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アート鑑賞が心と体の健康に効く5つの理由とは?認知科学者が解説

  • 2024.11.14

素晴らしい芸術に触れることは、ストレスを軽減し、気分を高めてくれる効果もあるそう。芸術の秋、もっとアートを味わおう!

Jupiterimages

芸術に関わる体験が私たちの体や脳、そして行動にどのような影響を与えるかについて調査する新たな科学分野、「神経美学(neuroaesthetics、略して「ニューロアーツ」)」に対する関心が、大幅に高まっている。

その結果、実際に芸術が私たちの健康状態を劇的に改善させうることを示す、より多くの証拠が明らかにされてきている。ベルギーやフランス、カナダなどでは、不安症やうつ病の患者の治療に「芸術療法(アートセラピー)」を“処方”する医師も増加している。

この分野における研究と新たな発見をリードするジョンズ・ホプキンス大学医学部の関連機関、ペダーセン脳科学研究所・応用神経美学センターのインターナショナル・アーツ+マインド・ラボを創設したスーザン・マグサメン氏は、「(絵画、演劇、音楽などの分野を問わず)芸術に関わることは、より幸せで健康的な生活の実現に役立つ」としている。

そして、グーグルのバイスプレジデント、アイビー・ロス氏との共著である『Your Brain On Art』(邦訳版タイトル『アート脳』)のなかで、その最大の効果を得るために毎日30~45分、芸術に触れることをすすめている。精神的苦痛を軽減し、精神機能を改善させながら、生活の質を向上させるには、わずか週に一度の関わりでも効果があるという。

ここからは、5つの具体的な効果について、ルイス氏が解説する。

SeventyFour

「これまでの研究結果で一貫して示されているとおり、私たちは日常的に、自らにとって有害な『闘争・逃走反応』を起こした状態にいます。ですが、美術館やアートギャラリーにいるときには、その状態から抜け出すことができるのです」

美術館の中を歩き回ることで、ストレスを感じたときに放出されるホルモン、コルチゾールの分泌量が減少し、心拍数と呼吸数も減るとの研究結果が示されている。神経系がリラックスし、気分が改善され、幸福感が高まるのだという。

Grant Faint

「アートギャラリーに行くことを、『ハイカルチャー(限られた人々のみ享受することができる文化)』だと考えてみてはどうでしょう。そうすることで、自分を甘やかしているように感じてしまうほかの楽しみ方よりも、優先しやすくなるかもしれません」

Julie Toy

アートギャラリーの中では、鑑賞している人たちはほぼ同時に動き、作品の周りを一緒に歩き、同じくらいの時間に同じ場所で立ち止まり、作品を見る傾向があるという。

ひとりで行ったとしても、同じ静けさや、鑑賞している感覚をほかの誰かと共有することになる。私たちの体はその状況を、周囲の人との「社会的なつながりを持っている」と認識するのだとされている。

「潜在意識下で、つながりを感じます。それが、孤独がもたらす有害な影響と戦うことに役立つのです」

これまでの研究から、こうした「交流」と、芸術作品を評価したり鑑賞したりすることで受ける精神的な刺激が、認知症の予防に役立つことも明らかにされている。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によると、数カ月に一度、またはそれ以上の頻度で美術館を訪れる50歳以上の人は、認知症の発症率が低くなっているという。

Arturo Peña Romano Medina

実験によって、アートギャラリーや美術館に行くことは神経活動を刺激し、幸せホルモンとも呼ばれる神経伝達物質のセロトニンとドーパミンの放出量を増加させることが明らかになっている。

「美しい絵画を見るとき、『なるほど!』というような、特別なひらめきや気づきの瞬間が訪れます。それは、何かに対する意義深さを感じることにつながり、ずっと頭のなかに否定的な考えが渦巻いていたとしても、一時的にシャットアウトしたり、抑え込んだりします」

「その瞬間、自分が単にこの世界に存在しているだけではなく、豊かな人生を送り、それによって『花開いて』いるのだと感じることができます」

このように心を前向きに活性化することは、脳の可塑性(変化できる力)を高め、新たな神経回路の形成を促し、結果として知覚を高め、認知症の予防につながる「認知予備能」を高めることにつながるとされている。

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