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【50代の大人旅】”海の京都”と呼ばれる京丹後で癒しの「スロートラベル」を満喫!《前編》ーエディター・あさこの関西巡りー

  • 2024.11.16

お世話になっている京都のライター・内藤恭子さんから、「HOTEL & 湖邸 艸花 -そうか-」のディレクションをしているという話を伺い、ずっと気になっていた京丹後。思い切って相談をしてみたところ、快く案内役を買って出てくれた内藤さんとともに、一泊二日で取材旅に出かけました。今回はその前編をお届けします。
 
ちなみに、京都府の最北端に位置する京丹後は、ユネスコ世界ジオパークに認定された山陰海岸ジオパークの海岸に面していて、「海の京都」とも呼ばれ、四季折々の風光明媚な風景と豊かな食、さらには温泉も楽しめる注目エリア。喧騒を離れてゆったりとスロートラベルを満喫することができます。
 
 

湖のほとりでゆったりと自分時間を過ごせる魅力の宿「HOTEL & 湖邸 艸花 -そうか-」

自分らしい旅のスタイルに合わせて選べる、スタンダードルーム、半露天温泉風呂付きのコンセプトルーム、一棟貸切のヴィラタイプが用意されている艸花。今回宿泊したヴィラタイプの「特別棟 湖邸 艸花」は3棟限定で、棟ごとにインテリアも異なるユニークな空間。ホテルの方から、滞在中どこへも出かけずほとんどの時間を客室内で過ごすゲストもいらっしゃる、と伺いましたが、それも納得の居心地のよさです。

京都市内から山を越え、海が見える頃にたどり着いた艸花のエントランス。あたたかみのあるしつらいに、手仕事を感じさせるアートがさりげなく飾られ、ホッとひと心地つける空間です。

テラスが併設されたメインダイニング。「自然を愛でる、心凪ぐ旅を」というコンセプト通り、ガラスの向こうには広々とした庭が広がり、その先には丸みのある可愛らしい小島が浮かぶ離湖(はなれこ)を望むことができます。どこか遠く──たとえば、水と緑が豊かな北欧の「ヒュッゲ」を思わせるくつろぎの空間で、思わず大きく伸びをしてしまいました。

旅の楽しみといえば、やっぱり食。メインダイニングでは、イタリアンをベースに、丹後・但馬の滋味をたっぷり味わえるオリジナリティあふれる料理が供されます。日本海に面した京丹後は、海の幸はもちろんのこと、砂丘メロンや桃など果実の産地としても知られているそう。いつ訪れてもその時々の美味を味わえますが、冬はなんといっても蟹! 厨房の石窯で焼きたてをサーブしていただけるピザにも蟹がたっぷり。

「特別棟 湖邸 艸花」では、窓を開ければ部屋で半露天風呂を楽しめます。とくにおすすめなのは、朝風呂。窓外の風景を満喫でき、爽快そのものです。窓の外に見えているのはプールで、夏には水浴びや足湯ならぬ足水(?)するのも気持ちよさそうです。

庭を抜けた先にあるSPA棟では、大きな内風呂と半露天風呂を楽しむことができます。各ゲストルーム、SPA棟どちらの風呂にも柔らかな泉質の八丁浜小浜温泉の湯が使用されています。温泉って、いいですよね。最近睡眠不足だったのですが、心地よいじんわりとした温かさが長続きして、内藤さんの話の途中で寝落ちしてしまいました。

艸花で過ごす“くつろげる非日常”で五感を整え、自分をリセット!

「特別棟 湖邸 艸花」では、朝食を部屋まで運んでもらうことができます。京都の工房に特注したという竹のバスケットには、ボリューミーな朝ごはんがたっぷり詰め込まれていて、目からもパワーチャージできます。ジャーでしっかり保温されている熱々のスープと、トースターで温めたパンで、部屋にいながらにして温かな食事を楽しめます。

ガラス作家・オカベマキコ氏の代表作「しゃぼんランプ」が、秋晴れの青空にマッチ。部屋に揃えられた豆と器具でハンドドリップしたコーヒーで、朝が始まりました。マグカップも部屋ごとに内藤さんが作家や工房にオーダーしたものだそう。

湖畔の風景を借景にしたガーデンは、もともと育っていた木々も生かしつつ整えられているそう。手を入れすぎていない、のんびりとした雰囲気です。大きなソファーをしつらえたラウンジで、チェックアウト前にしばし日光浴。ラウンジ中央のファイヤーピットには、夜になれば炎が灯されます。

図面の段階から、艸花のコンセプトワークやアートディレクションを担当してきた内藤恭子さん。長年のライター経験をもとに、取材をきっかけに出会った作家の作品などを取り扱う「好事家 白月」も営んでいます。

表面に手漉き和紙を使ったテーブルはハタノワタルさん、ざっくりとした風合いの壺は陶芸家・笠原良子さんの作品。そしてとても器用な内藤さん、ちょっとした造花の寄せ植えなどはお手のものです。

 

野村牧場の新鮮なミルクをたっぷり使った「MISS ALBION」の極上スイーツ

美味しいケーキの鍵を握るのは、美味しいミルク。艸花からもほど近い、野村牧場直営の洋菓子店「MISS ALBION(ミス・アルビヨン)」には、フレッシュなミルクをたっぷり使ったケーキがずらり。フルーツたっぷりの「イストワール」、季節のおすすめの「モンブラン」、シンプルに見えて実は手間がかかるというスフレタイプの「ガトーフロマージュ」をいただきました。

華やかでありながら、実に洗練されたルックスのケーキたちは素材を生かしたすっきりとした甘さで、ケーキ好きなら何種類も食べたくなるはず。実際、艸花のゲストがテイクアウトして部屋で召し上がったりもしているそう。

マドレーヌやケーク、クッキーといった焼き菓子もラインナップ。私もあれこれ自分用のおみやげに買って帰りました。丁寧に作られているけれど、余計な味はしない、シンプルな美味しさであっという間に食べ切ってしまいました。もっと買えばよかったなぁ。

シェフの安田俊二さんは「ハイアット リージェンシー 京都」でペイストリーシェフを務めるなかで野村牧場のミルクに出合い、52歳の時に一念発起してこちらのお店を立ち上げたのだそう。「牧場の目の前だからこそ、搾りたてのミルクを使ったスイーツを作れるんです。今日作ったものを、今日出せる。それがここに店を出そうと思った理由ですね」と、安田シェフ。


カウコンフォートに配慮し、環境にやさしい循環型の酪農経営に取り組む野村牧場の牛たちは、1頭あたりの年間搾乳量が全国でもトップクラス。鮮度や味わいはもちろん、牧場のスタンスにも共感しての決断だったそうです。

白いケーキ箱のような建物に、ブルーのエントランスが目印。喫茶スペースは不定期オープンのため、利用時には電話で問い合わせを。

ちなみに店名のミス・アルビヨンは、安田シェフがフランス留学時に初めて習ったケーキの名なのだそう。

 

「小嶋庵」のちょうちん作りワークショップで思い出を形に残すアート体験

江戸寛政年間創業の京提灯の老舗・小嶋商店の長男、小嶋 俊さんが営む“海辺のちょうちん屋さん”・「小嶋庵」。寺社や商店のちょうちんのほか、現代的な内装照明やインスタレーションも手がけ、艸花の一室にも俊さんが作った照明がしつらえられています。

ちなみに、ご実家の小嶋商店から完全に独立したということではなく、ご自身が惚れ込んだ地で3人の子どもたちをのびのび育てたいというワーク・ライフ・バランスを考えての移住で、俊さん曰く「ひとつの輪の中に2つある」イメージなのだとか。伝統工芸を継承する新たなスタイルとも言えそうです。

「ちび丸」という呼び名も可愛い手のひらサイズのちょうちん作りにトライ。まずは俊さんからレクチャーを受けます。竹で組んだ骨組みはあらかじめ用意されていて、好みの和紙を選んで貼っていきます。糊をたっぷり目につけるのがコツで、1面を貼ったらその向かいを貼ってから残りの対称の面を貼っていきます。和紙を手でちぎったり、爪で寄せたりと久々に手を使った工作をした気がします。

俊さんのTシャツには「SUKI NA BASHO DE HONPOU NI」と書かれていましたが、まさにご本人の生き方を凝縮したフレーズ。おおらかで楽しい人柄なので、初めてお会いしたとは思えないほどリラックスしてちょうちん作りに取り組めました。

赤いものが私の提灯、水色のものが内藤さんの提灯です。面によって和紙の色を変えるのはちょっと難しいと言われながらも、私はあえてトライしてみました。よく見るとアラはありますが、なかなか可愛い仕上がり! 中に入れるLEDキャンドルライトもセットで持ち帰れます。

ワークショップの申し込みは、小嶋庵のWebサイトから。

大きな提灯を粛々と仕上げていくスタッフの方のスマートな手さばきに、しばし見惚れてしまいました。これまでさまざまな職人さんを取材してきましたが、無駄のない手の動きはリズミカルで美しく、見ているだけでも楽しいものです。そして簡単そうに見えて、いざやってみると全然同じようにはできないのです。

「丹後ブルー」と呼ばれる鮮やかなブルーの海と、青い空。俊さんはこの景色を見て、丹後への移住を決めたのだそう。各地からさまざまなオーダーが舞い込む忙しい日々を送る俊さんですが、工房には学校帰りの子どもたちが集まり、お父さんの仕事に触れながら育つ環境はとても素敵!

 

この記事を書いた人

編集者 ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE!京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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