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非公認国家ウジュピス共和国とは?きっと行きたくなる!アートとユーモアに溢れた旅

  • 2024.11.16

「ウジュピス共和国」という国をご存知ですか?

おそらく、名前すら聞いたことない人も多いのではないでしょうか。

1997年に独立した比較的新しい国であり、その名をあまり知られていない「ウジュピス共和国」とは、一体どんな国なのでしょうか。

ウジュピス共和国はどこにある?

ウジュピス共和国はリトアニア共和国の首都であるヴィリニュスの、旧市街に存在している非公認国家。

つまりは、国際的には「100%リトアニア共和国」なのです。

リトアニア語で「川の向こう側」という意味のウジュピス(Užupis)は、名前の通り旧市街からヴィルネ川を越えた場所にあります。

面積は60ヘクタールほどで、東京ディズニーランドより少し広いくらい。人口は約7,000人で、そのち約1,000人は芸術家なのだとか。

ウジュピス共和国の歴史と建国の経緯

ウジュピス共和国のある地域は、16世紀にヴィルネ川に2つの橋が架けられるまで、川によって旧市街から切り離された場所でした。

何百年もの間、ロシア人とユダヤ人の住人が住んでいたそうですが、戦争中に住民のほとんどが姿を消し、売春婦や盗賊が住む空き家が残ったのだとか。

19世紀後半になると、この地域の住民は増えて3,000人近くになりましたが、そのほとんどは都市の製造業の労働者で、社会階級は低かったそう。

とくにソビエト時代でもあった1940年から1990年の間、ウジュピスは主に地元の工場労働者が住んでいたため、都市構造と建築の美的価値は高くなく、この地域の魅力といえば、高い丘がある自然景観の特徴 、建物の密度の低さ、緑が多いことくらいでした。

一方で、一部の人にはそういった要素が「ロマンチック」だと捉えられ、加えて不動産価格が安いということで、俳優、画家、建築家、学生などと言った新世代が、1994年から1997年にかけてウジュピスにアパートを借り始めたのです。

ダイナミックでクリエイティブに飢えた彼らが、この地域を魅力的なものに変えていったのですね。

ウジュピス共和国には教会もあります

「ウジュピス共和国」としての始まりは1997年4月1日。地元の芸術家グループがウジュピス共和国の建国を宣言しました。

そう、この国の建国記念日はエイプリルフールの日。

どの国からも承認されていないこの国が、大真面目に建国されたのか、ジョークで建国されたのかは分かりませんが、4月1日に建国を宣言したことは偶然ではなく、ユーモアを強調しているように思えてなりません。

ちゃんと国家らしい一面もあるウジュピス共和国

至る所に描かれているウジュピス共和国旗のマーク

おふざけだけでの建国かと思いきや、独自の大統領、政府、憲法、旗、国歌、非公式の通貨があり、真面目な建国だったのかと思わせる一面も。

最近までは10人ほどの軍隊もあったそうですが、ウジュピス共和国の平和を愛する姿勢から、軍隊は廃止されたそう。

ちなみに、ウジュピス共和国政府の全メンバーはボランティアなのだとか。

思わずクスッとしてしまうウジュピシュ共和国憲法

ウジュピス共和国にユーモアを感じる最たる理由は、この国の憲法にあります。

憲法まで制定して、けっこう真面目に建国したのかと思うところですが、問題はその中身。ウジュピス共和国憲法を見てみましょう。

全41条、気になる条文は多いですが、そのなかでも気になるのが

人間を対象にしていない憲法がある時点で、ユーモアしか感じられません。犬には犬である権利があるとは、一体どういうことなのでしょうか……。

個人的には

という部分が印象に残りました。

これこそウジュピス共和国の本質を表しているように思います。

幸せであることが正義、不幸になるのは悪いこと、という一般的な世論すら否定するかのような、幸せすら押し付けない考え方こそがウジュピス共和国なのでしょう。

ちなみに、ウジュピス共和国憲法のミュンヘン版(ドイツ版)には、「いかなる人工知能も、人類の善意を信じる権利を有する。」という人工知能に関する追加条項が含まれています。これにより、ウジュピス憲法は人工知能に言及した世界初の憲法となったのです。

ウジュピシュ共和国の観光地

小さな非公認国家ですが、もちろん観光名所もあります。そのうちの一部をご紹介します。

ウジュピス橋

ウジュピス共和国の入り口とも言える橋が、共和国の西にある「ウジュピス橋」です。

この橋からは、見つけると幸せになると言われている人魚の像がありますので、訪れる際はぜひ探してみてください。

ウジュピスの天使

中央広場にあるトランペットを吹く天使の像が、この共和国のシンボル的存在である「ウジュピスの天使」。

この天使は、長引く寒さと家に閉じこもりがちな人々の怒りに応え、寒い冬を追い払うために天から舞い降りてきたと言われており、地上の人々と天上の楽園をつなげる存在なのだとか。

ウジュピス共和国憲法

先に述べたウジュピス共和国憲法のプレートが街の中心部にあります。

なんと42カ国語に翻訳されており、それらの憲法プレートが飾られています。日本語のプレートも存在しており必見です。

ウジュピスのネコ

公園沿いの歩道に、ひっそりと佇むネコの銅像があります。

耳と頬にピアス(?)を付けた、ちょっとファンシーなネコの像。

このネコは特別だそうで、「ネコの耳を優しく軽く掻いて、奇跡を信じることを始めれば、生きることになんの不安もなくなる」のだとか。

街の至る所に存在するアート作品

チベット仏教とメキシコの死者の日のコラボ!?

芸術家が多いということもあってか、国中には個性あふれるアート作品が点在しています。

クスッと笑ってしまうものから、凡人には理解の難しい作品まで様々ですので、ぜひあなたのお気に入り作品を探してみてくださいね。

非承認国家ウジュピス共和国に行ってみて

かつては不動産価格の低さが魅力のひとつであったウジュピスですが、共和国として独立し(非承認ですが)、今ではリトアニアの首都ヴィリニュスのなかでも地価が高い地域となってしまっています。

ウジュピス共和国自体は小さく、数時間もあれば回れてしまうほどですが、共和国内にはレストランやお土産やさんなどもあり、楽しめる場所となっています。

建国記念日である4月1日には、共和国の入口であるウジュピス橋に特別の検問所が設置されるそう。普段はパスポートを持たずに入国できますが、4月1日に訪れる人はパスポート持参を忘れずに……!

また、この日は独自の通貨の両替や、入国スタンプの押印などもできるのだとか。

ウジュピス橋近くのお土産屋さんで入国スタンプが押せます

日本人にはまだまだ知られていない国ですので、「ウジュピス共和国に行ってきた」と言えば、「それどこ?」と話のネタになること間違いなしです。

魅力がないと言われていた地域がアートによって人気となり独立宣言までしてしまった、ちょっと変わった国「ウジュピス共和国」、あなたも訪れてみませんか。

All photos by Keiko Kawanami

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