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あの伝説的瞬間を再び。ロンドンで開催中の没入型のエキシビション「Vogue_ Inventing the Runway」で再現されたランウェイショー5選

  • 2024.11.25

1. アレキサンダー・マックイーン 1999年春夏コレクション

アレキサンダー・マックイーン 1999年春夏コレクションより。
1461066357アレキサンダー・マックイーン 1999年春夏コレクションより。
アレキサンダー・マックイーン 1999年春夏コレクションより。
1461066364アレキサンダー・マックイーン 1999年春夏コレクションより。

ヴィクトリア駅近くの使われなくなったバスターミナル、ガトリフ・ウェアハウスで披露されたアレキサンダー・マックイーンALEXANDER McQUEEN)の「No. 13」は、ウィリアム・モリスが主導したアーツ&クラフツ運動から第一次世界大戦中にクイーン・メアリー病院で開発された義肢まで、あらゆるものからインスピレーションを得たショーだった。オープニングを飾ったのは、パラリンピック選手エイミー・マリンズ。17世紀の彫刻家グリンリング・ギボンズの彫刻を彷彿とさせる木製の義足を履いた彼女によるウォーキングはもちろん、真っ白なドレスを纏ったシャローム・ハーロウに向かって自動車製造工場から持ち込まれた2体のロボットがブラックとグリーンのスプレーペイントを吹きかけるというフィナーレは、今もなおエディターたちの記憶に深く刻まれている。

マックイーンは後に、このパフォーマンスはドイツの現代美術家レベッカ・ホルンによる1991年の作品『High Moon』に着想を得たものだと明かしている。また、『ArtReview』誌のインタビューによると、ロボットのプログラミングには丸1週間かかった一方、ハーロウには一切のディレクションをしなかったそうだ。ハーロウもまた、メトロポリタン美術館で開かれたマックイーンの回顧展「Savage Beauty」のオープニングを前に、こんなふうに回想していた。「アレキサンダーと私は、この作品や、このショーのなかでこの瞬間を創り出すことについて直接会話はしませんでした。彼はできるだけ干渉することなく、私ができるだけ純粋で自然な形で体験できるように演出したかったのだと思います」

2. フセイン・チャラヤン 2000-01年秋冬コレクション

フセイン・チャラヤン 2000-01年秋冬コレクションより。
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「私の家族は、故郷を追われたのです」。本展のなかでトルコ系キプロス人のデザイナー、フセイン・チャラヤン(HUSSEIN CHALAYAN)は自身の家族にまつわるエピソードをこう話している。「彼らは家を出なければならなかった。だから私は、 自分の持ち物をどうやって守るか、旅立つときにどうやって持ち運びたいかということを考えるようになりました」

2000-01年秋冬コレクションは、ロンドンのイズリントンにあるサドラーズ・ウェルズ劇場でのプレゼンテーションという形をとった。ステージはリビングルームのようにアレンジされ、その周りをシフトドレス、フリルスカートトレンチコートを着たモデルたちが歩き回り、フィナーレには家具も登場した。US版『VOGUE』のプラム・スカイズは、当時のレビューに「チャラヤンのフィナーレには目を見張るものがあった」と綴っている。

フセイン・チャラヤン 2000-01年秋冬コレクションより。
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フセイン・チャラヤン 2000-01年秋冬コレクションより。
830336220フセイン・チャラヤン 2000-01年秋冬コレクションより。

「シックなグレーのシフトドレスに身を包んだ4人のモデルが椅子のセットに近づくと、そのカバーを外し、それを身につける。椅子のカバーは、彼女たちが着ていたドレスを“完成”させるようデザインされていた。一方、最後のモデルがテーブルの中央部に入って持ち上げると、それは木製のスカートへと変身した(ファッション関係者なら、チャラヤンの卒業ショーでも木製のスカートがあったことを覚えているだろう)。最後に、椅子はスーツケースに折りたたまれ、ステージの外へ。テレビの画面は消え、私たちは誰もいない部屋を眺めることになった。それはまさに魔法のようなひとときだった」

3. トム フォード 2011年春夏コレクション

トム フォードTOM FORD)はウィメンズコレクションを初めて発表して以来、即物的で画一的だった当時のファッションショーの在り方に反旗を翻してきた。マディソン・アベニューの店舗で披露された2011年春夏コレクションのコンセプトはユーロスターに乗っていたときに思いついたもので、モデルを起用するのではなく、マリサ・ベレンソン、ビヨンセステラ・テナントなど32人の“アイコン”をフィーチャー。一切の写真撮影を禁止した。デザイナーはこのショーについて「さまざまな年齢に体型、キャラクター、そして個性をショーに取り込みたかった」と『WWD』のインタビューで語っている。「あの服たちは、彼女たちのためにデザインしたものです。彼女たちのサイズを測り、彼女たちのことを考え、彼女たちが何を着るかを考えました」

このとき、アルバム『4』のレコーディング前で活動休止中だったビヨンセは、シルバーのジャカードドレスを纏い100人以上のエディターたちの前に登場した。後に「ニューヨーク・タイムズ」紙がショーへの出演を考え直したかどうか尋ねたところ、彼女は迷いなくこう答えている。「まさか! こんなに素晴らしい服を着られるんですから」

4. シャネル 2017-18年秋冬コレクション

シャネル 2017-18年秋冬コレクションより。
649317374シャネル 2017-18年秋冬コレクションより。

カール・ラガーフェルドシャネルCHANEL)のコレクションを発表する際、グラン・パレのなかにひとつの世界を作り上げるのがお決まりだった。例えば、2014-15年秋冬のマルシェ。棚にジャンボンにツナ缶、そしてケチャップなどを並べた演出を覚えている人は多いだろう。本エキシビションで『VOGUE』が注目したのは、2017-18年秋冬の「No.5 Launch Pad」。エルトン・ジョンの「ロケットマン」が流れるなか、高さ35メートルのロケットがグラン・パレの天井に向かって「発射」されたショーだ。

NASAが「TRAPPIST-1b」のまわりに3つの惑星を発見したと発表したわずか数週間後に行われたショーについて、「これは数カ月前に思いついたことなのですが、突然みんながやるようになったのです」とラガーフェルドは語っていた。コレクションにはエマージェンシーブランケットや宇宙服の襟、ソーラーツイードやロケットの機体を想起させるミノディエールなどが登場。ラガーフェルドは後に、ショーまでの数カ月間、国際宇宙ステーションから定期的に発信していたフランス人宇宙飛行士トマ・ペスケからインスピレーションを得たと明かしている。

5. バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクション

バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクションより。
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バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクションより。
Balenciaga, Autumn/Winter 2020バレンシアガ 2020-21年秋冬コレクションより。

バレンシアガBALENCIAGA)2020-21年秋冬コレクションの舞台となったのは、サン・ドニにある映画撮影スタジオ「シテ・デュ・シネマ」。ランウェイにしかれた水はフロントローにも流れ込み、ユニフォームシャツや5本指のシューズ、ネオゴシック調のパワースーツやウェリントンブーツをスタイリングしたモデルたちが歩くたび、エディターたちに水しぶきがかかった。一方、LEDスクリーンが設置された天井には気候危機を暗示する映像が渦巻くように映し出され、不穏な空気を演出した。

このショーに出席したUK版『VOGUE』のサラ・ハリスは、後のレビューで「席にたどり着くまでの道のりは非常に危険だった」と振り返っている。「真っ暗な会場には階段があり、ランウェイとして認識できたのは広大な水のプール。その暗闇の世界には恐怖心さえ呼び起こす漆黒の色合いが帯びていた……。不快な音楽が響き渡り、明かりがつくと、雲のグラフィックが頭上を素早く移動する。そのデジタル気象システムは、流れる雲からムクドリの群れ、そして世界の終末を思わせるような嵐から燃えるような夕日へと変化していった」

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