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栄養士が解説!意外と簡単&気軽にできるプラントベースの初心者ガイド

  • 2024.12.2

「野菜以外には何が食べられる?」「必要な栄養素をカバーできるの?」そんな疑問にもお答え!

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Maryna Terletska

フードトレンドの移り変わりは激しいが、「プラントベース」の食品は、食事の選択肢のひとつとして定着しつつあるよう。

プラントベースフードは多くの関心を集めており、市場も拡大中。年平均11.9パーセントの成長率で、2027年までに742億ドル(約11兆4800億円)に達すると予想されている。また、代替肉の大手メーカー「ビヨンド・ミート」や、アメリカでも商品展開を行う英国のヴィーガン・デリミート会社「プラントクラフト」は、あらゆるタイプの代替肉を製造しており、多くの支持を得ているそう。

「プラントベースの食事とは、ビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質、ヘルシーな脂質などを豊富に含む植物性食品を中心に食べることです」と話すのは、人気レシピサイト「Hummusapien」の登録栄養士、アレクシス・ジョセフさん。とはいえ植物性のものしか食べてはいけないわけではなく、ときには肉や魚を口にしたり、チーズをふんだんに使ったピザを楽しむこともOK。

ここでは、改めてプラントベースの食事とはどんなものなのか、ヴィーガンとの違いや上手な取り入れ方について栄養士が解説。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ai Ono From Women's Health US

プラントベースの食事とは?

Oksana Nazarchuk M

ジョセフさんによると、プラントベースの食事とは、植物性食品、特に加工度の低い野菜や果物、全粒穀物、豆類、ナッツ類、シード類を優先的にとることだそう。

とはいえ、実践している食事法によってメニューはさまざま。例えば「地中海式食事法」なら、豆類やナッツ類、ヘルシーな脂質、果物、野菜などを優先するため、プラントベースの食事を実践しやすい。いっぽうで、「ケトジェニックダイエット」では炭水化物を多く含む全粒穀物やでんぷん質の野菜、果物などを避けるため、調整がやや難しくなってしまう。

ヴィーガンとは違う?

Sergei Chuyko

動物性食品を完全に断つ「ヴィーガン」はプラントベースの食事の一種。けれども、プラントベースの場合は必ずしも植物性食品だけを食べるというわけではない。また、一見ヴィーガンメニューのように見える卵不使用のブラウニーも、加工食品が多く含まれる場合は、本当の意味でのプラントベースにはならないかもしれない。

「私は自身をプラントベースだと考えていますが、それは食事のほとんどが植物性だからです。それでも、ヨーグルトやチーズ、卵、魚を食べたくなったら食べますし、それでいいんです!」とジョセフさんは語る。

「プラントベースはあくまで植物性食品を中心にすることを奨励する食事法であり、何かを禁止したり制限したりすることではありません」と、コーネル大学の栄養心理学教授、デヴィッド・レヴィツキーさんも補足。

何を食べることができる?

Sam Barnes

動物性タンパク質の代わりに植物性の豆類や大豆製品(枝豆や豆腐、おから、きなこ、納豆やテンペなど)を摂取したり、ナッツやシード類、ナッツバターからヘルシーな脂質やタンパク質をとったりと、選択肢も幅広い。全粒穀物からも、一食あたり数グラムのタンパク質を得ることができる。

「しっかりと食事の計画を立てれば、プラントベースの食事でも必要な栄養素をすべてとることができます」と、栄養に関するサービスを提供する「Precision Nutrition」で栄養コーチを務める、登録栄養士のライアン・マシエルさんも説明する。

どんな食材を選べばいい?

StephanieFrey

それでは、プラントベースの食事を実践するうえで、何を選べばいいのだろう? 特におすすめの食材と、それぞれのおおよそのタンパク質量をご紹介:

豆腐:3オンス(約85グラム)あたり8グラム

テンペ:1カップあたり33グラム

枝豆:1カップあたり18グラム

ピー(豆)プロテインパウダー:専用スプーン1杯あたり15グラム ※朝のスムージーや運動後の飲料に加えると◎

レンズ豆(調理済み):調理済み1カップあたり18グラム

ヒヨコ豆:1カップあたり15グラム

ピーナッツ:1オンス(約28グラム)あたり7グラム

ホールアーモンド:1カップあたり30グラム(&適量の不飽和脂肪酸)

スピルリナ:小さじ1杯あたり1グラム

キヌア(調理済み):1カップあたり8グラム

チアシード:大さじ約2.5杯~3杯あたり5グラム

セイタン:3オンス(約85グラム)あたり16グラム ※ただし少し加工度が高く、グルテンフリーではない

エゼキエルブレッド(発芽させた穀物から作られるパン):1切れあたり5グラム

まずは主要なタンパク質を決め、そこからほかの必要な栄養素を得るために、できるだけ多様な野菜や果物をプラスするのがおすすめ。「濃い葉物野菜は鉄分とカルシウムが、きのこ類はビタミンDが豊富です」と、マシエルさん。

制限または避けるべき食品は?

Claudia Totir

「ヴィーガンの場合は、肉や魚、乳製品、卵製品はすべてNG。加工食品によく使われるホエイやカゼイン(牛乳由来)、ゼラチン(動物性)なども控える必要があります」と、マシエルさん。

けれどもより柔軟な選択をしていくのであれば、「禁止」の食品は特にない。動物性食品をどのくらい食べるかはその人次第だが、NYの登録栄養士であるキム・ロスさんは「賢く選びましょう」と助言。

さらに、「最も健康的にプラントベースを実現するには、加工肉やプロセスチーズ、ホットドッグなど、加工された動物性食品を制限したり避けたりすることです」と、説明する。

また、プラントベースの食事は素材をまるごと食べる“ホールフード”を重視しており、たとえヴィーガンフードであっても、加工度の高いものはできるだけ控えるか避けたいところ。ヒヨコ豆やレンズ豆からタンパク質を摂取し、加工されたヴィーガンバーガーや、市販のヴィーガンアイスクリームやクッキーは特別なときに食べよう。

メリットは?

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Estradaanton

「プラントベースは“ホールフード”を重視しているため、ビタミンやミネラル、抗酸化物質、食物繊維などもしっかりとることができます」と説明するのは、登録栄養士のエイミー・ゴリンさん。

ジョセフさんも、「植物性食品には、免疫力をサポートし炎症と闘い、腸内の健康なバクテリアのエサとなる食物繊維や植物性栄養素が豊富に含まれています」と語っている。

さらに、「動物性よりも植物性タンパク質を含む食品を定期的に摂取することは、糖尿病や心臓病など、多くの慢性疾患の予防や回復に役立ちます」と補足。植物性食品に含まれる栄養素は、健康的なコレステロールや血圧、血糖値をサポートするため、プラントベースの食事は心臓病や糖尿病、がんのリスクなどを下げることにつながるのだそう。

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『米国科学アカデミー紀要』に掲載された研究では、プラントベースの食事に移行すると、2050年の参照シナリオと比較した場合に、世界の死亡率を6~10パーセント減らせる可能性や、食品関連の温室効果ガス排出量を29~70パーセント削減できる可能性が示唆されている。

さらに、2013年に行われた研究では、特に高血圧や糖尿病、心血管疾患、肥満を抱える人を含むすべての患者を対象に、プラントベースの食事をすすめることを医師に提案している。

また、減量をサポートするためにプラントベースの食事を取り入れる人もいる。過体重の参加者を、プラントベースのヴィーガンフードをとるグループと、そうでないグループに分けて16週間にわたる研究を行ったところ、ヴィーガン食をとっていたグループのほうが、体重、体脂肪、インスリン抵抗性マーカーの改善が優位だったことが証明され、糖尿病の予防や体重減少に効果があることが示された。

レヴィツキーさんによると、植物性食品は食物繊維が豊富で、カロリーが高い飽和脂肪酸が少ないが、それでも摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、体重の増加につながってしまうとのこと。

十分な栄養をとることはできる?

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Magda Tymczyj

プラントベースへのよくある批判のひとつに、十分な栄養素、特にタンパク質、鉄分やオメガ3系脂肪酸を摂取しにくいのではないかというものがある。

しかし実際には、植物性食品を幅広く組み合わせることで、必要な栄養素を確実に摂取することは可能。「さまざまな植物性食品をとっていれば、不足することはほとんどありません」とレヴィツキーさんは述べる。

タンパク質の摂取源は?

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Aamulya

「タンパク質は肉や魚にだけに含まれているわけではありません」と、ジョセフさん。

「植物性食品には、1つ以上の必須アミノ酸が不足する“不完全タンパク質”も含まれますが、(いっぽう動物性食品のほとんどは、9種の必須アミノ酸をすべて含む完全タンパク質)、さまざまな食品を摂取することで、健康的な身体機能をサポートするために必要な、すべてのアミノ酸を摂取することができます」と、ゴリンさんは助言する。

粉チーズの代わりにニュートリショナルイースト(栄養酵母)をパスタに加えたり、白インゲン豆やヒヨコ豆をスムージーに混ぜたり、間食にナッツやナッツバターを取り入れたりすることで、プラントベースの食事にタンパク質を加えることが可能。

できれば、加工肉の代替品に頼るのではなく、ホールフードで摂取していくことに意識を向けたいもの。

鉄分やオメガ3系脂肪酸の摂取は可能?

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Yulia Reznikov

プラントベースの食事へとシフトしたときに、鉄分の不足も気になるかもしれない。「動物性食品に含まれるヘム鉄は、ほうれん草などに含まれる植物性の鉄(非ヘム鉄)よりも体に吸収されやすいのです」と、ゴリンさん。

けれども、ホウレン草のサラダにレモンを絞るなど、ビタミンCを含む食品と組み合わせることで、非ヘム鉄をより吸収しやすくなるとのこと。

また一般的に、オメガ3系脂肪酸は脂質の多い魚から摂取できるため、プラントベースの食事では取り入れるのが難しいと感じるかもしれない。

しかし前述のとおり、プラントベースの食事でも魚を食べることは可能。FDA推奨ガイドラインによると、体に必要なオメガ3系脂肪酸を取り入れるには、一日2000キロカロリーを摂取する人で、週に8オンス(約227グラム)の魚介類を食べる必要があるそう。

ほかにも、クルミやフラックスシード、チアシード、藻類などにもオメガ3系脂肪酸は含まれる。科学ジャーナル『Journal of the Academy of Nutrition & Dietetics』に掲載された研究によると、平均的にヴィーガンの人はオメガ3脂肪酸の推奨摂取量を上回っているという。

これらの食品を毎日の食事に取り入れるのが難しい場合は、サプリメントで補うという方法も。オメガ3系脂肪酸は脳の健康に欠かせないため、できる限り必要量の摂取を心がけたい。

デメリットは?

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プラントベースの食事は、ほとんどの人にとって安全で健康的な選択だが、食生活を大きく変える前にまずは医師か登録栄養士に相談を。

「摂食障害や摂食障害の既往歴がある人は、特定の食品を控えるような食事療法を行うべきではありません」と、ジョセフさん。「(プラントベースの食事本来の効果を見出せずに)極端な食事制限につながってしまう可能性もあります」

まずはプラントベースのレシピを試してみつつ、厳しいルールや制限は設けないことが大切だそう。

おすすめの始め方は?

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食生活を変えるのは簡単ではないかもしれないので、できることから始めてみよう。

【1】少しずつ始めてみる
「一日で食生活のすべてを変えるのは無理がありますし、続けることが難しくなります」「極端に始めるのではなく、週に2回から少しずつスタートしてみましょう」

例えばマヨネーズをフムスに変えたり、卵の代わりにフラックスシードを使った代替卵(フラックスエッグ)で調理してみたり、小さな一歩が大切になる。

【2】できることからトライ
忘れてはいけないのが、プラントベースの食事は動物性食品を口にしてもいいということ。動物性の食品を避けることに集中するのではなく、「どうすれば食生活を充実させることができるかを考えましょう」と、ジョセフさんはアドバイスを送る。

研究によると、フレキシビリティ(柔軟性)のある“フレキシタリアンダイエット”(動物性食品を減らすが、禁止にはしない食生活)を続けることで、心臓病や糖尿病のリスクが減るなどの健康効果が得られることが示唆されているそう。

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【3】ミートレス・マンデーに挑戦
どう始めればいいか分からない人は、月曜日のみ肉を食べない「ミートレス・マンデー」に挑戦してみるのもおすすめ。週に一度だけ動物性食品を抜くのであれば、「比較的簡単に始めることができて、かつ健康にも大きな影響を与えることができます」と、ジョセフさん。

【4】代替ミルクに置き換える
朝のコーヒーやシリアルなど、生活のなかのわずかな牛乳を代替ミルクに置き換えることも、プラントベースの食事への一歩となる。ロスさんおすすめのオーツミルクやアーモンドミルクをはじめ、豆乳やライスミルクなど選択肢は豊富だが、乳製品不使用のミルクには糖分が多いものもあるため、自分の栄養目標に合ったものを選ぶことがポイント。

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【5】朝食から変えてみる
「朝のベーコンエッグを、バナナ、レーズン、ココナッツフレーク、刻んだナッツ入りのオートミールに変えることもできるでしょう」と、ロスさん。朝食は家で食べることが多いため、コントロールしやすい食事のひとつ。このメニューなら、一日のスタートに必要なタンパク質と栄養素をしっかりとることができる。

【6】代替ミートを取り入れる
お気に入りの肉料理を諦めきれないという人は、使用する肉の半分を植物性の代替ミートに変えるだけならどうだろう。たとえば、ハンバーガーやミートボールに使うミンチ肉の半分を、刻んだマッシュルームに変えてみるなど、方法はさまざま。

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【7】一日一食だけ導入する
毎食すべてをプラントベースにするのが難しいと感じるのであれば、一日一食だけヴィーガン食にすることも検討してみて。

「それが難しい場合は、サツマイモやアスパラガス、葉物野菜、ローストしたビーツなど、食事の80~90パーセントを植物性食品にし、残りの10~20パーセントに魚を加えるといいでしょう」と、ロスさんは助言。

【8】好きなものも食べる
もちろん、プラントベースの食事を選んでも、好きなものをすべて諦める必要はない。肉を代替ミートにしたり、食材を少し変えてみるなど、できるところから工夫してみよう。食事や間食を楽しめることが、飽きずに続けられる最大の秘訣かもしれない。

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