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誰かと一緒に過ごす時間を求めていた、あの秋の選択を後悔はしてない

  • 2024.11.20

「最近、肌寒くなってきたね。風邪ひいていない?」

新卒時代の同期と、残業続きだった金曜日の夜。久々に会社の近くのテラス席で、一緒にディナーをした。

会社からお店までは歩いて10分弱。オフィスビルをでて、都心の秋の夜の川沿いを歩く。
もうハローウィンも終わったようで、いよいよこれから師走を迎える、そんな準備期間のような閑静な季節だ。
歩いていると、時折、ツンと鼻をつくような冷たい空気が流れてきて、でもお店に向かう途中の道の空は、いつになく澄み渡っている。

◎ ◎

「最近、夜はこんな感じだから、着る服に迷っているんだよね。すっかり、寒くなったね……」

そんな仲良しの同期だったので、女子2人で、腕を組みながら、”仲良し”を誰にアピールするわけでもなく、ただ、2人で戦闘モードだったお互いの期間を癒し褒め称え合おうと、たまに品川の川沿いのお店にむかい、濃紺の夜道を歩いていく。

品川にある、こじんまりとしたイタリアンレストランの近くには、この時期だけ、金木犀が咲いている。金曜日の夜、静かな品川駅の裏道で、いっぱいの金木犀の香りが、私たちを包む。
普段、働いて稼いだお金は、DiorだのYSLだの高級化粧品に費やし、美も自己肯定感もなんとか保って働いているので、自然の金木犀の香りとは、そういえば無縁だったなと気付かされる。

私は、この仲良しの同期と2人でお店まで一緒に他愛のない話をしながら歩いていく、温かくまったりした時間が本当に好きだし、金木犀のほのかな香りも、澄み切った冬の夜空も、すっかり季節の変わり目を感じさせるキリッと冷たい風も好きだ。

◎ ◎

ハロウィンとクリスマスの間——。

この時期の、街の静けさ、仕事のリセット期間に、大事な人とほっこり、丁寧な時間を過ごすのも、至福だ。仕事は、こんな素敵な同期が身近にいるおかげで、なんとか持ちこたえ、前に進めそうだ。

今度は、1人ではなく、恋人をつくるなど、プライベートの方でももう一歩、関係を前に進めたいと心底思うようになった。

「私は、誰かを欲している」「私は、この先、長い将来をみすえて一緒に人生や2人の生活を作り上げていける相手を探している」

同期と、冷たい風が吹くテラス席でディナーをしている時、そんな風に思うようになった。

◎ ◎

それから、11月になり、別の土日には、半年前から気になっていた相手(男性)をランチに誘ってみることにした。
会社のイベントで出会い、半年ぶりに繋がっていたメッセンジャーで連絡をすると、向こうは私を覚えていたのかわからないが、意外とすんなり会う日が決まった。
彼は、おそらく私のことを覚えていないし、きっとランチの予定も乗り気ではなかったと思うが、11月初旬のこれまた澄み渡った晴れ空の日に、一緒にランチをすることになった。

その彼とは、初めて付き合い、もう別れてしまったので、甘酸っぱく辛い思い出もあるが、新卒だった当時の私は、とにかく誰かと一緒に過ごすことを求めていた。
慣れない仕事で365日17時間、グローバルな労働環境の中で毎日嫌なことや理不尽が起こり続けても、そんな不都合な日常の連続の中にいても、ほんのひと時でも、慰めたり、手を差し伸べてくれる、そんな相手や言葉や、一瞬に確かに救われていた。

だから、私は、あの秋の選択や、共に過ごした時間を後悔はしていない。

■満島のプロフィール
元大手企業の営業職OL。いまは隠居して営業職。旅行好き。

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