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透明化されがちな「元気に生まれなかった出産」。死産を経験した母が、息子に伝えたいこと【漫画家インタビュー】

  • 2024.11.16

念願の2人目の妊娠だったのに、あんなことになるなんて――。日常の出来事や気づきを描いた「日常観察マンガ」が人気の桜木きぬさん(@kinumanga)は、長男と夫の3人暮らし。2人目を考えてから数年後に妊娠がわかり喜んだのも束の間、医師から染色体異常の可能性があると伝えられる。過去に流産した経験から、子どもを失うつらさを知っていたきぬさんは、一度は出産を決意するが……。 母の葛藤と命の輝きをリアルに描いた『わたしが選んだ死産の話』(医療法人財団順和会山王病院病院長/国際医療福祉大学グループ産婦人科統括教授・藤井知行氏監修)は、きぬさんが自身の体験をもとに描いたエッセイ漫画だ。第9話では、死産した子どもを火葬し、きぬさん一家は少しずつ日常へと戻っていく。著者のきぬさんに、2人目の子を死産した当時の心境を聞いた。

透明化されがちな死産や流産

――火葬場で変わり果てた赤ちゃんの姿を見たときにショックを受ける様子が描かれていますが、どのようなことを感じましたか?

仕方がないこととはいえ、我が子が無残な姿になっているのは、やっぱり悲しかったです。水が氷になると少し膨らむように、赤ちゃんを凍らせたら、水分のせいで膨らんでしまったんです。もともとグロテスクな見た目ではあったのですが、これはもう本当にダメだな、という姿かたちになっていました。それを見て、一刻も早く焼いてほしい、と感じました。

――幼稚園児たちの反応は純粋ですが苦しかったと思います。お迎えにいくことは、つらくなかったでしょうか?

子どもたちの無邪気な言葉に腹が立ったりはしませんでしたが、わたしからどう答えたらいいのかわからなくて、悩みました。日本は安定期に入ってから周囲に妊娠を伝える、という風潮もあって、死産や流産という「元気に生まれなかった出産」が透明化されがちですよね。子どもたちも、お母さんが妊娠したのに赤ちゃんが元気に生まれないなんて、想像もできない。大人であっても身近な方の死産というのは難しい局面なので、子どもたちにとっても衝撃的な出来事だったのではないでしょうか。

――お仏壇壇を置くことを決めた経緯を教えてください。

周囲から「思い出してしまうからやめておきなよ」と声はかけられましたが、おそらく仏壇があってもなくても思い出してしまうので、だったら置いたほうがいいだろう、という思いで決めました。我が家にはお墓がないので、どちらにしても骨つぼを自宅で保管するしかない。それだったら、端っこに追いやるよりも、仏壇に置いたほうが収まりはいいかなと思いました。長男にも、亡くなってしまったけどフウのことを大事にしているよ、という親の姿を見せたかったですね。 命について静かに問いを投げかけてくれる『わたしが選んだ死産の話』。きぬさんがどのように死産という選択に至り、その事実と向き合ったのかをご覧いただきたい。

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