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ワンオペ住職はつらいよ。突然「あなたは今日から住職です」と言い渡された跡取り息子に襲いかかる災難とは

  • 2024.11.19

寺住職が普段どのような仕事をしているか、皆さんはご存じだろうか。早朝の読経に境内の清掃、葬儀や法事の執行、お墓参りの対応から檀家の相談対応まで、その業務は多岐にわたる。それらすべてをもし、新米住職がたったひとりで担わなければならないとしたら――。

『極楽寺ひねもす日記』(宮本福助/KADOKAWA)は、お寺に関わる人々のにぎやかな日常を描いたほのぼのコメディだ。

主人公・仁海は、極楽寺の跡取り息子。住職の父が「絵本作家になりたい」という夢を追い、ある日突然姿を消してしまう。父を探しに行くという母もまた、仁海にこう言い残して家を出るのだった。

「あなたは今日から住職です。ひとりでお寺の仕事をこなすように――」。

主人公・仁海はじつに素直なキャラクターだ。両親が揃って家出をしたというのに、不満も愚痴もほとんど口にせず粛々と業務にあたる。その実直さは、たしかにお寺の跡取りとしてふさわしい。しかしながら、寺仕事のワンオペはそう甘くはないのだ。

元組長の葬式に集まった極道たちの圧に震え、夫の墓前に鉢合わせた愛人と本妻のバトルにすくみ、その合間にも跡取り問題に頭を悩ませる日々。もはや新米住職の手に負えない珍トラブルは、枚挙にいとまがない。

襲い来るさまざまな災難に翻弄される仁海だが、どんなときも思わぬ方向から助けが入ったり、あるいは彼自身の機転でなんとなく乗り切れてしまったりする。彼を中心とした豊かな人間関係は、本作の見どころのひとつだ。お寺の経営には経験や知識だけでなく人徳や求心力が必要なのだと、実感させられる。

現在、多くの寺院が存続の危機に直面している。若手住職や修行者の減少、檀家離れなどその理由はさまざま。解決には、伝統を守りながらも時代に合わせた新しい取り組みや意識の変化が必要なはずだ。本作で主人公・仁海が檀家の確保のために行った葬式・入棺の体験イベントや葬儀屋とのコラボ企画は案外、そうした問題を解決するヒントにもなり得るかもしれない。

日常的にお寺仕事に携わっている人はもちろん、お寺の暮らしや業界の裏事情に興味のある人は必見の一冊だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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