場面ごとにご紹介していきましょう。

■スマホを見続けている場面で
【避けたい声かけ】
「また、スマホばっかり!」
「いい加減にしなさい!」
「依存症になるわよ!」
こういった言葉は、子どもの心の扉を閉ざしてしまいがちです。では、どう声をかければいいのでしょうか?
【効果的な声かけ】
「その動画、面白そうだね。どんな内容なの?」→ まずは子どもの興味に関心を示す
「あと10分したら、一緒に〇〇しない?」→ 具体的な時間と代替案を提示
「ずっと座ってると体が凝るよ。少し体動かさない?」→ 健康面を気遣う形で提案

■ルールを決めるとき
【避けたい声かけ】
「今日から1時間以内!絶対守りなさい!」
「守れないなら取り上げる!」
「他の子はちゃんとできているのに」
【効果的な声かけ】
「どのくらいなら守れそう?一緒に考えてみよう」→ 子どもと一緒にルールを作る
「まずは夕食の時間だけ、チャレンジしてみない?」→ 小さな目標から始める
「昨日より30分減らせたね。すごいじゃない」→ 小さな進歩を認める

■困った行動が続くとき
【避けたい声かけ】
「あなたの将来が心配」
「こんなんじゃダメな子になる」
「もう知らない!」
【効果的な声かけ】
「何か困っていることある?話してくれると嬉しいな」→ 背景にある悩みに目を向ける
「一緒に良い使い方を考えていこうね」→ 寄り添う姿勢を示す
「スマホの時間が減ったら、〇〇に行こうか」→ 具体的な動機づけを提案

大切なのは、その場の感情で言葉を投げかけるのではなく、一呼吸置いて、建設的な声かけを心がけることです。
しかし、こういった工夫を重ねても、なかなか改善が見られないケースもあります。そんなとき、どんなサインに注目して、専門家に相談すべきなのでしょうか?次のセクションでは、その判断のポイントについてお話ししていきます。

専門家に相談したほうがいいかも?~見逃せない4つのサイン~

ママ広場


先日、こんなケースがありました。
中学1年生の女の子のお母さんが「もっと早く来院すればよかった」とため息をつかれました。夜中までSNSを見続け、朝起きられない、学校に行けない・・・その状態が2ヶ月も続いていたそうです。
でも、いつ専門家に相談すればいいのか、判断に迷われる方も多いと思います。私の臨床経験から、特に注意が必要なサインをお伝えします。

【ケース1】:睡眠の乱れが続くとき
〇夜中の2時、3時まで起きている
〇朝なかなか起きられない
〇昼夜逆転の生活が続く
〇「あと5分」が2時間に・・・
ある高校生は「寝ようと思っても、スマホを置けない。でも朝はつらくて・・・」と話していました。このように睡眠の乱れが2週間以上続くようであれば、要注意です。

【ケース2】:学校や日常生活への影響が出始めたとき
〇テストの点数が急に下がった
〇宿題を全くしなくなった
〇部活を休みがち
〇家族との約束を守れない
「成績が下がったのは、たまたまかも・・・」と様子を見ていると、事態が深刻化することもあります。変化に気づいたら、早めの相談をお勧めします。

【ケース3】:こんな行動が見られるとき
〇スマホを取り上げると激しく怒る
〇「あと少し」が守れない
〇食事中もスマホが手放せない
〇隠れて深夜に使用
〇「目が疲れる」「頭が痛い」と訴えるのに、スマホは止められない
「ちょっと使いすぎかな」から「やめたくてもやめられない」状態に変化していく・・・。これは依存の重要なサインかもしれません。

【ケース4】:心の変化が気になるとき
〇些細なことでイライラ
〇投げやりな態度が目立つ
〇表情が乏しくなった
〇家族との会話を避ける
〇趣味や運動をしなくなった
〇「どうせ・・・」という言葉が増えた
このような変化は、うつ状態のサインかもしれません。スマホ依存とメンタルヘルスの問題は、密接に関連していることがわかっています。

■相談する前に準備しておくと良いこと
*いつ頃から変化が出てきたか
*1日のスマホ使用時間
*睡眠時間の変化
*学校での様子
*ご家庭での対策とその結果
これらをメモしておくと、より具体的なアドバイスを受けることができます。
大切なのは、「様子を見よう」と長引かせすぎないこと。特に上記のサインが複数重なる場合は、できるだけ早めに相談することをお勧めします。治療や支援は、早ければ早いほど効果が出やすいです。
最後に、これまでお話ししてきた内容を踏まえて、今日から始められる具体的な対策についてまとめてみましょう。

最後に~明日からできる、具体的な一歩~

外来で出会う多くの親子さんを見ていると、実感することがあります。スマホとの付き合い方は、一朝一夕には変えられない。でも、小さな一歩を積み重ねることで、必ず変化は生まれるということです。
先日、半年前に来院された中学2年生の男の子のお母さんから、うれしい報告がありました。
「最初は無理かもと思いました。でも、少しずつ変わってきて・・・今では自分から『宿題終わらせてからにする』って言えるようになったんです」
確かに、スマホは現代の子どもたちにとって、もはや切り離せないものかもしれません。その影響の大きさは、これまでお話ししてきた研究結果からも明らかです。子どもの脳への影響、睡眠への影響、学業への影響・・・。どれも決して軽視できない問題です。
でも、だからこそ、以下のような具体的な一歩を、今日から始めてみませんか?

■今日からできること
*お子さんの好きな動画やゲームに、まずは興味を持ってみる
*食事の時間だけは、家族全員でスマホを離れてみる
*寝室には充電器を置かない
*休日の午後、30分だけ一緒に外出してみる
■今週から始めること
*お子さんと一緒にルールを考える時間を作る
*図書館や公園など、新しい居場所を探してみる
*家族で「スマホ休憩タイム」を決める
■ 今月の目標にすること
*ご家族なりの「適度な使用時間」を見つける
*スマホ以外の楽しみを、少しずつ増やしていく
*困ったときは、一人で抱え込まず相談する

私が出会ってきた多くの親子さんも、最初は不安を抱えていました。でも、諦めずに少しずつ取り組んでこられた方々は、必ず変化を実感されています。
子どもたちの成長にとって、今が大切な時期だからこそ、スマホとの上手な付き合い方を、一緒に見つけていきたいですね。
そして最後に、繰り返しになりますが、一人で悩みすぎないでください。困ったときは、ぜひ専門家に相談することをお勧めします。お子さんの健やかな成長のために、私たち専門家も全力でサポートさせていただきます。

参考文献
[1] 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書. 総務省情報通信政策研究所.
[2] Bhatia, R. (2023). Current Opinion in Psychiatry.
[3] Sohn, S. Y., et al. (2019). BMC Psychiatry.
[4]Chun, J. W., et al. (2018). Frontiers in Psychiatry.
[5] Portugal, A. M., et al. (2021). Scientific Reports.
[6] Horowitz-Kraus, T., & Hutton, J. S. (2018). Acta Paediatrica.
[7] Mendez, I., et al. (2024). Neuroscience & Biobehavioral Reviews.
[8] Li, W., et al. (2024). Advanced Science.
[9] Wu, X., et al. (2023). Early Education and Development.
[10] Hong, W., et al. (2021). Journal of Korean Medical Science.
[11] Noh, G. Y., & Shim, M. S. (2024). Dental Science Reports.
[12] Fischer-Grote, L., et al. (2019). Neuropsychiatrie.
[13] Cha, S. E., et al. (2023). PLOS ONE.
[14] Martínez-Pastor, E., et al. (2019). Mediterranean Journal of Communication.
[15] Oh, J. H., et al. (2022). Information, Communication & Society.
[16] Parlak, S., et al. (2023). Medical Science and Discovery.
[17] Rękas, K., & Burzyńska, J. (2024). medRxiv.

[執筆者]

ママ広場


飯島慶郎先生
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。

島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

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