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「働いていないのに不公平!」『専業主婦』がXのトレンド入り…専業主婦でいるのはズルいこと?

  • 2024.11.20

「専業主婦」というキーワードがXで話題に上がっていた今日このごろ。ことの発端を調べると、第3号被保険者の廃止についてさまざまな意見が飛び交う中で、専業主婦の是非が問われているようでした。専業主婦とは、一般的に、結婚後仕事を持たずに家庭を守ることに専念している女性を意味します。仕事をしていないため収入がなく、第3号被保険者として保険料を支払わずに健康保険に加入しているケースがほとんどです。それに対して「ずるい」「不公平だ」という不満が飛び交っていたのですが……。

第3号被保険者とは?

話題の発端となっていたのは「第3号被保険者」を廃止すべきという主張でした。

第3号被保険者とは「会社員などに扶養されている人の、健康保険の被保険者資格のこと」。「収入が少ない人」「収入がない人」でも加入できる健康保険であり、配偶者の収入が一定額以下であれば、保険料を支払うことなく加入できる制度です。

自身の収入がない・保険料や税金を納めていない専業主婦の多くは、第3号被保険者であることが多いでしょう。しかし、自身が保険料を支払っている人からすると、保険料を払っている人と払っていない人が同じ待遇を受けるのは不公平だと感じるとのこと。そんな気持ちが、専業主婦の是非を問う、一連の話題につながったことが考えられます。

では、第3号被保険者が廃止になる(制度をなくす)と、専業主婦はどうなるのでしょう? 収入がないなかで、自身で保険料を負担する必要が出てしまいます。これは家計にとっては大きな負担。妊活や子育てがしにくくなり、少子化を加速させる恐れもあると言われています。

その一方で、第3号被保険者制度は女性の就労を阻害する要因のひとつという考え方もあります。第3号被保険者という立場に甘んじでいるという考えや、第3号被保険者でいるための条件として定められている所得の上限が、就労にブレーキをかける原因になると考えられているのです。

専業主婦を選んだワケは?

そもそも、現在世の中にはどれくらいの専業主婦がいるのでしょう。

総務省統計局のデータによると、1980年ごろには、専業主婦が共働き家庭の約2倍いました。

引用:総務省統計局「労働力調査特別調査」、総務省統計局「労働力調査(詳細集計)

しかし2000年ごろにほぼ同数となり、それ以降専業主婦は減少。近年では、共に働き生活を支える夫婦が主流になっていると考えられます。

そんな減少の一途を辿る専業主婦ですが、専業主婦のママを対象に「専業主婦でいる理由」を調査したところ、「子育てに専念したい」と回答した人が36%という結果に。「働く気がない」と答えた人を加えると、52%もの人が自身の意思で専業主婦を選んでいるようです。

もし第3号被保険者が廃止になったとしたら、子育てに専念したいと思っても、金銭的な理由で叶わない、という人が出てしまうことが考えられるでしょう。

一方で「子どもが預けられない」「家族が反対する」という、「働きたいのに働けない」という状況の人も、26%ほどいることがわかります。この26%の女性は、いわば好んで第3号被保険者を選んだわけではない人。廃止になることで、経済面はもちろん、精神的な面でのダメージが大きく、子育てをすることのデメリットを大きく感じてしまうかもしれません。

専業主婦でいることに価値を見出している人、やむをえず専業主婦でいる人にとっては、第3号被保険者の廃止は大きな問題なのです。

専業主婦はずるいのか?

専業主婦に関する投稿はXを賑わせ、「専業主婦はずるい」という意見がある一方で、「地域の平和は専業主婦に支えられている」という肯定的な意見も見られました。

世の中の割合で見ても、少ない存在となった専業主婦ですが、仕事をしていないにもかかわらず働いた人間と同じ扱いを受ける第3号被保険者を廃止し、専業主婦でいることが困難な社会になってしまって良いのでしょうか。

専業主婦の是非について、育児の専門家である大阪教育大学教育学部教授・小崎恭弘先生に、意見をうかがいました。

小崎先生「どのように夫婦や家族を作り、またどのように働き、家庭生活を営むのかは、個人や夫婦や家族で自由に考えれば良いものです。別の言い方をすれば、どのような生き方を望んでいても、状況や環境により必ずしも自分の思い通りの生き方ができるわけでもありません。社会の状況や風潮がどうであれ、最終的には自らが決めるものだと考えます。


それを前提として、専業主婦はとても素敵な選択肢だと思います。そもそも、近年議論になっている“女性の社会での活躍のあり方”の『活躍』は、すべて『お金になる仕事』というような非常に単純な形で話が進んでしまい、働いていない専業主婦はダメ、という極端な形が見られているのです。


この社会は『仕事』のみで成り立っているわけではありません。仕事自体を否定はしませんが、それ以外のものに価値がないと切り捨てる姿勢は見直したいもの。家庭や地域との関わりを大切にして、そこに積極的な関わりを中心とした営みは人としての基本です。

また、専業主婦の中には病気や介護などが必要となり働けない人もいますが、それはやむを得ないこと。一概に仕事をしている人と同じ扱いを受けるべきではない、とするのは違うのではないかと思います。そのような、ケアが必要な人を支える生き方も、人の営みの大きなあり方です」

専業主婦否定…その根底にあるものとは?

ではなぜ近年、専業主婦の是非を問う論争がたびたびSNSで繰り広げられるようになったのでしょうか。

小崎先生「専業主婦を否定する価値観の根底には、経済性と効率が関わっています。私たちがひたすらそれらを追い求めてきた結果、いろいろなことを得られました。しかしその一方で、失うものも大きかったのではないでしょうか。

本来、専業主婦も含めて多様な生き方や価値観を大切にできる社会であってほしいと思っています。そしてまた働きたいと思う人が働ける社会、同時に仕事以外の生き方を求めても、それが認められる社会のほうが、多くの人にとって生きやすいのではないでしょうか。もっとやわらかな社会であってほしいと願います」

働く女性が増えている昨今ですが、前述のアンケートであったように子どもを預ける場所がないことや、家事・育児の負担が女性に偏りがちであること、男女間の賃金格差やキャリアアップのしづらさなどは、いまだに社会問題として根強く残っており、女性が働きやすい環境はまだ整っていないと言えるでしょう。それゆえ、働きたくても働けない人がいることも事実です。

今回議論になっていた専業主婦の是非においては、否定的に捉える人は一定数いるものの、思った以上に肯定的にその存在を認める人がいるように感じました。

働き手不足の社会を支え、働くママのロールモデルとして働き方を開拓するという役割を担うワーキングマザーがいる一方で、専業主婦は学校や地域に根付いて子どもたちの生活を見守り、下支えしていると言えるでしょう。また、子どもの日常に大人がいるという安心感を与えていると考える人もいました。

もし、第3号被保険者が廃止になったら、専業主婦でいたい人、専業主婦でいるしかない人が苦労することは明白です。

家族の在り方はそれぞれであり、自由。ワーキングマザーと専業主婦を比べても、そこに優劣はありません。どちらを選んでも、それぞれの事情や判断があってのこと。優か劣かで判断せず、それぞれの役割があると受け入れられる社会になるといいですね。


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。

ベビーカレンダー編集部

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