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【50代の大人旅】“海の京都”と呼ばれる京丹後で新旧のカルチャーを楽しむ!《後編》ーエディター・あさこの関西巡りー

  • 2024.11.23

“くつろげる非日常”を過ごせる湖畔のホテル、「HOTEL & 湖邸 艸花 -そうか-」などをご紹介した前編に続き、カルチュアルな京丹後旅の後編をお届けします。

一般的にあまり海のイメージがないかもしれない京都府において、季節ごとに表情を変える美しい風景や美味しい自然の恵みを楽しめる「海の京都」・京丹後では、いつもよりゆったりと、やさしい時間が流れていました。

日本遺産にも認定されている「舞鶴赤れんがパーク」とアーティスティックな複合施設「atick」で京丹後ショッピング

120年以上の歴史を持つ赤れんが造りのノスタルジックな倉庫が建ち並ぶ、どこか不思議な風景が魅力の「舞鶴赤れんがパーク」。もともとは、旧日本海軍の施設だったそう。重要文化財に指定されている8棟の赤れんが倉庫は、数々の映画のロケ地にも使用されています。

海上で曜日感覚を失わないように毎週金曜日にカレーを食べるという旧日本海軍の伝統は海上自衛隊にも引き継がれています。そんなわけで、ショップにはカレー! カレー! カレー! 旧日本海軍のレシピや護衛艦ごとに異なるという現在の海上自衛隊のレシピなどを再現したレトルトやルウが所狭し並んでいます。私は東郷さんカレーを購入してみましたが、結構スパイシーな味わいでした!

ツタの這う赤れんがをバックに、郵便ポストまで絵になり、ちょっとしたフォトスポットの風情。パーク内には、赤れんが博物館やイベントスペースなどもあるので、お出かけ前にチェックしておくのがおすすめです。

 

舞鶴赤れんがパークの裏手にある約150段(!)の階段を上がった高台にある複合施設「atick(アティック)」でブレイクタイム。カフェレストラン「GOOD SOUNDS COFFEE」では、大きな窓から舞鶴湾が一望できます。タイミングが合えば、海上自衛隊の艦隊もウォッチできるかも。

ニュートラルななかにもエッジの効いたデザインが大人のおしゃれ心をくすぐるアパレルブランド「SOLAMONAT」初の直営店やアパレルからライフスタイルまで幅広く取り扱うコンセプチュアルな提案型のセレクトショップなどを見て回るうちに、いつの間にやら真剣にお買い物モードに……。

日本をキーワードに、「食」「ファッション」「クラフト」など様々なコンテンツをキュレーションする「BEAMS JAPAN 舞鶴」では、地場産業である京丹後の織物などのメーカーとコラボレーションしたアイテムもラインナップしていました。

2024年9月にオープンしたばかりのatick。ショップ、レストランのほか海の見えるサウナもあるそう! 時間があれば整えたかったところですが、旅の途中のため断念。再訪の折にはぜひ利用したいと思います。

 

京丹後のボタニカルを味わうクラフトジン「京丹後舞輪源蒸留所」

ここ数年、ジワジワと人気が高まっているクラフトジン。その土地に由来する素材を取り入れて作られることから、ユニークなクラフトジンが各地で作られています。「京丹後舞輪源蒸留所」では、300種類以上の薬草薬樹が自生する丹後半島の豊かな自然の恵みをフレッシュなままに蒸留した2種のクラフトジンをラインナップ。

巨木をそのまま使ったテーブルの向こうには、丹後天橋立大江山国定公園の山々。窓外を眺めるうちにフッと肩の力が抜けるような不思議な空間で「Mairingen Fresh Craft Gin (ORIGINAL) 」を試飲させてもらいました。豊かな森の味。鼻に抜けていく、冷たくさわやな風の香り。深呼吸をして、五感が冴えていく。たったひと口でファンになってしまう味わいでした。

周辺の森で手摘みしたクマザサやクロモジを含め14種のボタニカルの味を引き出し、掛け合わせ、唯一無二のクラフトジンを作りだす小ぶりの蒸留施設はピカピカ。それもそのはず、今年の4月にオープンしたばかりなのです。

1からクラフトジン作りに取り組むヨンテとシンザンは、ともに20代。彼らがジンの素材となるボタニカルを手に入れられるだけの豊かな自然に恵まれている代わり、電波は途切れがちなエリアなので、まずは「スイス村」のビジターセンターを目指し、道標を頼りにさらに山の上へ。ちなみに「舞輪源」はスイスの都市マイリンゲンに由来しています。

 

京丹波といえばの名産品「丹後ちりめん織元 たゆう」で触れる伝統の美

奈良時代から絹織物が織りつがれているという京丹後。その代名詞ともいえる“ちりめん”が生み出されたのは江戸時代・享保5年のことだとか。そんな伝統の流れを受け継ぎ、今も日々織機の音が響く「丹後ちりめん織元 たゆう」では、ファクトリーブランド「tayu」も手掛けています。

ファッション雑貨や絵はがき、メディアによく取り上げられるという肌に優しい絹のタオルなどもすべてたゆうさんで作られた丹後ちりめんが使われています。ソープをはじめとするコスメ類には、絹織物の製造過程で発生する「セリシン」が使われています。肌に近い天然のたんぱく成分で、保湿力のほかさまざまな美容効果が期待されています。

お蚕さんが作る繭から生糸を紡ぐ「製糸」、撚りをかける「撚糸」などを経て織り上げられた生地は、びっくりするほどゴワゴワ。織物をお湯で煮て、セリシンを落とす「精錬」という工程ののちにようやく、私たちがイメージする絹織物のしっとりとやわらかな質感となります。経糸と緯糸に異なる撚り具合の糸を使って織り、精錬して縮んだ結果、「縮緬(ちりめん)」ならではの凹凸のあるシボ感が出流のです。まさに字の通りなのですが、改めて理屈を知って、妙に納得してしまいました。

会話が聞き取れないほど賑やかな織機の響き。それでも、工場にある織機のうち、稼働しているのは一部だそう。丹後ちりめんはもちろんのこと、和装文化を支える絹織物の伝統をどう守っていくのか、産地を訪れるとヒリヒリとした気持ちにもなります。

 

織物を“練る”!? 丹後織物工業組合のオープンファクトリー「TANGO OPEN CENTER」

絹織物精練加工場のオープンファクトリー「TANGO OPEN CENTER」では、丹後ちりめんや絹織物を身近に感じられるワークショップも人気。2024年6月にオープンしたばかりですが、海外から訪れるゲストもいて、日本の絹織物の技術力の高さに驚愕しているそう。

ファクトリーショップでは、丹後織物製品を数多くラインナップ。なかでも注目は、地域に根ざして活動する新進気鋭の作家たちのアイテム。お肌や髪にやさしいシルクを使ったウエアやパジャマ、ナイトキャップなどが豊富に取り揃えられています。この品揃えは産地だからこそです。

シルク100%はもちろん、ウールシルクなどのアイテムも。なかにはポリエステルのちりめんもあり、丹後では絹に限らず、さまざまな素材を使い、ストレッチ性などさまざまな特性を持つ生地が開発されたり、“洗濯機で気軽に洗える絹”といった新たな技術の研究も進められています。

需要が低下とともに全国的に生産量が減るばかりとなっている絹織物。古代から現代に至るまで、織物の名産地であり続けてきた京丹後も例外ではありません。織られた生地から余計なものを落とす「精錬」という工程は本来“練る”と呼ばれていたそうですが、今や全国の織物の“練り”は、ほぼ全てをこちらの工場が一手に引き受けている状態。

織物を煮るための動力は、ボイラー。工場の精錬場にはもうもうと湯気が立ち込めていましたが「このメインのボイラーのバルブが閉じられる時が、日本の絹織物の最後かもしれません」と伺い、まずは知ることの大切さをしみじみと感じました。

 

この記事を書いた人

編集者
ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE!京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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