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文京区「鳩山会館」でバラや建築を堪能! 政治家・鳩山一郎氏が築いた大正の邸宅へ

  • 2024.11.29

第52~54代内閣総理大臣を務めた鳩山一郎氏により建てられた、東京・文京区にある「鳩山会館(はとやまかいかん)」。かつては鳩山一族が実際に暮らしていましたが、老朽化により現在では修復され、記念館として一般公開されています。「鳩山会館」が建てられたのは、関東大震災の翌年である大正13年(1924)。建築家・岡田信一郎氏により建てられた、大正ロマンの文化を感じられる建築がみどころです。中庭には90種類以上のバラが植えられ、5月や11月の開花時期には美しいバラを愛でに、多くの人が訪れます。

音羽通り沿いに突如たたずむ大正建築の大邸宅

高台にある邸宅の入り口
高台にある邸宅の入り口

「鳩山会館」が位置するのは、東京メトロ有楽町線江戸川橋駅と護国寺駅のちょうど中間あたり。音羽通り沿いにある正門を入り、カーブした坂道を上った少し高台に邸宅があります。設計は、鳩山一郎氏のかつての友人であった岡田信一郎氏。岡田氏は大正・昭和初期を代表する建築家として知られていました。約2000坪と広大な敷地には、当時では珍しかった鉄筋コンクリート造りの洋館が建てられています。

大正13年(1924)に建てられて以来、歴代の鳩山家の人々が住み続けてきましたが、時代とともに老朽化し、一時は取り壊しが検討されたこともあったそうです。しかし、一郎氏が総理大臣だった時代に重要な政治の舞台となったことや建築物としての価値も高いことから、一郎氏の娘である安子氏が保存することを決断。1995年に修復工事が行われ、1996年から一般公開されるようになりました。

るるぶ&more.編集部

玄関を正面に見て、左奥にあるヒマラヤスギの姿も圧巻です。「鳩山会館」を建築する前からこの場所にあったという樹齢100年を超えた巨木を見上げていると、都会の真ん中にいることを思わず忘れて、その雰囲気に酔いしれてしまいます。

るるぶ&more.編集部

玄関の上でこちらを見下ろす牡鹿のブロンズは、じつはレプリカだそう。2005年まで設置されていたという石膏のものは、表面の銅が酸性雨で溶けて流れ出し壁面が黒くなってしまったため、取り外されて館内に展示されています。外観だけでも、ひとつひとつをピックアップして観察してみると、より「鳩山会館」への理解が深まり、興味深いですよ。

90種類以上! さまざまなバラの表情を楽しむ

10月に撮影
写真は10月に撮影

まずは、バラが咲き誇る中庭へ。中庭は丁寧に手入れされ、90種160株ものバラが植えられています。中庭へは、玄関を抜けてサンルームのベランダより入ります。

バラの開花時期は春と秋で、毎年5月と11月がそのピーク。建物が完成した100年前に植えられたものも多く古木であるため、満開に咲き誇るというよりも、品種それぞれのペースでゆっくりと美しい花を見せてくれるそう。また、ここ数年の猛暑や豪雨で、なかなかバラが咲くのも難しい環境にあるため、バラにまつわる大々的なイベントが開催されることは最近ではないそう。ですが、開花時期には多くの人がその美しい姿をひと目見ようと訪れます。

満開のバラを見ることはできなくても「クレオパトラ」「ロイヤル・プリンセス」「プリンセス・ミチコ」……など、広々としたイギリス風の庭園に植えられたバラの品種名を見るだけでも楽しめます。周辺には高い建物がないため、空を直に仰げるのも気持ちがいいですよ。

中庭から館を見ると屋根にミミズクの姿が。これは鳩山家の理念である「友愛」精神の象徴で、館の至る所に配置されているそう
中庭から館を見ると屋根にミミズクの姿が。これは鳩山家の理念である「友愛」精神の象徴で、館の至る所に配置されているそう
るるぶ&more.編集部

広々とした庭園には、一郎氏が首相時代に締結された「日ソ共同宣言」を記念して寄贈された、一郎氏の像があります。錦鯉が泳ぐ庭内の池の周りには、鳩山一郎氏の両親である鳩山和夫氏と春子氏の像も見られました。

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早速、ひとつひとつの品種を愛でてみましょう。こちらは、鳩山一郎氏が好んだという「友愛」という品種。友愛とは一郎氏が唱えた政治理念で、人間性の尊重を基本として、お互いの立場を理解し人類愛に根ざす助け合いの精神のこと。2008年、このバラこそが鳩山会館の庭園にふさわしいと、一郎と親交のあったナガセケンコー株式会社の代表取締役・長瀬ニ郎氏により寄贈されました。

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こちらも、一郎氏が好んだという「ピース」という品種。クリームイエローの花びらの先にほんのりピンクがかかっている姿が、なんともかわいらしい。20世紀を代表する殿堂入りした名花で、戦後の国際平和の象徴として世界に広まりました。

るるぶ&more.編集部

こちらは、「マダムミユキ」という品種で、鳩山由紀夫氏の妻である鳩山幸(はとやまみゆき)氏の名前を冠したもの。

近くに説明書きの看板が立てられているため背景を学びながら愛でてみよう
近くに説明書きの看板が立てられているため背景を学びながら愛でてみよう
「バレンシア」という品種。ベージュに近いオレンジ色が美しい
「バレンシア」という品種。ベージュに近いオレンジ色が美しい
「サムライ」という品種。日本の「サムライスピリット」に敬意を表して命名されたとか
「サムライ」という品種。日本の「サムライスピリット」に敬意を表して命名されたとか

取材を行った10月は、今にも咲きそうなつぼみもたくさん見られました。管理が難しいバラは、こういった美しいつぼみを維持することも大変だそうで、ほかのつぼみに養分を取られないように、周りにあるつぼみを剪定するなどして大事に育てるそうです。

こちらは「フラミンゴ」という品種で、薄いピンクの花を咲かせます。こうして一つの品種にフォーカスを当てて、その生長具合を楽しみに訪れるというファンもいるそうですよ。

るるぶ&more.編集部

庭園の奥へと進むと、離れがあります。普段は一般公開されていないですが、2024年11月末日までは建立100周年記念で一般開放されています。館や中庭の雰囲気とはうって変わって、こちらは和風の平屋造りの建築となっています。


館内の映え空間で大正ロマンの“粋”を感じる

入り口の照明が壁に落とす影すらも芸術だ
入り口の照明が壁に落とす影すらも芸術だ

次は館内へ。「鳩山会館」は、地下1階~地上3階の建物ですが、一般公開されているのは1階と2階部分のみ。入り口で入場料を支払い、館内の見学をすることができます。

るるぶ&more.編集部

「鳩山会館」を訪れたらぜひともこの目で見たいのが、美しいステンドグラスの数々。館内のステンドグラスは、日本を代表する作家である小川三知(おがわさんち)氏によるもの。小川氏は「ティファニー」でステンドグラスを学び、大正から昭和にかけ日本にアメリカ流のステンドグラスを広めました。
なかでも、2階へと上がる階段の踊り場部分のステンドグラスはお見事。法隆寺の五重塔の上を鳩が舞う絵柄で、山々の緑や塔の朱色の部分が立体的に見えるように彩られています。

鳩山一郎氏の孫にあたる長男の友紀夫氏(鳩山由紀夫)と次男の邦夫氏がまだ幼いころ、踊り場でキャッチボールをしてステンドグラスを割ってしまったという、微笑ましいエピソードも残っているそうです。

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2階の大広間は、現在でも各種パーティーで利用されています。ここは、もともとは寝室だった場所で、修復の際に大広間へと改装されました。こんなに広いスペースで実際に生活していたことを想像すると、その華やかな生活ぶりが見てとれます。一面の窓からは自然光が降り注ぎ、眼下にはバラの咲く中庭を見下ろすことができます。

2階には、一郎氏が書斎として使用していた「鳩山一郎記念室」、一郎氏の妻・鳩山薫氏が使用していた「鳩山薫記念室」、一郎の長男で元外務大臣、元大蔵事務次官・鳩山威一郎(はとやまいいちろう)氏が使用していた「鳩山威一郎記念室」があります。これらの部屋では、鳩山家歴代の愛用品や記念品を実際に見ることができます。見学可ではありますが、撮影は不可なのでご注意を。

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1階には、食堂やサンルーム、応接室があります。こちらは「食堂」。食器棚に、当時鳩山家で実際に使われていたという、「バカラ」などの高級な器が展示されています。

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食堂を出たところには、自然光がふんだんに降り注ぐ英国風のサンルームがあります。カーテンを開けると中庭を見渡すことができ、バラが咲き誇る季節は最高。現在では自販機が設置され、椅子に座ってひと休みすることもできます。

ふと足もとに目をやると、かわいいタイルが。ディテールまで美しい
ふと足もとに目をやると、かわいいタイルが。ディテールまで美しい
るるぶ&more.編集部

食堂と隣り合わせているのが、「第2応接室」。こちらも鳩山家が暮らしている際に、実際に応接間として使われていた空間です。18世紀後半にイギリスの建築家により確立された「アダム様式」がふんだんに用いられた、豪華絢爛さ。一郎氏が首相を務めていた当時は、こちらの部屋でたくさんの取り決めが行われ、重要な政治の舞台になりました。一番奥の白い椅子が、一郎氏の席であった椅子。老朽化により実際に座ることはできないので、眺めつつ時代の息吹を感じてみてください。

部屋からサンルームの上にも、ステンドグラスが(←「部屋からサンルームの上」というのが分かりづらく…。「第1応接室からサンルームに続く扉の上にもステンドグラスがある」ということ?別の説明・表現に言いかえ可能でしょうか)
第2応接室からサンルームに続く扉の上にも日本の欄間をイメージしたステンドグラスがある
敷かれているのは、中国の秦王朝の様子を描いたという江戸時代のじゅうたん
敷かれている手織りのじゅうたんは、清朝末期に中国で作られた支那段通
るるぶ&more.編集部

こちらは「第1応接室」。第2応接室と隣り合わせにあります。テレビからは、鳩山家の政治家としての歩みや鳩山会館の歴史を紹介する映像が流されています。

るるぶ&more.編集部

この部屋の奥にも紋章がデザインされた素敵なステンドグラスを発見。赤の部分に3匹の鳩の姿が描かれているのを見ることができます。色が付いていない部分からは、外の木の緑が映し出され、時間や季節によって移り変わる景色を楽しめるのもいいですね。

テレビの撮影などでも多く使用されるだけあり、どこを切り撮っても「映え」な景色が広がる「鳩山会館」。写真撮影が禁止されている場所以外でのスマホなどでの簡易撮影はOKですが(ただし人物の写り込みはNG)、写真撮影ばかりに気を取られないようにしたいですね。大正の時代に思いを馳せながら、建築美を十分に堪能しましょう。さまざまな品種の美しいバラを堪能できる、開花時期に訪れるのもおすすめですよ。

■鳩山会館(はとやまかいかん)
住所:東京都文京区音羽1-7-1
TEL:03-5976-2800
営業時間:10~16時(※最終入館は15時半30分)
定休日:月曜(※祝日は会館、翌日に休館。1・2・8月は休館)
料金:入館料 一般600円、学生400円、小・中学生300円


Text:松崎愛香
Photo:yoko

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