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穏やか皇子は裏では狼!?空回りおもしれー女とワケアリ男のほっこり政略結婚『狼皇子と嘘つきな結婚』

  • 2024.11.20
ダ・ヴィンチWeb
『狼皇子と嘘つきな結婚』(音久無/白泉社)

「裏表があるキラキラしたワケアリ男」は好きですか?であれば、音久無(おと・ひさむ)『狼皇子と嘘つきな結婚』(白泉社)のヒーロー・ルスランにぜひ出会ってほしい!

アユス王国の王女・アイリンは、傾いた母国を救うため、エレン帝国の皇子・ルスランに嫁ぐことになる。文字通りの政略結婚だ。ルスランは穏やかで優しい夫だが、アイリンと初夜を迎えることはなかった。アイリンは王女ではあるものの、実母はすでに亡く、現在の王妃とその娘たちには迫害されている。帰る場所もないアイリンの唯一の役割は、両国を結びつけること――。そう思い詰めたアイリンの必死の行動は、空回りしたりかわされたり。それでも、アイリンの思いに寄り添ってくれるルスランに心を寄せつつあるとき、ルスランの「真の顔」が明らかになって……!?

本作はいま女性向けで流行している(というか、もう定番ジャンルとなっている)政略結婚もの。政略結婚ものの魅力は、形の上でだけ夫婦になったふたりが、どう本当のパートナーになっていくかのもだもだ感とじりじり感にある。かつ、本作はタイトルにもあるように「嘘つきな結婚」――どちらかに秘密があり、その秘密が明らかにならないと恋愛関係が真に進まなそうだ。

ルスランの秘密は、特殊部隊「狼」のトップであること、穏やかで優しいのは猫被りだったということ。それに加えて、まだまだ秘められた何かがありそう。「狼皇子」の「狼」は、「狼少年」、つまり嘘つきを暗示しているのでは……とついつい深読みしてしまう。

とはいえ、本作の読み味は、あたたかくて癒される。それはひとえに、ヒロイン・アイリンの人柄によるものが大きい。思い余ったアイリンは、ルスランに夜這いをかける。しかしその化粧は激ヤバ。ルスランを興奮させるどころか、銃をつきつけられる始末だ。めちゃくちゃインパクトがあり、筆者は何度かWeb広告で出合っている。いまこの記事を読んだ方の中にも、「見たことあるかも!」と思う人はいるのでは。1話で一番インパクトがあるシーンだ。

ここでは裏目に出てしまったものの、アイリンは健気で前向き。圧倒的に光属性だ。そしてルスランも、アイリンに最初見せていた「穏やかな夫の顔」こそ嘘のものだったが、アイリンへの優しさは嘘ではない。

激ヤバなところだけ紹介してはアイリンがふびんなので、もうひとつ、家族との確執を乗り越えようとするシーンも紹介したい。アイリンの継母である王妃は、アイリンの母への感情からアイリンを疎み迫害している。その関係は、ルスランのもとに嫁いでも変わらなかった。祖国にいた時は立ち向かえなかった相手に、アイリンは勇気を出して自分の意志を伝えてみせる。それができるようになったのは……きっと、ルスランとの出会いのおかげなのだろう。

一生懸命なおもしれー女ヒロインに、嘘つきだけど優しさは嘘じゃないワケアリヒーロー。白泉社の少女漫画から摂取したい栄養もりもりのふたりだ。アイリンが予想外の行動をとるたび、ルスランのピアスが「シャラン」と鳴るたび、胸がきゅんとする。ふたりの間にある気持ちは、まだ恋ではない。いつしか恋を自覚して、「嘘の結婚」が「本当の結婚」になる日までを追いかけたい。

文=青柳美帆子

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