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巨大イボ、骨盤にヒビ、恐怖の運転。私の秋はなぜか「トホホ」が多い

  • 2024.11.16

季節としては結構好きなはずなのに、秋にまつわる楽しい記憶がこれといって何も思い出せず、早々に哀しくなってしまった。
仮にも30年弱生きてきたわけだから何かしらあるだろう。そう思い、少し粘ってみる。去年の秋、おととしの秋、3年前の秋……記憶の色が濃い箇所を、どこだどこだと唸りながら探す。

唸った甲斐あり、秋に起こったいくつかの出来事を思い出すことはできた。ただ、「思い出」という綺麗な言葉で飾るにはビミョーなものばかりで、またも哀しみに襲われる。

とはいえ記憶に強く残っていることは確かだし、「(苦い)思い出」として書けばいっか、と気を取り直してキーボードを叩いてみることにした。

秋、好きなのになあ。こうして振り返ると、私は秋という季節にトホホな目に遭うことがよくあるらしい。

◎ ◎

さかのぼること約22年前。ずいぶん昔の出来事になるけれど、嫌でも忘れることができない。右の手のひらに、しっかり跡が残ってしまっているから。

秋といえば運動会のシーズン。その頃の私は小学2年生、連日運動会の練習に明け暮れていた。徒競走、玉入れ、リレー、それから全校児童で輪になって踊る秩父音頭(埼玉北西部出身の人ならわかってくれるはず)などなど。
運動会の定番、綱引きの練習ももちろんあった。でも、この綱引きの練習の際に異変に気づいた。「なんか、右手が痛い」と。
年季の入った太い綱を素手でぎゅうぎゅう握ってるから、皮が擦り剥けちゃったんだろうくらいに最初は思っていた。でも、痛みを感じる箇所に、気づいたらイボのようなものができていて、日に日に巨大化していく。利き手だから何かと困り、とりあえず病院で診てもらうことになった。

診察の結果、その場でその巨大イボを手のひらから除去することになった。どうやって取るんだろう、と、周囲で動き回る先生や看護師さんたちの様子をこわごわ窺う齢7歳の私。
すると先生は、「じゃあ取るよ」という言葉を合図に、デカいピンセットみたいなもので巨大イボをつまんで勢いよく引っ張り始めた。

麻酔は打っていないからおそらく痛かったはずだけれど、目の前の景色のほうが印象に残りすぎてしまっている。インパクト大なまさかの力技だった。
あまり時間をかけずに巨大イボは取れたけれど、イボのサイズがサイズだっただけに、手のひらを何針か縫うことになった。縫われる経験も初めてだったから、この時の一連の処置は今でも忘れられない。

◎ ◎

今度は高校2年生の時の話だ。体育の授業で、50m走のタイム計測をしていた際のこと。
10秒前後というわずかな時間で駆け抜けられる距離だけれど、ラスト5mくらいのところで「おや?」と違和感を感じた。とはいえゴールは目と鼻の先だから、違和感を感じたまま走り終えた。
ただその直後、サーッと暗くなっていく視界。黒い幕が上からゆっくり降りてくる感じで、だんだん周りが見えなくなり、立っていることもままならなくなった。

その後迎えにきてくれた親とともに病院に行ったところ、告げられたのは「骨折」だった。長々とした名前がつけられていたけれど、さすがにもう覚えていない。大腿骨ナントカナントカ剥離骨折みたいな、そんな名前だった気がする。わかりやすくいえば、「骨盤にヒビが入ってますね」という診断だった。走り終わった後に貧血っぽくなったのは、骨にヒビが入ったことに身体がびっくりして、一気に血の気が引いたからとのことだった。

◎ ◎

骨折って、あの骨折ですか?と思わず聞き返しそうになった。どこかにぶつけたわけでも、派手に転んだわけでもない。50mは止まらずに走りきった。走り終えた直後は一時的に動けなくなったけれど、その後安静にしてたら少し落ち着いた。歩くことだってできている。

先生曰く、急速に足腰に力が入ると起こり得ることらしい。くしゃみをしたらあばら骨にヒビが入っちゃいましたみたいな、アレと似た類のことなのだろうか。

にしても、ただ50mを走っていただけなのに。そんなに頑張り過ぎた自覚もない。ごくごくフツーに、自分が出せるパワーの範囲内でしか走っていない。

その後定期的に通院し、患部に電流を流す電気治療を受けた。先生の「もう大丈夫ですよ」というGOが出たから、骨折から約1ヶ月後に行われた持久走大会にはフツーに出場してしまったけれど、今振り返れば「大事をとって控えておきます」と多少ちょろまかしても全然良かったよな、と黒いことを思ったりする。真面目でつまらない学生だった自分が時々憎くなる。長距離走が大の苦手な私が、13kmなんていうアホな距離を走らずに済む絶好の機会だったのに。

◎ ◎

今となっては必要な時間ではあったけれど、去年の秋も私にとっては試練の日々だった。

車の運転席に座るだけで、命が削られていくような気がした。あの秋を乗り越えた自分のことは、真剣に褒め称えたいと思っている。

この辺りのことは、やに書いているので、読んでやってもいいよという心優しい方はぜひ。

ただ、巨大イボをデカいピンセットで引っ張られた秋、フツーに走ってただけで骨盤にヒビが入った秋、心臓バクバク言わせながら脱ペーパーに臨んだ秋……それらを超えてくるトホホな秋を、この2024年に爆誕させてしまった。

かなり最近の話だし、何なら現在進行形で闘ってもいる。だからまだ「思い出」とは言えない。
ものすごくヘンな生え方をしている親知らず(水平埋伏歯という、歯茎の中でどうしてか真横になっている)を、歯茎を切開して歯をバキバキ壊しながら9月末に1本抜いたけれど、予後が非常によろしくなく精神的に萎えている話はまた何かの折に。

■こじまりのプロフィール
東京在住のライター。不登校、抑うつ、適応障害の経験あり。HSP気質。話すことは苦手だけど、書くことでなら想いを昇華させられると信じて早20年。ことばがあれば、きっと泳いでいける。

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