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ルイナール創造の源。「クレイエル通り4番」とは

  • 2024.11.23

シャンパーニュメゾンのルイナールは、創業300周年を迎える2029年に向けて新たな象徴的な場を作り出した。3年にわたる建設作業を経て、同メゾンの本拠地であるフランス・ランスの「クレイエル通り4番」に、新たなパビリオン『4 RUE DES CRAYÈRES』が完成した。ルイナールの長い歴史と未来へのビジョンを見事に表現している。

Ruinart|ルイナール 4 RUE DES CRAYÈRES(クレイエル通り4番)

シャンパーニュメゾンのルイナールは、創業300周年を迎える2029年に向けて、同メゾンの本拠地であるフランス・ランスの「クレイエル通り4番」に、新たなパビリオン『4 RUE DES CRAYÈRES』を建設した。3年にわたる建設作業を経て、ルイナールの伝統と未来を表現する象徴的な場が完成した。

Text by WASEDA Kosaku

歴史が息づく場所で、未来を創る

1729年に繊維商であったニコラ・ルイナールにより創設され、世界で初めてシャンパーニュメゾンとして登録されたルイナール。ランス市内に位置する「クレイエル通り4番」は、ルイナールの歴史の中で重要な役割を果たし、現在でもすべてのボトルがここから世界中に出荷されている。この地は、ルイナールがシャンパーニュ文化を世界に広める拠点となり、またフランス啓蒙主義の「理想の時代」を象徴する場所としても深い意味を持つ。

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ここには、ガリアローマ時代の石灰岩石切り場「クレイエル」がある。ルイナールは、この「クレイエル」をセラーとして使用しており、その全長は8キロメートルにも及ぶ。熟成に理想とされる一定の温度と、適度な湿度を保つ環境はシャンパーニュの熟成にはぴったりの場所だ。この「クレイエル」こそ、ルイナールのシャンパーニュが持つ繊細かつ清らかで上品な味わいの源なのだ。

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左から)建築家 藤本壮介氏、 メゾン ルイナール社長 フレデリック・デュフォー氏、 インテリアデザイナー グエナエル・二コラ氏

新しいパビリオン『4 RUE DES CRAYÈRES』は、ルイナールの300年にわたる歴史と創造性を物語る場としてこの地に設計された。プロジェクトに携わったのは、建築家の藤本壮介氏、インテリアデザイナーのグエナエル・ニコラ氏、ランドスケープ・アーティストのクリストフ・ゴートラン氏という3名。専門家同士が協力し、ルイナール創設者であるニコラ・ルイナールのビジョンを現代的に再解釈した。

藤本壮介氏は、古いものと新しいもの、西洋と東洋の調和を目指し、ルイナールのエレガンスとソフィスティケーションを現代的な空間に表現した。藤本氏は「ルイナールの世界観を感じながらも、訪問者が自分のペースで自由に探索できる空間を作りたかった」と語る。インテリアデザイナーのグエナエル・ニコラ氏は、柔らかな曲線と自然素材を取り入れ、ルイナールの歴史を体現する一方で、訪れる人々に驚きと魅惑を与える空間を創り出した。

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パビリオンの建材には、地元の素材がふんだんに使われている。特筆すべきは、ランス周辺で採れるソワソン石を採用した点だ。建物の外観は、シャンパーニュの泡のように曲線を描いた非対称の屋根を持ち、隣接する19世紀の直線的なファサードと対比を成している。これにより、建物は古典と現代、伝統と革新の融合を表現しており、見る者に強い印象を与える。

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さらに、パビリオン内は自然光を巧みに取り入れ、光と影が織り成す美しい空間が広がっている。特に中庭に面した巨大なガラス窓は、シャンパーニュの泡をイメージさせるような透明感を持ち、時間帯や天候によって空間の表情が変化する仕掛けになっている。

ランドスケープアーティストのクリストフ・ゴートラン氏は、パビリオン周辺の庭園デザインにも深い思索を巡らせ、これを具現している。5000平方メートルの保護林を含む7000平方メートルの敷地には、シャンパーニュ地方の自然と調和した植物が植えられ、季節ごとの変化を楽しめる。シャンパーニュ地方の丘陵地帯を再現するような曲線を描いた生け垣や、四季折々に色を変える木立が印象的だ。

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また、ここにはメゾンの歴史を感じさせる現代アート作品も散りばめられており、訪れる人々に芸術的な体験を提供している。ルイナールは、長年にわたってアートとの深い関わりを持ち続けてきた。メゾンの創業以来、シャンパーニュブランドとして初めてアールヌーボーの巨匠アルフォンス・ミュシャにポスターを依頼するなど、芸術と文化の支援に積極的に取り組んでいる。新しいパビリオンにもその精神が反映されており、アート作品と自然環境との調和を目指した美しい空間が広がっている。ブドウの木やガラス、木材、金属といった素材が、シャンパーニュ地方の風土を感じさせるように使われ、メゾンのアートや自然への慈しみが感じられる場になっている。

もちろん、持続可能性にも配慮された設計が施されており、太陽光発電や地熱エネルギーを利用したシステムを導入し、建物の80パーセントのエネルギーは自給自足となっている。加えて壁や骨組みに使用されている素材は、地元で調達された自然素材やバイオ素材が中心で、環境への負荷を最小限に抑える工夫がなされている。さらに、建物の屋根は緑化され、雨水利用システムも備えており、エコロジカルなアプローチが徹底されている。

300年というメゾンの歴史を受け継ぎながら、未来へ挑戦する力強さ、自然やアートを愛する繊細さが感じられる本パビリオン。持続可能性の実現というこれからの時代を切り開いていくルイナールの拠点として、愛されていくことだろう。

MHD モエ ヘネシー ディアジオ
Tel.03-5217-9736
https://www.mhdkk.com/brands/ruinart/

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