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櫻井海音が“リアル”を語る『【推しの子】』アクアとの深い共鳴

  • 2024.11.23

端正な顔立ちと落ち着いた佇まい、そしてどこか憂いを帯びながらも意志を秘めた眼差し──櫻井海音が纏っている空気感は、彼が演じるドラマ&映画『【推しの子】』の主人公、アクアに通じるものがある。レギュラーを務めるバラエティ番組「王様のブランチ」で原作と出会い、その世界観に魅了されたという彼には、ドラマ化の話が持ち上がる前から「実写化されるなら自分がアクアを演じたい」という強い想いがあった。

「アクアと自分にはキャリア面で重なる部分がありまして。恋愛リアリティ番組に出演した後に俳優になるという流れが同じなんです。恋愛リアリティー番組の撮影中には、実際に自分が出ていたときのことを思い出しました。それもあってアクアはすごく共感できる存在だと感じていました」

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Kaito Sakurai for VOGUE JAPANジャケット ¥726,000 シャツ ¥137,500 パンツ ¥291,500 タイ ¥37,400(すべて予定価格)/すべてPRADA(プラダ クライアントサービス)

『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の赤坂アカ氏が原作、『クズの本懐』の横槍メンゴ氏が作画を担当するビッグタッグによって誕生した漫画『【推しの子】』。2020年に「週刊ヤングジャンプ」で連載がスタートして以来、シリーズ累計2000万部を突破する押しも押されもせぬ人気作だ。伝説的なアイドルの子どもに転生するという斬新な設定や、サスペンス要素、そしてアイドルの視点を通して描かれる赤裸々な芸能界の現実。そのすべてが、アイドルブームが世界規模で拡大する現代の熱気と重なり、社会現象ともいうべきヒットを記録している。そんな話題性の高い作品の実写化にあたり、スタッフや役者陣が感じていたであろうプレッシャーは計り知れない。

「現場全体に、原作への深いリスペクトが流れていました。キャストや監督はもちろん、撮影部や照明部、衣装部など、全員が『【推しの子】』を背負う覚悟と作品への愛情を持っていたからこそ、撮り終えることができたのだと思います。愛の強さゆえにぶつかることもありましたが、こう撮りたい、こういうメイクはどうか、と一つ一つに対して丁寧に確認し合いながら進めることで、お互いを讃え合うような関係になれました。これだけ長い期間、プレッシャーのかかる作品をともに背負った現場が心から大好きです」

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この作品の制作にかける想いの強さは、ドラマの作り込みにも見て取れる。

「共演させていただいた齋藤飛鳥さん(アイ役)や齊藤なぎささん(ルビー役)は実際にアイドル経験があり、ステージがとてもリアルです。また、B小町のライブに関しては、そのためだけに大きな会場を借りてライブセットを組み、お客様もエキストラの方々に来ていただいています。1話のオープニングのアイ時代のB小町の撮影では、2000人以上ものエキストラの方が参加してくださいました。CGを使わず、この規模でステージを作り込む撮影は、なかなかありません。多くの方々の協力があったからこそ、実写をここまでリアルに落とし込めたのだと思います」

自身もまた原作の大ファンだという櫻井から見て、『【推しの子】』の魅力はどんなところにあるのだろうか。

「最初はいわゆるアイドルの話かと思っていましたが、いざふたを開けてみるととても丁寧に、繊細に、そして読んでいて怖くなるほどリアルに芸能界が描かれていて。そこにサスペンスの要素が加わっているというのも新鮮でした。これはこの業界にいるからこその楽しみ方かもしれませんが、今こうやって取材していただいている瞬間でさえも、『【推しの子】』の世界に入っているのではないかと錯覚してしまう。そしてリアルで残酷な世界でも、それぞれに正義や光があるというところも、しっかりと描かれています。その職業の人たちが言いたくても言えなかったことを代弁して、世間の人たちに訴えかけているような印象を受けて、それがまた魅力的だなと感じました」

Kaito Sakurai for VOGUE JAPAN

そんな作品への想いの強さに比例して、徹底した役作りを行った。

「その日に撮影するシーンの原作を読み返して、アクアがどんな立ち方をして、どんな表情をしているか、例えばポケットに手を入れているかどうか、という些細な描写まで頭に入れていました。それが身についてくると、漫画のコマとコマの間、描かれていないところまで想像できるようになるんです。きっと彼だったら、今こういう立ち方をしているだろうと頭の中で思い描き、自然とアクアとして振る舞える。そうやって原作を読んで、現場に行ってシーンを撮影して、また原作を読んでというルーティンを撮影期間中ずっと繰り返していました。声のトーンの細かいところも監督と調整し、原作ファンの方に違和感を与えないアクアであろうと、常に心がけていましたね」

アクアは前世から引き継いだ使命感と復讐心、そして過去のトラウマを抱える。その複雑な内面を冷静さと警戒心で覆い、周囲に決して気取らせないという達観した姿勢を、櫻井は忠実に表現した。

「アクアは常に冷静で客観的に物事を見ていて、表情もほとんど変わりません。でも、その裏にはアイへの想いや父親への復讐心が隠されている。クールさを保ちながら、その感情の部分も表現するということが、演じていて一番難しい部分でもありました。特にアドリブのシーンでは、アクアのイメージを崩さないように集中していました」

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Kaito Sakurai for VOGUE JAPANジャケット ¥1,513,600 ニット ¥173,800/ともにFENDI(フェンディジャパン)

ドラマ「VIVANT」や「アオハライド」など、話題作への出演が続くが、彼は俳優としての自身の強みをどのように捉えているのだろう。

「まだ芝居に関して自分に強みがあるとは思えていませんが、僕は常に現場を愛していて、そして現場に愛されたいと思っています。現場に命を捧げるつもりでいるということを自分が示せば、それを受け取った人たちが同じ熱量で何かを返してくれるかもしれない。そうやって初めていい作品が生まれると思うので、現場の方々に愛してもらいたいという気持ちそのものが、僕の強みなのかもしれません」

櫻井が演技の道を歩み始めた頃、このような思いを抱くようになったきっかけともいえる出来事があった。

「これまでのキャリアの中で、チーフマネージャーに一度だけ怒られたことがあります。当時の僕は、現場がどういうものかわかっておらず、撮影が詰まっているときは眠さや疲れを出してしまっていた。そんなときにチーフから『現場で弱さを見せてはいけない。マネージャーになら見せてもいいから』と言われて、その言葉がすごく腑に落ちたんです。そこから現場に対する考え方や意識が変わりました」

Kaito Sakurai for VOGUE JAPAN
Kaito Sakurai for VOGUE JAPAN

共演する先輩方の姿勢や在り方にも強い刺激を受けているという櫻井。俳優としての目標を次のように語る。「これは将来の夢のようなものですが、サッカー日本代表のように俳優日本代表があるのだとしたら、そこに選出されるような俳優になりたい。もちろん実際にはそんなリストは存在しないのですが、自分で自分を認めてあげられたら、それが成し得たということになるのだと思います」

僕にとって演じることは、復讐だ─これは『【推しの子】』におけるアクアの名台詞だ。最後に、櫻井自身にとっての演じる意味を尋ねると、少し考えてこう答えた。「復讐、じゃないですかね。もちろん僕の場合は標的がいるわけではありません。ただ、過去の自分に対する復讐という気持ちは、少なからずあると思います」

その言葉には、自らを冷静に見つめながら、進化を続けようとする強い意志が宿る。アクアと出会い、櫻井はどう成長していくのか。今後の活躍から目が離せない。

Amazon Originalドラマ「【推しの子】」

第1~6話は11月28日21時より、第7~8話は12月5日21時よりAmazon Prime Videoにて独占配信開始

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DH2TZXGF

映画『【推しの子】-The Final Act-』

12月20日より全国公開

原作:「【推しの子】」赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)

出演:櫻井海音、齋藤飛鳥、齊藤なぎさ、原菜乃華、茅島みずき、あの

https://oshinoko-lapj.com/

Profile

櫻井海音/Kaito Sakurai

2001年、東京都生まれ。10代から音楽活動を始め、2020年にNHK連続テレビ小説「エール」で俳優デビュー。「ナイト・ドクター」や「差出人は、誰ですか?」、「VIVANT」、「泥濘の食卓」などテレビドラマへ出演を重ねる。2022年に映画『嘘喰い』でスクリーンデビュー、『鎌塚氏、羽を伸ばす』では舞台に初挑戦した。「王様のブランチ」にレギュラー出演し、モデルとしても活動中。

問い合わせ先/

プラダ クライアントサービス 0120‐45‐1913

ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120‐60‐1966

フェンディ ジャパン 0120‐001‐829

Photos: Houmi Sakata Styling: Akiko Fujii Hair & Makeup: Go Takakusagi at VANITÉS, Miki Yoshizawa Text: Airi Nakano Editor: Yaka Matsumoto, Saori Nakadozono

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