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「記憶して生きていくしかない」死産を経験した母がたどり着いた覚悟【漫画家インタビュー】

  • 2024.11.18

念願の2人目の妊娠だったのに、あんなことになるなんて――。日常の出来事や気づきを描いた「日常観察マンガ」が人気の桜木きぬさん(@kinumanga)は、長男と夫の3人暮らし。2人目を考えてから数年後に妊娠がわかり喜んだのも束の間、医師から染色体異常の可能性があると伝えられる。過去に流産した経験から、子どもを失うつらさを知っていたきぬさんは、一度は出産を決意するが……。 母の葛藤と命の輝きをリアルに描いた『わたしが選んだ死産の話』(医療法人財団順和会山王病院病院長/国際医療福祉大学グループ産婦人科統括教授・藤井知行氏監修)は、きぬさんが自身の体験をもとに描いたエッセイ漫画だ。最終回の今回は、産後に泣きながら生活していたきぬさんに対して、長男・ウタくんが励ましの言葉をかける。著者のきぬさんに、2人目の子を死産した当時の心境や本作について話を聞いた。

世に出すことで「死産の経験を客観的に見られるように」

――ウタくんから「泣くな!」と声をかけられたシーンが印象的でした。この言葉をかけられて、どんなことを感じましたか?

怒られるとは思ってなかったので、びっくりしました。でも、ウタの言うことが正しいなと思いました。大丈夫と言った親が泣いてばかりいたので、子どもはさぞかし不安だったと思います。反省しました。

――桜木さんの人生は続いているなか、マンガとして一旦の結末を描くことは難しかったと思います。さまざまな選択肢があるなかで、この結末に決めた経緯をお聞かせください。

あまりキレイにまとめるとウソっぽい気がして、どうしようかと少し悩みました。いい思い出も、つらい思い出も、消化は全然できていません。しかし、起きてしまった出来事として記憶して生きていくしかないなぁと思っていたので、その気持ち通りに素直に描きました。

――描き終えたことで、この数カ月間についての思いや捉え方は変わりましたか?

この作品を監修してくださった、山王病院病院長の藤井知行先生のくださるコメントが、妊婦さんたちを大切に思う目線であふれていて。「もしも、このマンガと同じ立場になった人が読んだときに、その人が傷つかないためにはこうしたらいいんじゃないか」というような言葉をもらい、この死産の経験を客観的に見られるようになりました。 自分の経験は自分だけのものですが、それを世の中に出すとなると社会的な意味合いを持つんだな、と。そうなったときに、自分の作品が世の中を悪くするようなもの、誰かを傷つけるようなものではありたくなかったです。 今までは自分がつらいだけの思い出でしたが、この話を読んだ人にどうなってほしいんだろう、と掘り下げて考えられた。いい意味でひとごとになったのでしょうか。マンガにしたことで手放せた感覚です。 命について静かに問いを投げかけてくれる『わたしが選んだ死産の話』。きぬさんがどのように死産という選択に至り、その事実と向き合ったのかをご覧いただきたい。

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