1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【大手町】皇居三の丸尚蔵館 「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」

【大手町】皇居三の丸尚蔵館 「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」

  • 2024.11.23

秋の皇居三の丸尚蔵館、公家の書の名品と皇室“御買上”の近代美術に出会う

皇居三の丸尚蔵館で開催中の「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」[2024年10月29日(火)~ 12月22日(日)]を見て来ました。

国宝《金沢本万葉集(かなざわぼんまんようしゅう)》の雲母摺り(きらずり)は、書の美しさと相まって宝石のような輝きを放っていました。 明治から昭和にかけて日本国内で開催された博覧会や展覧会で、皇室“御買上”となった日本の近代美術の名品優品も同時に展示されていました。公家の書の名品と、近代以降、美術振興に果たした皇室の役割が感じられる展覧会です。

※展示室内は個人利用にかぎって撮影ができます。「撮影禁止」マークのついている作品は、撮影禁止です。 撮影は注意事項をご確認の上、展示室内の指示に従い撮影してください。

 

出典:リビング東京Web

手前、《青華氷梅文花瓶》 初代宮川香山 明治27年(1894) 日本美術協会春季美術展覧会 二等賞銀牌受賞、ほか「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」展示風景 すべて皇居三の丸尚蔵館収蔵

公家の書の名品を伝える「公家の書-古筆・絵巻・古文書」

展示室2では、平安時代から江戸時代までの公家の書の名品、古筆や絵巻、古文書が展示されていました。

公家とは、天皇をとりまく上層貴族のことですが、本来は朝廷の官人の総称だったそうです。

平安時代以降、藤原摂関家を中心に独特な風俗習慣を持ち形成された貴族社会では、和漢の典籍や詠歌、書は必須の教養でした。平安時代、藤原道長(ふじわらのみちなが)が権力の絶頂期にあった藤原摂関家が全盛の時代は、藤原公任(ふじわらのきんとう)のように和歌、漢詩、管弦に秀でた公家も現れます。

紫式部(むらさきしきぶ)の『源氏物語(げんじものがたり)』や、清少納言(せいしょうなごん)の『枕草子(まくらのそうし)』など女流文学が主に仮名で書かれた時代でもありました。書の名門・世尊寺家(せそんじけ)の始まりとされる藤原行成(ふじわらのゆきなり)のような能書家もこの時代に活躍します。

本展の白眉と言える国宝《金沢本万葉集(かなざわぼんまんようしゅう)》は、行成から五代目の子孫・藤原定信(ふじわらのさだのぶ)筆とされています。

 

出典:リビング東京Web

皇居三の丸尚蔵館 「公家の書-古筆・絵巻・古文書」

清少納言のひいおじい様の恋の歌《深養父集断簡(ふかやぶしゅうだんかん)(名家家集切)》

ひいおじい様の恋の歌を読める機会があるとしたら…。 《深養父集断簡(名家家集切)》は、清少納言の曾祖父で、歌人・清原深養父(きよはらのふかやぶ)の詠んだ恋の歌だそうです。

「うらみつつぬるよのそてのかはかぬはまくらのかたにしほやみつらむ」

伝 紀貫之(きのつらゆき)の書が、清原深養父の切ない恋の歌を、繊細で流れるような筆致であらわしています。

「名家家集切(めいかしゅうぎれ)」の名家は歌の名人の意味で、平安時代の名高い歌人6人、在原元方、清原深養父、坂上是則、藤原興風、藤原兼輔、源公忠の家集を書写した断簡として伝わったものです。

 

出典:リビング東京Web

《深養父集断簡(名家家集切)》 伝 紀貫之 平安時代(11世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵 前期展示:10/29~11/24

藤原定家《記文草案(きぶんそうあん)》は再生紙で

鎌倉時代の廷臣で歌人の藤原定家(ふじわらのさだいえ)が書いた申文(もうしぶみ)《記文草案》(左)。任官推薦文書の自筆下書きだそうです。本文には「自身の出仕は30年にも及ぶが、」と前置きしながら同輩の藤原有家と源兼定の昇進を薦め、自らの昇進も詠歌でアピール。取り消し線⁈でしょうか、修正している箇所に、定家の推敲を重ねた様子が感じられます。

料紙は、楮紙(ちょし)の漉返紙(すきかえしがみ)、再生紙だそうです。公家社会のSDGsでしょうか。紙が貴重なものだったことが感じられます。和歌集などの雅な料紙とは違い、全体的にやや黒っぽい色です。

裏面の墨書が残っていますが、自身の日記『明月記』が記されていたと考えられています。

 

出典:リビング東京Web

左側、《記文草案》 藤原定家 鎌倉時代(13世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵 前期展示:10/29~11/24

国宝《春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)》巻十七(部分)

藤原氏の氏神である春日明神(かすがみょうじん)の霊験譚(れいげんたん)が書と絵で表された国宝《春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)》巻十七(部分)。鎌倉時代の公家で左大臣の西園寺公衡(さいおんじきんひら)の発案によるとされる中世やまと絵の代表的な絵巻で、絵は絵所預(えどころずかり)の高階隆兼(たかしなたかかね)によるものです。朝廷内の公家を主役とするものと、興福寺の僧を中心にした説話集の二部構成だそうです。

巻十七は、興福寺の僧・一乗院良信(りょうしん)の詞書によるもので、明恵上人(みょうえしょうにん)が中国に渡ろうとするのを春日明神が止めるために現れ託宣をする場面が表されているそうです。

13世紀の中国は、北方遊牧民が華北地方に侵攻し、異民族の王朝が建てられた混乱期でした。北宋(ほくそう)の都・開封(かいほう)から南遷し臨安(りんあん)に都を置いた南宋もやがてモンゴル軍の元(げん)に滅ぼされています。

明恵上人は、鎌倉時代初期の華厳宗中興の祖で、自らが見た夢を記した『夢記(ゆめのき)』を著した人物です。

 

出典:リビング東京Web

国宝《春日権現験記絵》巻十七(部分) 高階隆兼 絵 一乗院良信 詞 鎌倉時代 延慶2年(1309)頃 皇居三の丸尚蔵館収蔵 前期展示:10/29~11/24、巻替あり

必見!雲母摺りと書のハーモニー、国宝《金沢本万葉集(かなざわぼんまんようしゅう)》

国宝《金沢本万葉集》(前期後期で頁替)。

白や黄色の地色の上に雲母摺りの文様が様々に表された冊子本で、和製の唐紙を用いているそうです。漢字で表す万葉仮名(まんようがな)と仮名で、流れるような筆致の所々にアクセントを付けたリズム感のある書で、雲母摺りとのハーモニーは必見です。

書の名門・世尊寺家(せそんじけ)五代目藤原定信(ふじわらのさだのぶ)による『万葉集』の古写本で五大万葉集の1つだそうです。 奈良時代末期に成立したとみられる現存する日本最古の和歌集『万葉集』が、定信の流麗で切れのある筆致で瑞々しく蘇ったように感じられます。

 

出典:リビング東京Web

国宝 《金沢本万葉集》巻第二 藤原定信 平安時代(12世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵 前期展示:10/29~11/24 巻第二、後期展示:11/26~12/22 巻第四 各期頁替あり

皇室御買上の優品「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」

展示室1は、明治から昭和にかけて、日本国内で開催された博覧会や展覧会に出品されて皇室により御買上になった優品が並んでいました。

季節にあわせて秋をテーマにした作品が多く展示されています。皇室の美術振興の一端を、季節を感じながら見ることができました。

《官女置物(かんじょおきもの)》

旭玉山(あさひぎょくざん)の牙彫(げちょう)の傑作《官女置物》(手前)。

精緻を極めているうちに、パリ万博に間に合わなかった作品です。日本美術協会美術展覧会にて御買上です。

後ろの屛風は池上秀畝(いけがみしゅうほ)の《秋晴》(左隻)。文部省第9回美術展覧会にて御買上。

 

出典:リビング東京Web

手前《官女置物》 旭玉山 明治34年(1901) 日本美術協会美術展覧会にて御買上、《秋晴》 池上秀畝 大正4年(1915) 文部省第9回美術展覧会にて御買上 どちらも皇居三の丸尚蔵館収蔵 前期展示:10/29~11/24

《稲穂に群雀図花瓶(いなほにぐんじゃくずかびん)》

濤川惣助(なみかわそうすけ)《稲穂に群雀図花瓶》一対。

絵付は泉梅一(いずみばいいつ)です。明治14年(1881)第2回内国勧業博覧会にて御買上となりました。

明治天皇(めいじてんのう)お気に入りの花瓶だったそうです。稲穂の間から頭を出している雀たちの賑やかな鳴き声が聞こえてきそうです。

 

出典:リビング東京Web

《稲穂に群雀図花瓶》 一対 濤川惣助、絵付:泉梅一 明治14年(1881) 第2回内国勧業博覧会にて御買上 皇居三の丸尚蔵館収蔵 通期展示

平安時代から伝わる公家の書の名品、近代日本の美術振興に果たした皇室の役割を伝える優品

皇居三の丸尚蔵館「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」は12月22日(日)まで。

皇室伝来の収蔵品より平安時代から伝わる貴重な古筆・絵巻・古文書の公家の書や、近代の皇室が率先して担って来た美術振興を日本の近代美術の優品で味わうことが出来る展覧会です。 是非お出かけください。※観覧は予約優先です。

〇皇居三の丸尚蔵館 URL:https://shozokan.nich.go.jp/
住所:〒100-0001 東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※毎週金曜・土曜は夜間開館。午後8時まで開館。(入館は午後7時30分まで)※ただし11月29日(金)を除く
休館日:月曜日(ただし月曜が祝日または休日の場合は開館し、その翌平日休館)
※年末年始および展示替え期間・その他諸事情により臨時に休館する場合があります

〇交通アクセス:
大手門(入門してから約100メートル)地下鉄各線の大手町駅(C13a出口)から徒歩約5分、JR東京駅(丸の内北口)から徒歩約15分
大手門以外からの入門※月曜日・金曜日閉門。その他皇居東御苑の公開日時に準ずる。
平川門 地下鉄東西線竹橋駅(1a出口)から徒歩約10分
北桔橋門 地下鉄東西線竹橋駅(1a出口)から徒歩約15分

〇「公家の書-古筆・絵巻・古文書」と「皇室の美術振興-日本近代の絵画・彫刻・工芸」
会場:皇居三の丸尚蔵館
会期:2024年10月29日(火)~ 12月22日(日)※前期:10月29日(火)~11月24日(日) 後期:11月26日(火)~12月22日(日)※会期中、一部展示替えあり
入館料:一般 1,000 円、大学生 500 円
※高校生以下および満 18 歳未満、満 70 歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、運転免許証、マイナンバーカードなど)をご提示ください。
※障がい者手帳をお持ちの方およびその介護者1名は無料(日時指定不要)。
※予約優先
※展示室内は個人利用にかぎって撮影ができます。「撮影禁止」マークのついている作品は、撮影禁止です。 (フラッシュ禁止、また、撮影の際は他のお客様にもご配慮いただき、長時間場所を占有しないようにご注意ください)
※動画、パノラマ撮影はご遠慮ください
*詳しくはホームページでご確認ください。

元記事で読む
の記事をもっとみる