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職場で共通の敵を攻撃して仲間意識を醸成する…本性むき出しの悪口魔たちが共通して使う「ネガティブ構文」

  • 2024.11.15

年代に限らず悪口ばかりを言う社会人はめずらしくない。人材育成コンサルタントとして、ハラスメント行為者へのカウンセリングを専門に行う松崎久純さんは「『本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人』はベテランから新入社員まで年齢や社歴に関係なく存在するが、その人たちは共通して『ネガティブ構文』を使っている」という――。

悪口ばかりの職場

30代会社員の方からのご相談です――社内で異動があったのですが、今回の職場はネガティブな人が多く、なかなか辛いものがあります。上司や同僚についても、取引先や仕事の内容についても、毎日悪口ばかりで、本当にいいかげんにしてくれと言いたくなります。

いつもぼやいている人たち。周囲の人のことだけでなく、組織のしくみ、職場の環境など、あらゆることをわるく言う社会人はめずらしくありません。

ベテランから新入社員まで、年齢や社歴に関係なく、まるで悪口を言うのが仕事のような人はいるものです。

残念なことに、そんな人が数多くいるネガティブ体質の職場も少なくありません。度が過ぎると、身内のことだけでなく、顧客の悪口まで言いはじめるもので、それが日常化している職場もあります。

組織内の特定の職場だけがそんな雰囲気というわけではなく、会社全体が「客嫌い」体質で、自社の顧客を敵のように思っている。悲しいかな、そんな組織さえ存在します。

吹き出し付きのたくさんの木製の人形
※写真はイメージです
いじめをする人たちの特徴

ネガティブな従業員たちは、似た者同士で集まり、グループになっていることが多いものです。

共通の敵をつくり、一緒に(口や態度で)その敵を攻撃することで「仲良くできている」あるいは「協力し合えている」のです。

これは、いじめをする人たちによくある行動パターンの1つでもあります。

彼らの特徴は、「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる」ことです。

もっと巧妙な人になると、あたかも信頼できる人のようなふりをして、フレンドリーに接しながら、簡単に人を裏切ったりするのですが、相談者の方の職場にいるのは、この本性むき出しタイプの人たちに思えます。

ネガティブで悪口を言いまくる人は私たちを悩ませますが、「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人」には共通して使う「ネガティブ構文」があるように思います。

注目すべきは彼らの3つ目の言葉

「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人たち」は、会話の中で「いやいやいやいや」といった、おおよそビジネスパーソンが職場で使うべきでない、否定的なフレーズを使ったりします。

そうした中でも、以下のパターンの話し方が聞こえたら、かなりの確率で「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人たち」として警戒して間違いありません。

彼らは、3つ目(3番目)にネガティブでないことを混ぜて話します。

「この取引先、以前も同じ間違いをしたわね」
「毎回ちゃんと確認してないよ、絶対」
「まあ、苦情のメッセージを残すと、すぐ連絡してくるのはいいけど」
「それでも、なかなか謝らないのよね」

一人の人が、取引先について、この4つのことを口にしたと捉えてください。ネガティブなことを2つ述べた後に、ネガティブでないことを1つ言い、さらにネガティブなことを1つ述べています。

営業をする人が、売りたい商品の弱点を3つ目(3番目)に述べることは、よく知られています。

「この物件は、南向きです」
「車も2台止められますし」
「駅からは、少し距離がありますけど」
「その分、やっぱり静かですよ」

弱点を1つ目や4つ目に述べるとインパクトが強すぎ、2つ目に述べるのも印象に残りやすい。そのため、弱点は3つ目に話して、4つ目にまた褒めるべきポイントを伝える。

これが弱点を(一応はきちんと)伝えつつ、そのインパクトは弱める効果を持ちます。

弱点を隠して言わなかったとなると問題ですから、何とか伝えておくための工夫です。

数字の3
※写真はイメージです
3つ目にネガティブでないことを織り交ぜる

営業トークをする人は、こうして話すのが身についているものですが、「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人たち」も同じように話しているのです。

「言っちゃわるいけど、社内報も読みたい記事は少ないよね」
「毎月同じような内容だし」
「知ってる人が載ってて、お~ってときもあるけど」
「ほとんど興味ないって感じ」

ネガティブなことを言いまくりますが、3つ目(3番目)には、ネガティブでないことを織り交ぜているのがわかるでしょうか。

このスタイルで、よい点にも一応の言及をします。それにより、ただ非難しているのではないというポーズを取りつつ、ネガティブな感想を連発するのです。

営業トークのプロならぬ、ネガティブコメントのプロで、これで本性むき出しタイプとわかります。

こうしたパターンの会話が頻発していたら、そこはネガティブ人材のたまり場です。

性格がわるい人たちを変えるのは難しい

そんな環境にいても、自分自身はポジティブな姿勢を維持する。そのための対策案を考えてみましょう。

相談者の方を悩ませる「本性むき出しで、性格がわるいとはっきりわかる人たち」は、ぼやいて悪口を言い続ける人として完成していますから、性格の変化を期待するのは難しいでしょう。

彼らは、上司の前では、性格がよい人のように振舞う術を身につけていることもありますが、あなたの前での振る舞い方は変わることがないでしょう。

そのためできることは限られますが、まずは、あなた自身が「彼らの真似はしない」と決めましょう。

先に述べた通り、彼らは共通の敵をつくり、一緒にその敵を攻撃するので、その場にいる人は、彼らと一緒になって悪口なりを言うことで、彼らに受け入れられ、居心地がよくなることがあります。

そうして、その体質に染まっていく人もいますが、それはお勧めしたいことではありません。

彼らのことは、あくまでも反面教師として、次の異動までを勉強の機会と割り切り、乗り切っていきましょう。

大勢の黒い人形の中にいる1つの黄色い人形
※写真はイメージです
はっきりと意思表示をする

相談者の方は、「人の悪口を言う行為を快く思っていない」という意思表示をしてみてはどうでしょうか。

彼らのしていることは、本性むき出しで、巧妙でもなく、そうした意味でも恥ずかしい行為である(とあなたが感じている)ことを知らせるのです(巧妙な行為のほうも恥ずかしいことですが……)。

そうすることより、本性むき出しで、性格のわるい彼らは、相談者の方を攻撃してくるかもしれません。陰湿な方法で、陰で悪口も言い出すでしょう。

しかしながら彼らは、あなたが悪口を言うのは嫌いだと知り、それにより、あなたが陰で自分の悪口を言うこともないと察し、安心します。あなたにいじわるを仕掛けながらも、一部の人は、あなたに一目置くことでしょう。

考えようによっては、あなたが「ネガティブな話や悪口はそのくらいにしてほしい」と言うだけで、彼らはあなたを仲間外れにしてくれるので、むしろ彼らと距離を置きたい場合には、好都合なのかもしれません。

陰口を言われるのは、快いことではありませんが、あなたが何ら意思表示をしなくても、彼らはあなたが自分たちと違うと感じるだけで、普段から同じようにあなたの悪口を言っているので、実はその点は変わりがないのです。

一緒に働いている仲なので、何かのときには手伝ってもらったり、自分の失敗のしりぬぐいを頼まないといけないケースもあると思います。

そんなときは感謝しないわけにはいきませんが、本性むき出しでネガティブなことについては、毅然とした態度を維持するよう努めましょう。

悪口を言うことで自分が何かした気になっている

先に「彼らを反面教師として、勉強の機会と割り切る」と述べましたが、具体的にはどんなことができるのか。1つ例を挙げてみましょう。

ネガティブなことや悪口を言う彼らは、一体何のためにそうしているのか。

共通の敵をつくり、一緒に攻撃することで協力し合っていることには触れましたが、ここでは述べるのは別の理由です。

批判めいたことを言う彼らは、周囲の人や物事を批判することで、「何か意味のあることをしている」と勘違いしています。

彼らは、誰かがしたこと、誰かがつくり上げたものなど、それが何であっても他人がしたことの粗探しをして、自分はこう思う、自分ならこうするという考えを口にすることで、自分自身が何かをした気になっているのです。

何であれ、わるい点を指摘するほど簡単なことはないのですが、ネガティブな人たちは、ネガティブなことを言うことには意味があると思っています。

彼らから学ぶとすれば、まずは私たちも同じ行いをしていないか、自分の言動を確かめてみることでしょう。

「うわ~、この人の言ってること、自分も言ってるかもしれないぞ」「批判をして何かした気になっているかもしれない」と気づくことがあれば、まさに勉強の機会だったと捉えることができるでしょう。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。

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