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元パラ水泳日本代表・一ノ瀬メイ「家族が『面白いチャレンジだったね』と言ってくれるからこそ、私は前に進める」

  • 2024.11.16

一ノ瀬メイさんは、生まれつき右肘から先がない先天性右前腕欠損を持ちながらも、1歳半で水泳を始め、史上最年少の13歳でアジア大会に出場。2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは8種目に出場し、現在も7種目の日本記録を保持。現役引退後も、スピーカーやモデル、企業とのパートナーシップなど、さまざまな分野で活動の幅を広げ、さらに東京レガシーハーフマラソンには2年連続で出場するなど、挑戦し続ける姿勢が輝いている。そんなメイさんが、常に新しい挑戦へと向かっていけるその原動力とは、どこにあるのだろうか。

(「」内、一ノ瀬メイさん)

「家族が私の挑戦を支えてくれているんです」

「家族は結構面白がってくれるタイプで、初めてハーフマラソンに挑戦する時も『走れるの?』と驚かれたんですが、それでも一緒に面白がって応援してくれるんです。水泳の時もそうでしたし、スピーチコンテストに挑戦した時も、家族はすごく楽しんでくれていました。結果がどうであれ、失敗しても『おもしろいチャレンジだったね』っていう雰囲気で見守ってくれるんです。私もできるだけ失敗を見せたくない気持ちはあるんですが、家族がそうしてポジティブに受け止めてくれるおかげで、失敗を恐れずに挑戦できています」

「母と一緒に二人三脚で歩んできた」

「私が9歳の時、両親が離婚して、それ以来ずっと母と二人三脚で過ごしてきました。だから、私たち家族の形は一般的なものとは少し違うかもしれません。二人だけでやってきたからこそ、時にはすごく仲が良い時期もあれば、逆に距離を置く時期もありました。母は私にとって本当に大きな存在です。私が水泳で競技に取り組んでいる時も、きっと期待はしてくれていたと思いますが、それを表に出さず、私が自分で決めたことに対しては常に自由にやらせてくれました。『やりたければやりなさい』『やめたければやめなさい』と、どんな選択にもプレッシャーをかけずに、ただ見守ってくれるんです』。母のそんな姿勢に支えられているからこそ、自分で考えて行動することを大事にできていて、それが本当にありがたいと感じています」

彼女の言葉ひとつひとつには強い説得力と意志が込められていて、聞く人に自分自身を見つめ直すきっかけを与える。その背景には、これまでの環境の中で培われた、自分で考え、選択する力がつながっているのだろう。

そんな家族の支えもあって、昨年彼女が挑戦したのが「東京レガシーハーフマラソン」

長距離が苦手だったメイさんにとって、去年の初ハーフマラソン出場は大きな挑戦だったという。

「水泳では400メートル自由形が最も長い距離でしたが、それだけは日本記録を持ってなく、私にとっては苦手種目でした。ランニングにも苦手意識があり、練習を始めた頃は1キロからのスタートでした。でも、少しずつ距離が伸びていくにつれて、走ることが面白くなってきたんです。そして、ジョギングはランニングシューズとウェアさえあればどこでもできるため、今のライフスタイルに非常にフィットしていると感じ、自然に習慣化できました」

「さらに、東京レガシーハーフマラソン自体にも強い魅力を感じました。特に印象的だったのは、男女や年齢、エリートランナーから市民ランナー、ビギナー、車椅子レーサーやパラアスリートまで、すべてのランナーが同じコースを走れるインクルーシブな大会であることです。こうした形式の大会は他ではあまり見られず、水泳では経験したことがなかったので、とても新鮮でした。今年もお声がけいただき、オリンピアンとパラリンピアンがそれぞれアンバサダーを務めると聞いて、非常に意義深く感じました。たまたま入江陵介さんも水泳選手で、オリンピックとパラリンピックの両方を代表する立場にとても感動しました」

今年は「参加者とコミュニケーションをとりながら楽しむこと」

Women's Health

初めてのハーフマラソンは「完走すること」が目標だったが、今年は「参加者とコミュニケーションをとりながら楽しむこと」に目標が変わった。

「去年は必死で、周りを見る余裕がありませんでした。ランナーの方や応援してくれる方、ボランティアの方に、感謝の気持ちを伝えられなかったことを後悔していて。今年はアンバサダーとして走るので、できるだけ多くの方とコミュニケーションを取りながら走りたいなと思いました」と語り、今年は沿道の応援やランナー同士のコミュニケーションも存分に楽しんだそう。

Women's Health

「今年はとくにハプニングもなく、前半からペースを上げて順調に走ることができました。去年のような辛さもなく、1回走った経験があることで、20キロを楽しむことができたのは大きな変化でした。スタートから、たくさんの方に『メイちゃん、がんばって!』と声をかけられて、本当に嬉しかったんです。今年はランナーコミュニティの中に入り込めた実感がありました。最後の1キロでは余裕もあったので、立ち止まってハイタッチをして、『あと1キロだよ!』『まだいけるよ!』と声をかけ合いながら走ることができました」と、今年のレースを振り返った。

「アイコンになるのが目標」

「挑戦したいことはたくさんありますが、今自分が目指す最終的な理想像は、アイコンやミューズのような存在になることです。自分が大切にしている価値観や思いを、ただ言葉で発信するだけでなく、自分の行動や存在そのもので示していく人物になりたいんです。そして、自分が本当に幸福で持続可能な状態でその価値観を体現することが重要だと思っています。これまでずっと情熱を注いできたテーマ、ダイバーシティやインクルージョン、サステナビリティをさらに広げ、より多くの人に届けていきたい。ファッション分野でもっと大きな仕事がしたいし、モデルとしてもさらに成長していきたいですね」

この夏、ヨーロッパで2カ月の滞在したなかでも色んな気づきがあったという。

「ヨーロッパのほうが多様性は確かに進んでいるけれど、多様性を意識するキャスティングをするあまり、枠にはめられてしまうことも多いと感じました。一方で、日本での仕事は枠にとらわれず、ただ『メイちゃんと仕事がしたい』『メイちゃんを撮りたい』という純粋な気持ちから始まることが多い。このことに、改めて感謝の気持ちを抱いています。私の今の仕事の仕方は世界でも最前線にあるのかもしれないと感じつつ。だからこそ、この仕事をもっと大きく広げたい。日本だけでなく、グローバルにも出ていきたいです」と新たな挑戦への意欲を語ってくれた。 日本国内だけでなく、グローバルな舞台で活躍することを目指すメイさん。これからも挑戦を続け、ダイバーシティやインクルーシブな価値観を体現する存在として、さらに多くの人に影響を与えていくだろう。

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