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ずっと忘れられなかった女性が地元に帰ってくる。愛する夫と煮え切らない自分。先行きの見えない三角関係の行方は…『雨降り晴れて花ひかる』

  • 2024.11.15

心のどこかに残っていて、ずっと忘れられない人というのはいるだろうか。そんな強い存在でも、ただの思い出となっていれば大きな問題にはなることはない。しかし、今も目の前に存在しているとなれば、その人が発端となりトラブルが巻きおこるのは想像にかたくない。

『雨降り晴れて花ひかる』(大沢やよい/KADOKAWA)の主人公の女性・光は、今は結婚して平穏な暮らしをしているけれど、じつは長いこと想い続けている花という名の女性がいた。その人が離婚し、数年ぶりに主人公のいる地元に帰ってくるというのだから内心穏やかではいられない。光にとって花への想いはどの程度のものなのか。夫への愛は偽物なのだろうか。そんなさまざまな思いが錯そうする、光と花と夫の三角関係がはじまっていく……。

なんといっても、光の想い人である花の魔性っぷりがすごい。カメラをかかえ、頬を赤らめながら自分を見つめる光に対して、「撮らないの?」と誘惑する自信家な仕草。光が結婚指輪をしていることに気がつくと、指輪を見せてほしいとせがみ、受けとった指輪を躊躇することなく海に向かって投げ捨てる。実際には指輪は彼女の手に握られたままなのだが、涙をながしながら指輪を探す光の左手をとり、さも意味ありげにその薬指にはめ直してみせるのだ。

光の気持ちを知っているのか知らないのか、それさえもはっきりしないなか、次々にくり出されるこの思わせぶりな態度の数々。光でなくともその魅力の虜になってしまいそうだ。

光の夫である晴天(はるたか)からしたら、自分の妻である光はもちろん大切だ。はじめて自ら声をかけた女性であり、ただその目にうつっていたいと強く願い、結婚したのだ。しかしそんな彼は、普段から光のことをよく見ているからこそ、光の、花への想いに気がついてしまう。それでも花にふりまわされる光のことは放っておけない。光を大切に思うからこそ、ゆれ動く彼の心境が描かれていてハラハラさせられる。

それぞれに積み上げてきたものがあり、思惑がある。でも正しい選択がなんなのか、おそらく誰一人わかっていない。だからこそ物語の先を読むことができない。積み上げてきたものが崩壊してしまうのか、何事もなく平穏な日々が続いていくのか。そんな先行きの読めない三角関係の結末をぜひ見届けてほしい。

文=ネゴト / たけのこ

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