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「過激で批判的な掲示板を読むのがやめられません。時間の無駄と思いつつ、つい読んでしまいます…どうしたらいいのでしょう」悩みを専門家が解消!

  • 2024.12.2

「やめる」ではなく「置き換える」という発想がヒント【臨床心理士・南舞さんのあるある! 心の相談室】

Lilly Bloom

時間の無駄だと思うけど、やめられない……

相談者:Hさん

私は寝る前にネット掲示板の過激で批判的なゴシップネタなどをついつい読んでしまいます。 気付くと2時間経っていることもザラ。無駄な時間だとわかっていながらもやめられません……。それに「過激で批判的な内容ばかり読んでいて大丈夫?」とも思ってしまします。どうしたらいいのでしょうか。

臨床心理士:南舞さん

Hさん、お悩みありがとうございます。ネットの掲示板やゴシップ記事って、ついつい見たくなってしまいますよね。はじめにお伝えしたいのですが、Hさんが感じている悩みをこうして言葉にして、この状況に向き合おうとしているのはすごいことだと思います。また、その行動を起こしたことだけでも、すでに解決の方向に向かっていると思います。Hさんが少しずつ行動を変えていけるよう、ささやかではありますが、アドバイスさせていただきますね。

お話を進めていく前提として、ネット掲示板やゴシップ記事を見ること自体は悪いことではないと思います。しかし、それが日常生活に影響している、心身の健康にネガティブな影響を与えているようであれば、何かしらの解決策を見つけていく必要がありますよね。まずは、具体的な対処法について触れていく前に、「いけないと思っているのに、なぜやめられないのか?」について、脳のメカニズムをもとにお話ししてみたいと思います。

寝る前にネット掲示板や過激なゴシップ記事をつい読んでしまう理由として、脳の「報酬系」と呼ばれる脳の神経の働きが考えられます。報酬系とは、生存に必要な行動を快感として感じ、その行動を繰り返すことで、生存を図る神経系です。報酬系が絶えず刺激されていると、刺激に対する反応が下がり、さらに刺激を得ようとします。これは報酬欠乏状態と呼ばれ、ネット掲示板やゴシップ記事を繰り返し見るのは、このループにハマっているからだと考えられます。ネット掲示板やゴシップ記事は、常に新しい情報が更新されるため、それが快感となって、止めどきを見失いやすくなってしまうのです。

さらに、寝る前って脳も体も疲れ切っている時間なので、自分をコントロールするのも困難な時間と言えるのかもしれません。なので、「今日はやめよう」と思っても気づくとまた開いてしまっているというのは、ある意味仕方がないことなのかもしれません。

Malte Mueller

批判的な内容を見続けることが、心に与える影響とは?

仕方がないとは述べつつも、過激で批判的な情報に触れることにはデメリットもいくつかあります。そうした情報に触れる機会が増えると、自覚しないうちにストレスや不安が蓄積されることも。心理学の研究では、ネガティブな内容に頻繁に触れることで、心に以下のような心の影響が生じる可能性があると言われています。

(1) 認知の歪み

認知の歪みとは、物事を論理的に解釈できずに偏った捉え方をしている状態にあることです。認知の歪みによって、受け取った情報を客観視したり、他の人の意見を取り入れて自分の考え方を修正したりすることが難しくなるため、人と衝突するなど対人面に影響を及ぼすことも。

(2) 睡眠への影響

ネガティブな刺激を見続けると、不安や怒り、焦りなどネガティブな感情の存在が大きくなります。すると、心の安定が損なわれ、眠れない、寝つきが悪くなるなど睡眠に影響が出ることもあります。

(3) 慢性的な疲労感

心が常に興奮状態に置かれていると、それによる睡眠不足などが重なり、肉体的・精神的に疲労がたまりやすくなり、いつも疲労が抜けない状態になってしまう可能性も。

こうした影響を防ぐためにも、ネットとの向き合い方を工夫しながら、掲示板や記事以外にもストレス発散になる方法を見つけていく必要があると思います。

FreshSplash

やめたいけれど、やめられないときの対策

習慣になっていることを辞めるのは難しいことではありますが、抜け出せないということはありません。ポイントは、いきなりではなく、「少しずつ段階を踏んでいくこと」です。小さなステップを積み重ねて、無理なく習慣を変えていきましょう。

(1)「やめる」ではなく「置き換える」という発想へ

何かを「やめる」と思うとストレスが溜まりやすいので、代わりに「新しい習慣に置き換える」という視点を持つと良いでしょう。例えば、ネット掲示板やゴシップ記事を読む代わりに、好きな音楽を聴く、本を読むなどの選択肢に変えてみましょう。最初はちょっとの時間で辞めてしまい、また掲示板や記事を読むという状態になってしまうかもしれませんが、それでも諦めずに、別の行動を続けてみてください。

(2)自分を責めないこと

過激な情報に触れてしまったとしても、それ自体を否定する必要はありません。なぜなら、過激な情報を見ると言う行為には何らかの心のニーズが隠されていて、そのニーズが満たされた状態と言えるからです。「つい見てしまった」と気づいても、そこで自分を否定するのではなく、「今日はいつもより疲れていたんだな」とか「見ちゃったけど、私の気持ちは満たされたね」と、自分を労わる声かけをしてあげましょう。

(3)引き金となっている感情や状況を把握する

ネット掲示板やゴシップ記事に触れたくなる背景になっているものを探ってみると、止めるための行動をとりやすくなります。例えば、仕事でストレスが溜まっている、家事育児で疲れている、孤独を感じている、自分の現状に何かに不満があるといったようなことなどです。過激な情報に触れることを止めようとする前に、過激な情報に触れる引き金となっている感情や状況を把握し、そこにアプローチすることで、悩んでいる行動が減ることがあります。

(4)ポジティブなコンテンツに目を向ける

ネガティブな情報だけでなく、少しずつポジティブな情報に触れる時間を増やしてみるのもひとつ。自分の成長や興味を引き出すような内容に触れることで、ストレスが軽減し、日々のモチベーションが高まることもあります。

(5)使っている時間を可視化してみる

ネット掲示板やゴシップ記事を読むことにどのくらいの時間を費やしているのか、記録してみるのはどうでしょうか? 数字などわかりやすく目に見える形にすると現状が把握しやすいですし、「このくらいの時間にとどめてみよう」など目標が立てやすいかもしれません。

kamisoka

すでにある習慣は、少しずつ見直していくことが大切

今すでにある習慣を手放すのは、そんなに簡単なことではないと思います。「この習慣を変える!」と思っていても、うまくいかないということもあるかもしれません。

一度で完璧に変えようとするのではなく、何度もトライして、小さな成功体験を積み重ねることを意識しましょう。時間はかかるかもしれませんが、そうやってコツコツ積み上げてきたものはそう簡単には崩れません。また、ネットとの関わりを調整するというこの取り組みは、Hさんにとってプラスになることもきっとあると思っています。 もし、「自分1人では、どうしてもコントロールが難しい」と感じた時は、臨床心理士など心の専門家に相談するのも選択のひとつとしておすすめしたいと思います。Hさんの状況に合わせたサポートを提供してくれるはずです。Hさんがネット環境と良いバランスで付き合っていけるようになることを陰ながら応援しています!

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