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世界的に不安定な政治で増す気候不安。気候変動と持続可能に向き合うための3つの方法を紹介

  • 2024.11.18
Portrait of girl embracing tree

気候不安とは、年々深刻化し環境や人々、生き物の暮らしに影響を及ぼしている気候変動に対し、不安や恐れ、悲しみ、怒り、さらに無力感や罪悪感などの心理的なストレスを慢性的に抱えている状態だ。特に気候変動を含めた環境問題の実情に向き合うほど、その不安は大きくなる傾向にある。

ドナルド・トランプが次期大統領として再選したことも気候不安を助長しかねない。第一次トランプ大統領政権下で、米国は国際条約であるパリ協定から離脱し、環境保護法や規制を撤廃。今回の選挙でも、化石燃料企業から多額の支援金を受け取っており、次の在任期間に向けてその影響を巡る懸念がますます高まっている。

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では、私たちはどのように気候不安と対峙しながら、持続可能な形で運動を続けていけるのだろうか。気候変動の本質的な解決に向かうため、メディアや市民、企業やあらゆるステークホルダーが共創関係を築く架け橋となり、メディアと社会を支えるための活動を行う一般社団法人「Media is Hope」のイベントに登壇した、モデルで活動家の小野りりあん、アーティビスト黒部睦、気候不安にまつわる研究を行う吉田政美、そして今回の司会でMedia is Hopeのベイカー恵利沙。普段から気候変動の解決のための活動に尽力する4名が、気候不安との向き合い方について語った。

気候変動と生涯向き合い続けるための基盤づくり

最初に、気候不安の研究を長年続ける吉田が、その詳細を解説。「欧米では医学やメディアにおいても頻繁に取り上げられている気候不安。日本で耳にする場面はそう多くないが、アメリカ心理学会は、アメリカ人の3分の2以上が気候変動による希望や不安を経験していると報告している」という。

調査結果によると、日本では「気候変動がもたらす感情」として、72.6%が不安と回答。一方で、喪失感や絶望感、怒りなどといったより激しい感情や、罪悪感や恥ずかしさなどの自責の感情が低い特徴がある。

さらに、「ほかの人と気候変動について話さない」割合が41.6%、「気候変動を心配していない」割合が14.6%と、調査対象国のなかで最も高い。漠然とした不安を抱えているものの、それについて対話したり知識を交換する機会がない人が一定数存在すると同時に、全く懸念を抱いていない層も多いという結果だ。そのギャップによって、さらに不安が増幅されることもあるかもしれない。

小野は気候不安に関する自身の経験を、「2019年から3年ほどは、世界各地で運動を起こす若者たちからパワーをもらい、生きている時間をすべて使って気候変動のために動いていました。でも、その後バーンアウト状態になったんです」と語る。「大切なのは喜び、悲しみ、怒りを共有できる仲間を見つけること。活動の有無にかかわらず罪悪感を感じずに生活し、自分が大事だという感覚を手に入れて楽になりました。今では、それが持続可能な在り方なのではと思い、そんな背景もソーシャルメディアで共有するようにしています」と話す。

「気候変動に向き合い活動するりりあんさんが『自分を大事にしている』と言ってくれたことで、私自身もすごく楽になったところがありました」とベイカー。それに対して小野は、「気候変動は残念ながらどんどん悪化していて、生涯向き合わなければいけない状況。気候危機は自分が生きている間ずっと存在するものです。だからこそ基盤づくりをすることも必要」と、セルフケアの重要性を呼びかけた。

気候不安の解消に役立つ3つの方法

黒部は調査結果に触れ、「日本では『自責』を感じている人が少ない、というのが意外でした。自然災害も多く、自己責任論的な価値観が強い日本で、なぜ気候変動を自分のせいと思わないのだろう」と疑問を投げかけた。続けて「もしかすると、“気候変動に責任を感じて変化を起こそう”と思うのではなく、“もっと働いて災害被害を受けないような家に住もう”というように、不安を向ける先を見誤っているのでは」と分析。

「一度見誤った先に不安を向け始めると、そこから抜け出すことは難しい。やはりもっと気候変動政策とその周知が進んでいたら、どこに問題と可能性があって何ができるのかを思い付ける。不安を政治に向けて声を上げる方に進めるはず」と現状の課題を指摘した。そして黒部自身は気候不安について、「政治と社会を変えれば、私の生活もいい方に向かう。そして一人ひとりの行動が影響力を持つんだ! という考えを持つことで、不安を解消しながら活動を続けています」と、実体験を語る。

ここで吉田がこれまでの研究から、気候不安と向き合う上で役立つ3つのティップスを教えてくれた。

1つ目が、「モヤモヤの言語化」だ。特に日本に多い、“漠然とした不安”を解消するのに効果的だそう。不安な感情に溺れているとき、紙にそれを記して言語化することで、不安と距離を置いて眺めることができる。そうすると解決方法が見えてきたり、頭がスッキリするという。

2つ目が「チェックリストの作成」、自身がどの程度心を消耗しているのかを可視化するための方法だ。ゲームのキャラクターのように残りのHP(※Hit Pointの略で、主にゲームにおけるキャラクターの生命力やスタミナを表す指標)が認識できれば、気候不安から抜け出しやすくなることから、「これが起きたら私の心は消耗している」という事項をリストアップしておくのだ。例えば、お風呂が面倒になった、寝付けない、何が食べたいかわからない、爪を噛むようになったなど……そのなかでチェックが4つ以上だったら、自分の残HPは10%などとチェックリスト化をしておくことで、不調を未然に防ぐことができる。

3つ目に、「人間関係のマップ作成」を薦める。自身が自己開示できるコミュニティを把握して、誰がどのくらいの距離にいるかを見える化する。心理的な距離・大きさをもとにマップを作成することで、自分は安全なんだという把握と、誰に何を話せるかを理解することができるとのこと。

社会の変化が自分の幸せに繋がっていくという感覚を持つ

当日の登壇者4名。左から、小野りりあん、吉田政美、ベイカー恵利沙、黒部睦。
当日の登壇者4名。左から、小野りりあん、吉田政美、ベイカー恵利沙、黒部睦。

ベイカーは、「自分の心をケアすることと、もっと気候危機解決のために行動しなきゃというせめぎ合いがあると思っていて。特に気候変動に向き合い始めた頃は、自分1人の行動にかかっているという責任感で不安が大きかった覚えがあります。仲間を見つけて、社会の変化に携わっているという感覚を得てから楽になりました」と振り返る。「家の電気を再生可能エネルギーに切り替える、有料化になったビニール袋を買わないなど、まずは社会で起きている変化に乗っかること。そして、社会が変わることが自分の幸せにつながっていくという認識を持つことが重要」と具体的な実践を提案。

小野はこれまで、不安があるから気候変動の解決に向けた行動をするなど、原動力に常に“不安”が含まれてきたという。一方で、それではバーンアウトすることも。「自分がバランスよくできる行動を探っていくこと。例えば、実際に手足を動かすのか、情報発信なのか……。特技を活かして気候変動のためにできることから始められればいいのではと思っています」と、それぞれの特性を発揮し、負担になりづらい形での活動継続を訴えた。

黒部は、「気候変動の解決が自分の暮らしの豊かさに繋がっているという認識があれば、いつでも原点に帰ってくることができます。猛暑など不安が高まるタイミングは、共感を呼んで仲間を増やすことができる機会なのでは」と前向きな姿勢を見せる。続いて吉田は、「とにかく生き続けること。不公正な社会のなかで生き続けることは簡単ではありません。エシカルなものを選びたいけれど値段が高い。収入は増えず生活するだけで精一杯。そんな現実の中でまず生きる。『生き続けることが不公正な社会に対するアンチテーゼ』の言葉を大切にしてる」と締め括った。

Text: Nanami Kobayashi

URL/https://media-is-hope.org/

Photos: Courtesy of Media is Hope Text: Nanami Kobayashi

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