疲れやだるさ、頭痛、不眠、イライラ、肩こり、冷え性など、様ざまな体の不調の原因になっていると考えられる「食いしばり・歯ぎしり」。依存性のある不健康なストレス解消法なので、健康的に幸せホルモンを出せるものに変えるべし!
【食いしばりは不健康な多幸感をもたらす】
辛い時、痛い時、私たちはとっさに歯を食いしばります。歯を食いしばることで、βエンドルフィンという物質を放出し、ストレスや痛みを感じる信号をすぐに遮断することができるからです。さらにβエンドルフィンはドーパミンの放出も促すため、幸福感ももたらします。実は、甘いものやアルコール、高脂質の食事でもβエンドルフィンが分泌されるのですが、その幸福感を得たいがために依存してしまうのです。つまりは、〝食いしばることでストレスが軽減〞➡依存する、というループに陥っていることを自覚しましょう。健康的に幸せホルモンを分泌させることを心がけて!
【脳内の幸せホルモンを理想的に分泌させる方法】
[幸せホルモン・セロトニンを出す]
セロトニンは、不安感をやわらげて精神を安定させる働きがあります。分泌が不足すると、イライラや不安が募り、衝動的で攻撃的になり、うつ病を引き起こすことがあります。また、睡眠を導く「メラトニン」の材料としても重要な役割を果たします。セロトニンは、心と体の健康に不可欠な要素です。昼夜逆転の生活や不規則な食習慣などが生活に乱れをもたらし、セロトニン不足を招く可能性があります。セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンの過剰な働きを抑制し、ストレスに対して安定した感情を維持する役割を果たします。
方法1:朝の陽光を浴びる
太陽の光を浴びることで、脳のセロトニン分泌が促進されます。毎日、日光浴をする習慣を身につけることが大切です。
方法2:リズミカルな運動
ウォーキングやサイクリングなどの一定のリズムで同様の動きをくり返すリズミカルな運動は、約5分でセロトニン分泌を活性化し、20~30分でピークに達します。したがって20~30分のリズム運動が理想的です。ガムをリズムよくかむことで同様のよい効果が得られるといわれています。
方法3:バランスの取れた食事
トリプトファンが豊富に含まれる食品をとることが重要です。主な食品には大豆製品(豆腐、納豆、みそ、しょうゆ)、肉、魚、乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルト)、穀類(米など)があります。さらに、きのこ類、ごま、ピーナッツ、卵、バナナにも含まれています。
[愛情ホルモン・オキシトシンを出す]
オキシトシンは、分娩時に子宮収縮を促進し、乳腺を刺激して母乳分泌を促す重要な役割を果たします。オキシトシンの分泌により、脳は過剰なストレス反応から解放され、平常な状態に戻ることで気分が安定します。さらに、オキシトシンの豊富な分泌はセロトニンの放出も増加させ、お互いに協力し合ってストレスを軽減する相乗効果があります。愛情や人とのつながりがあることで精神が安定するのはこのためです。
方法1:コミュニケーションを図る
見つめ合う、家族の団らん、楽しく食事をするなど、相手と心を通わせるコミュニケーションがオキシトシンの分泌を促進します。また、感動したり人に優しくしたりすることも分泌の促進につながります。これらの方法を通じて、愛情やコミュニケーションを大切にすることが、オキシトシンの増加に寄与し、精神の安定を促進します。
方法2:スキンシップを図る
家族、恋人、友人、ペットとのスキンシップやマッサージ、ハグなど、身体的な触れ合いを増やすことでオキシトシンの分泌が促進されます。
【教えてくれたのは】
順天堂大学医学部教授 小林弘幸先生
1960年生まれ。順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上の指導にかかわる。主な著書に『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版)、『自律神経を整えるぬり絵』『聞くだけで自律神経が整うCDブック』『医者が考案した「長生きみそ汁」』(以上、アスコム)、『自律神経にいいこと超大全』(宝島社)など、ベストセラー多数。
モウリデンタルクリニック 毛利啓銘先生
1971年生まれ。歯科医師。モウリデンタルクリニック院長。歯科治療の矛盾や誤った常識を明確に説明し、基礎医学に基づいた論理的な治療を提供している。形骸的な治療ではなく、予知性が高く、治療後の予防管理を重視した治療を行っている。歯の根本的な問題を解決するため、約15年前から患者の食事や生活習慣の改善指導も行う。
『自律神経を整えれば、「食いしばり・歯ぎしり」は解決する』
自覚はなくても実は多くの人に見られる「食いしばり・歯ぎしり」。歯に大ダメージを与えているのはもちろんのこと、疲れやだるさ、頭痛、不眠、イライラ、肩こり、冷え性など、さまざまな体の不調の原因になっていると考えられます。自律神経が乱れているから「食いしばり・歯ぎしり」が起き、「食いしばり・歯ぎしり」がさらに自律神経を乱す悪循環。今日から簡単にできる「食いしばり・歯ぎしり」の治し方を、自律神経の名医・小林弘幸先生と、歯科医師の毛利啓銘先生が教えてくれます。
1650円(宝島社)
イラスト=ヤマサキミノリ ※GLOW2024年11月号より