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「水すら飲めない…」ようやくつわりが終わったと思ったら、坐骨神経痛で歩けない!? 壮絶すぎる妊娠コミックエッセイ

  • 2024.11.19

『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』(松本ぽんかん/KADOKAWA)は、著者自身が体験した壮絶なつわりの苦しみをリアルに描いたコミックエッセイだ。

つわりは個人差が大きく、経験しない人にはそのつらさがなかなか伝わりにくい。多くの場合、一定の時期を過ぎれば改善する症状とはいえ、いつ終わるか分からない吐き気に襲われ、それまでの生活が一変してしまうことも。さらに人によっては、吐き気や倦怠感、食欲不振などあらゆる苦痛が延々と続く日々にすっかり気がふさぎ、挙句には妊娠そのものが大きなトラウマになってしまうこともあるという。

著者の松本さんも、重いつわりの症状に悩まされたひとりだった。食べられるものがどんどんなくなり、しまいには水さえ吐いてしまうほどに。しかし、“つわりごとき”で病院にかかるわけにはいかない……。自分にそう言い聞かせ、自宅でひとり耐え続けていたものの、ついにその様子を見かねたパートナーに引きずられるようにして病院へ向かう。そこで初めて、自身の症状がつわりが重症化した「妊娠悪阻(にんしんおそ)」であったことを知ったのだった。

つわりが重い妊婦さんは、出産への不安に加え、妊娠初期から心身ともに大きな負担を抱えることになる。その中には、生まれる前から弱音を吐くなんて甘えではないのか、母親失格ではないのかと自分を責め、深く思い悩んでしまう人も少なくない。著者がパートナーの前でつい口にしてしまった「もう、妊娠やめたい」のひと言が、彼女たちの苦しさをきわめて端的に表しているように思う。

私たちには、他人の物理的な苦痛を引き受けることはできない。それでも、苦しみを誰かが正しく理解してくれるだけで、心が少しだけ軽くなることはあるだろう。特につわりのように個人差が大きい症状ほど、共感や理解がとても支えになるものだ。

本書では、妊娠悪阻をメインに妊娠から出産までの過程が事細かに描かれる。出産の予定がある人はもちろん、そうでない人も、本書を読んで得られるものはきっとたくさんあるだろう。人ひとりが新しい命を生み出す行為は、おそらく私たちが認識している以上に奇跡的で、尊くて、奥深い。そのことをあらためて実感させてくれる作品だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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