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婚活で「自分の名字を捨ててまで」と思った。所有物にはなりたくない

  • 2024.11.16

結婚したら女性が名字を変える。そういう夫婦が多いのかもしれないけれど、多分、私だったら自分の名字を変えることを躊躇してしまう。何か大切なものを失ってしまうような気がするから。きっと、私は結婚している周りの友だちのように、簡単に名字を変えることはできないと思う。

考えるようになったきっかけは、まだ社会人になりたての頃に始めた婚活。自分とはまったく異なる、色んな名字の男性に出会った。魅力的だけど、ちょっと変な名字の人がいた。名字だけで判断するのはよくないかもしれないけれど、「自分の名字を捨ててまで、あれにはなりたくないな」と思ってしまった。このときはまだ、名字を変えることに抵抗はなかった。でも、名字を意識するようになってから色んなことが気になって、現在のように「変えたくない」と思うようになった。

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愛する人と結婚するだけなのに、名字が変わって「○○さん家のお嫁さん(奥さん)」と呼ばれるようになる。普段の会話やドラマのワンシーンでその言葉を聞くと、少し嫌な気持ちになる。私は犬屋敷家で生まれ育ったし、どこにいても誰と結婚しても「犬屋敷みちる」であることに変わりはない。でも、夫の姓になることで、夫側の家族の所有物になってしまうような感じがする。

もう1つ、個人的に嫌なことがある。それは、職場でも呼ばれ方が変わること。今までの名字から、いきなり夫の姓で呼ばれるようになる。呼ぶ側も私も最初は慣れないだろうし、きっと戸惑うに違いない。それから、何より私は珍しい名字(「犬屋敷」よりも珍しいかもしれない)なので、「佐藤」「鈴木」といったよくある名字になった場合、確実に「誰だっけ?」と言われる。

現場に出向している既婚者の同期は、たしか旧姓のままで働いているので、会社に交渉すれば何とかなるかもしれない。でも、親会社の方では夫の姓で呼ばれるし、書類手続きのときも夫の姓+自分の名前を使わなければならない。たとえ結婚しても私は専業主婦になるつもりはないので、夫の姓になってしまったら嫌でも呼ばれるようになるというわけである。

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ずっと結婚している保証があるなら、もしかしたら我慢できるかもしれない。でも、そうとは限らないのが人生。不倫や価値観の不一致などで愛が終わりを迎えたら、人は離婚という形を取る場合がある。夫の姓から元の名字に戻って、職場などのコミュニティでまた呼び方が変わる。何も言わなくても「あの人、離婚したんだ」と分かってしまうし、呼ぶ側も戸惑うと思う。また名字が変わることで自分のアイデンティティがかき乱され、ズタボロにされたような感覚になってしまう。

「たかが名字」と思う人もいるかもしれない。恋人すらいない私が、深く考えすぎかもしれない。でも、今まで名乗っていたものが変わるというのは、私の中ではとても大きなこと。大好きな母や、亡くなった祖母と同じ名字ではなくなるのも何だか寂しい。

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私は高校まで、自分の名字が嫌いだった。珍しいのでよくも悪くも目立ってしまう。予約した飲食店や電話で名乗るときは、一発で聞き取ってもらえたことがない。この名字でよかったことは正直ほとんどなくて、できることならすぐに変えてしまいたいと思うほどだった。それでも、大好きな家族と同じ名字であることは嬉しかった。私のアイデンティティの1つだから、大切にしていこうと思えた。

今の名字は私にとって大切なもの。だから、そう簡単に別の姓に変えるなんて決断はできない。将来、夫となる人が許してくれるなら、これからもずっと今の姓を名乗っていきたい。法律が変われば夫婦別姓の選択もできるようになるかもしれないけれど、やっぱり好きな人とは同じ名字がいい。もし、私と同じように相手も名字に思い入れがある場合、どうしたらいいだろう?夫婦どちらのアイデンティティも尊重してもらえるような制度が、いつかできたらいいなと思う。

■犬屋敷みちるのプロフィール
食べることと、犬をもふもふするのが大好きなアラサーOL。HSP。 趣味で読書をしたり、小説を書いたりしている。 好きな季節は冬。こたつで雪見だいふくを食べるのが毎年の楽しみ。

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