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【ネタバレ】映画『本心』3分でわかるストーリー解説付き!ラストはどうなる?本作の隠された「本心」とは?

  • 2024.11.18

2021年に刊行された平野啓一郎の同名小説「本心」を、『月』(2023)『愛にイナズマ』(2024)の石井裕也がメガホンを取り映画化。主演に池松壮亮を迎え、三吉彩花水上恒司仲野太賀妻夫木聡など豪華キャストが出演する。自由死やAI、VF(バーチャルフィギュア)、人的資源の売り買いなどを現在よりも少し進んだ未来を舞台に、人間の心の形を問い続ける作品となっている。

※以下、ネタバレを含みます。

【ネタバレ】3分でわかる『本心』ストーリー

工場で働く石川朔也(池松壮亮)は、年老いた母親・秋子(田中裕子)と同居中。ある豪雨の日、秋子は増水し荒れた川に流されてしまう。助けようと川に飛び込んだ朔也も昏睡状態に陥り、目を覚ましたのは1年後の病院だった。朔也は急激に技術が発展した世界に愕然とする。秋子は、法改正で可能になった“自由死”を選択したうえで、水難事故で既に他界したことを知る。勤務先の工場はロボット化の影響ですでに閉鎖されており、朔也は友人の岸谷(水上恒司)に紹介され、人的資源の売り買いが手軽に行われる「リアルアバター」の職に就く。

朔也は、仮想空間にリアルな人間を再現できるVF(ヴァーチャルフィギュア)の技術を知り、秋子がなぜ自由死を選んだのか、最後に話したかった大切なこととは何かを聞き出すため、秋子のVFを作ることを決意する。秋子のVFを作るために、秋子の友人である三好彩花(三吉彩花)と接触する朔也。彼女は、朔也が忘れられない女性にそっくりだった。三好が台風の被害で避難所生活をしていることを知った朔也は、三好と共に暮らすことに。朔也は、秋子のVFと三好の3人で生活を始める。

完成した秋子のVFを受け取った朔也は、なんとか秋子のVFから本心を聞き出そうと三好と共に試行錯誤する。徐々に距離を縮めていく朔也と秋子。同時に、朔也がリアルアバターとして働く環境は、クライアントから不当に扱われるなど、脅かされつつあった。朔也は、秋子から自身がレズビアンであり愛した女性がいたこと、精子提供を受けて朔也を妊娠したことを秋子のVFから聞かされ戸惑う。ただ、秋子の本心を聞きたかっただけなのに、こんなこと知りたくなかったと後悔をする。同じ頃、三好の仕事が決まる。出ていくという三好だったが、ぎこちなく共同生活を続ける二人。

変わりない生活を送っていた朔也だが、リアルアバターの仕事で理不尽なクライアントに振り回され、契約を破棄されてしまう。また、朔也はクライアントに唆され、差別発言を繰り返す男性を暴行。朔也には、誰かを守るためという目的があると自身の暴力衝動を抑えられない一面があったのだ。この一連の行動が、暴力行為部分を編集した状態で動画サイトに晒され、朔也はたちまち世界からヒーロー扱いを受けることに。朔也は有名アバターデザイナー・イフィー(仲野太賀)にスカウトされ、専属のリアルアバターになる。

イフィーのおかげで、余裕のある生活を送れるようになる朔也であったが、イフィーは三好が好きだ、結婚したいと、それを取り持ってくれるかと朔也に持ちかける。朔也はそれを承諾し、イフィーのアバターとして三好に告白をする。三好はショックを受け、その場を去ってしまう。三好は朔也を責めるも、朔也の気持ちは変わらない。三好は、イフィーと結婚すると告げ、朔也の元を去る。朔也は、半ば諦めかけていた秋子のVFと改めて向き合い、最後に何を話したかったのかを問う。秋子は朔也を産んでよかった、朔也を愛していると告げる。朔也は秋子の本心に触れ、涙を流したのだった。

AIは人類を幸せにするのか?描かれる未来の歪さ

本作では、AIを筆頭に発展した高度技術に依存した生活をする社会が描かれている。朔也が昏睡状態から目を覚ますと、仕事はロボットに取られており、VRの技術によりリアルアバターがメガネやイヤーピースを付けて体験したことをリアルに体感できるというサービスが生まれていた。朔也は作中で半袖を着用しているシーンが多く、朔也の身につけているメガネには気温37度という表示もある。気候変動により平均気温が上昇し、無闇に外を出歩かなくても済むようにリアルアバターのサービスの需要が高まったことが考えられるだろう。誰かの代わりに出かけることすら、肉体労働の一つになっているのだ。ありえない世界だと言いたいところだが、UberEatsの飲食物の運搬に留まらないサービスと考えれば、現実に生まれてもおかしくないのかもしれない。

はじめは良いクライアントの元で仕事ができていた朔也だが、徐々にクライアントに振り回されるようになる。リアルアバターの仕事は、平均レビューが3.5を下回ると自動で契約を破棄されるシステムとなっており、悪戯でわざと文句をつけられたり、汗臭いなど低い評価を付けられ、クライアントのおもちゃとして振り回される描写はリアルに起きえると想像できる。仮想現実の技術と気候変動への対策が合わさっても便利になるどころか、人間の心をおもちゃにし痛めつけるような状況が生まれてしまっているのだ。

AI技術に関しても同様だ。秋子のVFを作るために朔也が提供したさまざまな個人情報は、すべてAIによって統合され、本物により近い秋子の人格を形成するために使われる。朔也は秋子の笑顔の写真を提供するが、秋子の優しい笑顔はAIの手によって少し暗い表情に修正される。朔也は記憶と違うその表情に戸惑い、技術者の野崎(妻夫木聡)にはカメラの機能により元々表情が矯正されており修正後が本物だと告げられ、朔也は自身の秋子への認識(記憶)を疑い始め、ここでもAIの恐ろしさが垣間見える。

また、VFはすべてデータで管理されている。VFを作成する野崎の娘は、VFのバックドアを見つけ簡単に編集できる場所を見つけたと語る。この設定があることで、作中に登場する秋子のVFが話すことが、どこまで本当なのかが分からなくなる。秋子がレズビアンであり、妊娠するために精子提供を受けたこと、朔也を愛していると言ったことも野崎の娘の手によって編集されたものである可能性だってある。そもそもVFは、心がないと言われている。それでも人は、AIであっても対峙する相手に心を求めてしまう。仮にVFが持つ心は、人の手によって作られたもので、編集できてしまうのだとしても。

この作品では、発展した技術によって幸せとは言えない人間の生活が描かれている。対面で行われるべきこと、守られるべき倫理など、新技術と共に生きる上で大切なことを説く作品になっている。

隠された「本心」とは

朔也が求めていたのは、秋子の本心だ。自分に黙って“自由死”の認可を受けていた秋子が豪雨の日になぜ川にいたのか、本当に自殺しようとしていたのか、生前最後の会話で言っていた話したいこととはなんだったのか。それを朔也は知りたかった。

秋子の本心を知るために秋子のVFを作った朔也は三好と出会い、三好の本心、自身の本心にも向き合うことになる。朔也は三好の好意に触れつつも、自身の過去やイフィーとの関係も踏まえ、なかなか三好に本心を明かせない。三好と咲也を通して、本心を伝え合うことの難しさが表現されている。

物語の最後に明かされる秋子の死の真相。秋子は、可愛がっていた野良猫が川のそばでうずくまっているのを見て、助けようとしており、自ら死を選んだわけではなかったのだ。朔也はもちろん三好も知らない事実は、もちろんVFの言動には反映されない。秋子の死の真相は、VFを通しても知ることはできないままなのだ。

結局のところ人の本心は、新技術をもってしても分からないのだ。そもそも技術の有無など関係なく、人と人が向き合ったとしてもなかなか本心は明かせないものだ。近未来を舞台に人の内面を描いていく本作は、本心を知ることの難しさを描き出している。

※2024年11月15日時点での情報です。

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